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14話 私の選んだ2000日 Ⅱ

 





 視点:シャル・アストリア

 地点:魔界 パープリン郊外 アストリア孤児院 食堂




「みんな、こんばんわー! シャルの母親のマイル・アストリアだよん! よろしくぅ!」

「母さま、その挨拶はどうなの……」


 母さまは昔からこんな感じだったけど、今も変わってないらしい。

 いつもの母さまを見てると、五界戦争最強の兵で伝説の兵士。『【炎帝】のマイル』だとは思えない。


 そして、母さまが私の母親だと聞くと誰からでも同じ反応が返ってくる。


「「「「「………………」」」」」


 ──静寂

 その静寂を、ここの最年長である魔族のファナが打ち破った。

 いつもならこの静寂が続いて変な雰囲気になる。

 ファナ、ナイス!


「は、母親……ですか? それにしては……」

「お、母親にしては若すぎてお姉さんかと思ったって? にゃははは! もう、口が上手だなぁ〜もっと言え!」

「いえ、てっきり妹さんかと……」

「妹? 妹は駄目。姉が良い!」

「そこは(こだわ)るのね……」


 と、まあこんなふうに間違われる母さま。

 なにせ見た目が滅茶苦茶若い。若い……いえ、幼いと言っていい程に。


「魔族、ですよね? ある一定の年齢に達すると同時に身体の成長が止まる竜族やエルフならともかく、魔族の寿命はそこまで長くはない筈です」

「ボクは魔族と竜族のハーフなんだよ!」


 ちなみに私は魔族:竜族=3:1の血が入ったクオーター。

 竜族の血が薄いせいか竜族特有の()()()()が使えないけど、その分魔法を使うのに適した身体になっている。


「なるほど、ちなみに今の年齢は?」

「1600ちょっとかな?」

「……予想以上でした」


 竜族の血が入っていたにしても、母さまの見た目は幼い。何でも成長が止まるのが早かったらしい。

 まあ本人は──


『可愛いロリババアって萌えない? 尊くない?』


 とか言ってたから特に気にしてなさそうだけど……


 その後、母さまの突然の乱入で途切れていた食事を再開して、食後は少し母さまと話をする事にした。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 地点変更:魔界 パープリン郊外 アストリア孤児院 院長室




 ファナにみんなを任せた後、私と母さまは私の部屋──もとい院長室で話す事にした。


「そういえば母さま、どうして私がここにいるって分かったの?」

「ん、まあ色々と伝手(つて)を頼ってね」


 母さまの人脈は伊達じゃない。

 私が考えても無駄だろうから深読みしても意味ないわね。


「早速だけどシャル……本当にシャルだよね? 夢じゃない?」

「夢じゃないわよ」


 私は母さまの頬に手を伸ばして──むにょーんと伸ばしてみた。柔らかい。

 ……何故か彼の事を思い出した。


いはい(痛い)ゆへはふぁい(夢じゃない)

「本当に久しぶりね母さま……といっても、【てれび】? で見てたから、私は母さまの近況もなんとなく察せるけど」

「にゃはは……ん、テレビ?」


 母さまは五界戦争中、魔族軍のトップとして魔族を支え続けていた。

 基本的には裏方で味方の指揮をしていたけれど、場合によっては戦場に突撃する。

 自身の戦闘能力だけでなく、戦況を見通す眼も持ち合わせた母さまがいなければ、魔族への被害はもっと大きくなっていた事は考えるまでもない。

 だからこそ──敵軍からはそれ相応の恨みを買う。

 平和条約が結ばれた今、てれびで母さまは叩かれていた。


『心を持たない殺戮の魔族【炎帝】マイル』


 等と報道されていたのを思い出す。

 自分達だって他種族を殺しておいて何を言っているんだか。

 特に私は母さまの苦悩を知っていたから、尚の事この報道にイラッときた。


「テレビって事はシャル、もしかして人間界にいたの?」


 魔界にテレビは無い。

 なんでも、魔素が充満しているせいで電波が届きにくいとか……


「ええ、あの作戦の後の事は……当然知ってるわよね。じゃあその後から、えっと……」


 霊装神殿襲撃後、人間界にいた頃の事を色々と話す。

 私の翼の事、天霧家の事、紗綾の事、今に至るまでの事を全部話した。


「シャルぅぅぅ……!」

「わっ、ちょ!」


 話が終わると同時に私に抱きついてくる母さま。


 ────三分


「母さま、流石にもう離れて。苦しい」

「分かった、シャルパワーも充電出来たし離れるね」


 そうして私に回していた腕を離して──


「おっぱいもみもみ」

「…………」


 ──その腕で、私の胸を揉み始めた。


「うおう! シャル成長したね!」

「ふんっ!(腹パン)」

「ぐぼぇ」


 ……母さまらしいといえば母さまらしいのかな?


「そんな事より、母さまはどうしてここに?」

「何年も行方不明の娘がいるって聞いて、親が飛んでこないと思う?」


 さっきとはうって変わって真剣な表情で言う母さま。


「ごめん、なさい」

「ホントに心配したよ……ホントに良かった……!」


 涙ぐみながら私に笑顔を向ける母さま。

 ……結構ムカつくこともあるけど、いつもふざけているようで優しい母さまが私はなんだかんだ好きみたい。

 さっきはみんながいたから出来なかったけど、今ならやっちゃっていいよね?


「母さまぁぁぁっ!」

「……ごふっ!?」


 母さまに突っ込んだ私は、寂しさやら悲しみやらでよく分からなくなったこの気持ちを、涙と共に吐き出した。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「落ち着いた?」

「……うん。ありがと母さま」

「どーいたしまーして」


 母さまから離れる。

 なんというか……物凄くスッキリした。


「それで、本題なんだけどね」

「うん?」


 本題? なんだろう……


「また、一緒に暮らさない?」

「……私もそうしたいけど、でもそれは出来ない。それに私の為にみんなを見捨てるなんてしたくないわ」

「にゃはは……! 要はここの子達と一緒に暮らせれば良いわけだよね?」

「え、ええ。まあ本質はそうだけど……」


 母さまはニヤリと笑って──


「ここの子達と空の上に行ってみない?」 


 そう言って、何か書かれた紙を私に渡してくる。内容は──


「……これ、本当……!? もう完成してるの!?」

「勿論! これがお母様の人望だよん!」

「ちょっとみんなにも言ってくる!」


 私は紙を片手に、外へ向かって駆け出す。


「にゃはは! シャルが【空中都市(スカイディア)計画】を気に入ってくれてよかった。ボクが頑張った甲斐(かい)あったよ!」


 優しい笑みを浮かべたマイルは、先を走るシャルにゆっくりと付いて行った。

「母さまのキャラが濃すぎてメインヒロインの私が霞むわ!」

「にゃはは! シャルには泣き虫ツンデレ黒髪ロングっていう十分に濃いキャラがあるじゃないか!」

「泣き虫は余計よ!(腹パン)」

「ぐぼぇ」


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


※ユニーク1000人を突破しました! 本当にありがとうございます!

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