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廃校でダンジョン  作者: 空気鍋
2/14

1ー2

暗い話だけど、これから明るい話になる、はず

地元のラジオを聞いている時に流れた廃校の小学校は俺の母校ぼこうである第二太平小学校だった。母校と言ってもまったく良い思い出の無い学校だ。

ただ単に卒業しただけの、“母校”。

俺の小学生時代は信じられないかもしれないが“よく話し”、“声も大きく”、“活発かっぱつ”な子供と言われていた。

低学年の頃まで。

高学年になった辺りから周りに比べ一回ひとまわり違う俺は“ぶた”と呼ばれるようになり人より要領ようりょうの悪い所をいじられるようになった。そう、最初は“弄られる”だけだったのだ。しかし、いつからか“いじめ”になっていった。

なぐられる時もあった。

持ち物をかくされる事も。

集団でかこまれののしられた日は生きるって何だろう、とか思った。

そんな時、担任は何をしていたか。

俺は小学一年生の頃から六年生までみんながやりたがらなかった“美化清掃係(「ボランティア」)”をやっていた。後から思えば最初から押し付けられていたのだがにぶい俺はずっと気づいていなかった。

この係は放課後は勿論もちろん、月に一度、休日に学校や公園の掃除をする。面倒な上に休日がつぶれるイベントがある係を誰もやらなかったのは当たり前だろう。それを六年間も続けた俺を


()()()()()()()()()


担任はそう、思っていたらしい。

つまり、何もしなかった。

暢気のんきな話しだ。ただ、俺の世代は第二次ベビーブームの真っだ中でひとクラス四十人の大人数。その上、教師が足りず“副担任”という言葉が無かった時代であった。この時の担任は年齢的に中堅ちゅうけん処の経験豊富な人だったが一人ひとりで四十人は多すぎた、という事なのだろう。何も言わない空気みたいな生徒に向ける気配り出来る余裕は無かった、と今なら分かるが当時は、そんな担任を“裏切りもの”だと思っていた。

あまり若い時分じぶんに自殺を考えると“負”の循環じゅんかんが出来てしまう。何かあれば“死ねばいい”と考えて抜け出せなくなるのだ。気がついたら手首にカッターを当てていたなど意識していない分最悪だ。俺が今も生きているのは“引く”だけのユウキが無かったから。それだけ。

しかしその経験が俺の成長に影響して小学生を終えた頃には“笑わない”、“泣かない”、“喜ばない”、“話さない”の四つの“ない”主義な子供になっていた。当然こんな俺は、その後も人付き合いが上手くいかず中学校、高校と苛められつね孤立こりつして。それは今も続いている。

そんな俺を形作った“母校”だが無くなると聞けば感慨かんがい深いものがある。

無くなって精々(せいせい)したのか。

数少ない思い出の地が消えると悲憤ひふんに暮れたいのか。

分からないまま、小学生の頃は三十分近くかかってかよった道を変わってしまった景色を楽しみながらある十分じゅっぷんちょっとで小学校に到着した。


「ちっちぇーっ!」


小学校が曲がり角から見えた瞬間に道路の真ん中で”()“は叫ぶ。

かつて”マンモス校“と言われた全校生徒千人を越したあの学校が。卒業以来、来ていなかった俺の記憶では”大学“程もある大きさだったのだが。

こんなものだったのか。

見上げなくては天辺てっぺんられた文字が見えなかった門変わりの石柱は今の俺と同じくらいの高さだから百七十センチ程度か。

筆で書かれたように彫られた文字はかすれていたが第二次太平小学校と読める。門から見える入り口にロータリーになった部分があり、芝生しばふが植えられていた。そのロータリーの中央部に昔はどの小学校にもあった歩きながら本を読む二宮金次郎像が建てられている。

門から小学校に向かって右側に長さ二十五メートルのプールがあり左側の奥に俺達が「小体育館」と呼んでいた木造もくぞうの建物があって二宮金次郎像、プール、小体育館の向こう側に白い壁の小学校本館があった。ここからは見えないがプールの奥側に石炭ストーブ用の石炭置き場があってL字型の小学校本館の裏側には「大体育館」、その向こう側には校庭こうていがあり、校庭にはスキー教室で使った小山こやまがあるはず。

しかし、俺の記憶と比べすべてが小さかった。

あの頃は俺の世界の大部分をめた”小学校“はその小さな”世界“を今の俺(「大人」)に見せていた。

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