表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で配信してたら神々がスパチャしてきた  作者: def
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/39

22. 盾(シールド)


王都アルディアは、静止していた。


風は吹いている。

旗は揺れている。

人々も、確かに動いている。


だが――

すべてが、遠い。



灰原カナトは、立っていた。


配信室の中央。

カメラは沈黙し、

神々の文字も、もう浮かばない。


「……静かだな」


誰にも届かない声。


それでも、彼は言葉を発した。


「やっと――

“本番”って感じか」



その瞬間。


空気が、重くなった。


いや、正確には――

“存在の密度”が増した。


呼吸が、重い。

心臓が、一拍遅れる。


世界そのものが、

彼の存在を押し返してくる。



リュミエールが、膝をついた。


「……始まりました」


「DoSの最終段階です」


カナトは聞く。


「何が起きているんだ」


リュミエールは、歯を食いしばりながら答えた。


「世界の管理層が――

“個体”を整理し始めています」


「優先度の低い存在を、

圧縮して、押し出す」



カナトは、理解した。


「……消すんじゃない」


「潰すんだな」


「存在するコストが高すぎるから、

世界ごと拒否されてる」


リュミエールは、無言で頷いた。



足元に、ひびが入った。


石畳が割れるのではない。

空間が、歪んでいる。


「……来ます!」


リュミエールが叫ぶ。



見えない圧力が、

カナトに向かって落ちてきた。


剣でも、魔法でもない。

敵意ですらない。


ただの――

“処理”



その瞬間。


エイリン・ノクティエルは、

迷わず一歩、前に出た。



ガン――――ッ!!!


音が、世界を叩いた。


いや、違う。


世界が、彼女にぶつかった。



「――ッ!」


エイリンの足が、地面にめり込む。


鎧が、軋む。

骨が、悲鳴を上げる。


それでも――

彼女は、退かなかった。



「……エイリン!!」


カナトが叫ぶ。


だが、彼女は振り返らない。


ただ、低く言った。


「……言いました」


「私は、盾だと」



圧力が、さらに増す。


空間が、悲鳴を上げる。


普通の人間なら、

一瞬で“押し潰されて”終わっていた。



リュミエールが、震える声で言う。


「……ありえない」


「個体が、

世界のオーバーライドを――

物理で、受け止めている……」



エイリンの膝が、落ちる。


それでも、剣を地面に突き立て、

壁になる。


「……カナト殿」


声は、かすれている。


「あなたは……」


「まだ、前を見てください」



カナトは、歯を食いしばった。


神はいない。

配信もない。

数字も、もう見えない。


ここにあるのは――

一人の人間と、

それを守る、もう一人の人間だけ。



「……分かった」


カナトは、静かに言った。


そして、一歩――

エイリンの後ろに、立った。



圧力が、止まった。


いや――

通らなかった。



世界は、計算を諦めた。


これ以上、押しても、

処理が進まない。


“盾”が、

完全にエラーだったからだ。



空気が、軽くなる。


ひび割れていた空間が、

ゆっくりと元に戻っていく。



リュミエールが、呆然と呟く。


「……勝ち、ですね」


「DoSは……

押し切れませんでした」



エイリンは、

その場に崩れ落ちた。


カナトが、すぐに抱き止める。


「……無茶しすぎだろ」


彼女は、かすかに笑った。


「……騎士ですから」



その瞬間。


配信画面が――

復活した。


同時視聴者数:

0 → 12,000 → 80,000 → 300,000


コメントが、雪崩のように流れ込む。


『戻った!?』

『今の何!?』

『エイリン!?』



カナトは、カメラを見る。


そして、静かに言った。


「……ただいま」


「少し、

盾が強すぎただけだ」



世界は、落ちなかった。


理由は、ただ一つ。


一人の騎士が、

最後まで、前に立っていたから。



第一章・クライマックスへ続く。


(第二十二話・完)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ