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看板娘の花言葉 ~緑の乙女は家族とのんびり暮らしたい~  作者: 芽生 1/15『裏庭のドア』3巻・コミックス1巻発売!


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第20話 実る果実と未来への希望 2

いつも読んでくださり、ありがとうございます。




 家での会話から数日後、エイミーはルークとアルフィー、そしてなぜかついてきたルディと共に古い教会へと訪れた。

 父ジョセフが子どもたちに教鞭を振るうこの場所には広い庭がある。元々、教会が畑として使っていた名残があるそこで、ブルーベリーを育てることになったのだ。

 父、そして子どもたちがすでに庭に集まっているのが遠くからでも見える。


「よかった。お父様もすっかりここでの生活に慣れてきていらっしゃるのね」

「ここに来たばかりの頃はご自身を責めていらっしゃいましたから――」


 先を駆けていくルークの耳には届かない距離で、エイミーとアルフィーは会話を交わす。

 父ジョセフは教室で子どもたちに教えることで、母グレースはクレアやその子どもであるベルやコリンとの交流を通し、笑顔が増えてきたようにエイミーには思える。

 同じ年頃であるベルやコリンの存在はルークにも大きな影響を与えているようで、今日も張り切って時折、エイミーたちを振り返りつつ、走っていく。


「お父さまもお母さまも優しすぎて心配になってしまうくらいだもの」


 人の好過ぎる両親に商売は不向きだったのだとエイミーは思う。

 そう言ったエイミーをちらりと見たアルフィーはぽつりと呟く。


「……そこは皆さま、よく似ていらっしゃいます」

「ふふ、お兄さまもルークも優しいものね」

「エドワード様のお優しさはご家族限定です」


 家族以外にはそれなりに辛辣な態度を見せることがあるエドワード、しかしそんな姿をエイミーたちに見せることはない。

 この家でそれを知る者はクロウ、そしてアルフィーのみである。

 王都に住むエドワードは魔道具を使い、近況連絡を求めてくる。アルフィーは毎日のようにエイミーを中心に家族の情報をせっつかれている状況なのだ。

 今日のことも報告すれば、小言が飛んでくるだろう。

 楽しげに駆けているルークとルディ、その後ろを微笑みながら歩くエイミーを見守りつつ、アルフィーは小さくため息を溢した。




「皆さん、集まってくださりありがとうございます。あたしはエイミー・スタンリー、スタンリー先生の娘です。今日は一緒に実のなるブルーベリーという植物を一緒に植えましょうね」

「はい!」


 子どもたちの元気な声に、エイミーも自然と笑顔になってしまう。

 心地よい風が頬を撫でていく中、エイミーが収集袋から苗を取り出すと子どもたちから歓声があがる。


「凄い! 今の見た?」

「先生の娘さんって魔法使いなのかな?」

「バカ、魔道具だから魔道具師だよ」


 収集袋は兄のエドワードがくれたものだが、当然高価なものでなかなか入手できるものではない。

 子どもたちの興味は苗よりも収集袋とそれを扱うエイミーに移ったようだ。

 

「……僕のお姉さまなのに」


 なぜかむくれるルークの頭を撫でるエイミーはある少年の姿に目を留める。

 子どもたちより背が大きいその少年にエイミーは見覚えがあった。


「――マイケルくん?」

「あ、久しぶり! ……です」


 声をかけた後、慌てて言葉を付け足し、ぺこりと頭を下げた少年は以前、花を買いに来たマイケルだ。

 物々交換という形ではあったが、初めて花を買ってくれた少年マイケルはエイミーの記憶にも強く残っている。


「勉強が足りないからと、家の仕事の合間に顔を出しているんだよ。小さな子では動かせない物や掃除、色々手伝ってくれて私も助かっているんだ」


 ジョセフの言葉にマイケルは気恥ずかしそうに髪を掻く。

 周りの子どもたちより年上の彼が同じ教室で学ぶ――年頃の少年にとってはかなりの勇気がいることであっただろう。


「あの……勉強したほうが将来的にもいいと思うんで……」

「今日は大丈夫なの?」

「チビたちや先生だけだと大変ですから」


 鉢植えで用意したブルーベリーを植え替えるだけではあるが、大事なのは土である。一週間ほど前からマイケルが中心となり、畑を作ってくれたとエイミーは父のジョセフから聞いている。

 子どもやジョセフに負担をかけまいと、マイケルは仕事の合間を顔を出してくれたのだろう。

 長袖を腕まくりするマイケルはどうやら自分が中心となって、苗を植えるつもりでいるらしい。優しい気遣いだが、そんな彼の目の前にシャベルを持った少女の影がかかる――エイミーである。


「えっと……土がかかっちまいますよ?」


 ブラウスにパンツ姿でまるで乗馬服のような服装のエイミーだが、その右手にはシャベルがしっかりと握られている。こちらも収集袋にいれてきたのだ。

 自分にシャベルを手渡してくれるのだろうかと恐縮しつつ差し出したマイケルの手には何も渡されない。

 代わりに威勢のいい大きな声が耳に届く。


「よっこいせーっ!」

「は?」


 振り上げたシャベルがサクッと地面に刺さり、エイミーの足がシャベルの上に置かれる。重さをかけ、より深く沈みこませたら左手で柄の部分も握りしめる。

 そして、グッと斜めに倒し、シャベルで土を掬いだした。

 

「――お嬢さま。力仕事は私がするというお約束を交わしたはずですが?」

「だって、こういうことをしないと自分たちで植えた実感がないでしょ! 土作りをこの子たちがしてくれたんだもの。あたしだってなにかしないと!」


 やる気に満ち溢れたエイミーをアルフィーが嗜めるが、彼女は気にした様子もなく再びシャベルを土に刺す。

 そんなエイミーにルークは小さなスコップを握りしめながら頬を膨らませる。


「僕もお手伝いできますよ!」

「じゃあ、ルークや他の子達は私が出した土を他の場所に移してくれる?」

「はい! わかりました!」


 元気な返事と共に子どもたちはバケツを持ち、ルークはその中に土を入れていく。初めてとは思えない連携プレイであり、ジョセフは和やかな光景に目を細める。

 張り切って土をシャベルで掻き出すエイミー、穴を嬉しそうに掘って汚れていくルディ、アルフィーはげんなりとした表情しつつも彼女のサポートをするため、ジャケットを脱いだ。


「え、えっと……苗をご用意してくださっただけで十分だったんですけど……」

 

 戸惑うマイケルの声はスタンリー家の人々にも、はしゃぐ子どもたちにも届かない。あっけに取られるマイケルだが、すぐに自分も何かしなければと仕事を探し始めた。

 顔や白いブラウスに土をつけながら、エイミーは楽しげに作業を続ける。

 青空の下、家族や子どもたちと作業を続けるエイミーは、充実感を抱くのだった。


 

販売されているブルーベリーの苗は何年か経ったものだそうです。

実がなるまではそれなりに時間がかかるものだそう。

木になる果実は数年経ってから実がつくことが多いのかと思います。

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