20.ハレルヤ2
「わからないのなら、試してみることです。相手に触れて、何も感じなければ、幼馴染のままでいた方がいい」
「触れるって、どんなふうに?」
大真面目にで訊ねられ、直己は軽く肩を竦めた。
純粋培養の姫君は、言うことがいちいちおもしろい。
おもしろいけど、聞いているこっちは、恥ずかしくなっている。
「そうですね、とりあえず、手をつないでみるとか」
「こんな感じ?」
理科の実験でもするような顔をして、手のひらを重ねられ、直己は思わず苦笑する。
「私を実験台にされても……」
「何か感じる?」
「そういう真琴さんはどうなんです?」
難しい顔をして、真琴は首を傾げている。
重ねるだけでは足りないと思ったのか、今度は指を絡めてきた。
「……わからないわ……」
「じゃあ、この方法はだめですね」
あっさりと告げられて、真琴は不満そうだった。
そのせいか、いつまでたっても、手を放そうとはしなかった。
動かぬ二人を包んでいた夕映えが、次第に色をかえていく。
美しく花開いていく少女を見ているのは楽しかった。
たとえそれが、触れてはならぬ花だとしても、一日でも長くそばで見ていたかった。
地道な努力家で、飾らない所がいい。
しっかりして見えるのに、実際はかなり抜けていて、浮世離れしたところが愛らしい。
ピンとはずれの劣等感だって、見方によっては美徳かも知れない。
真っ直ぐな瞳で見つめられて、どきりとすることがある。
あどけない笑みを向けられて、抱きしめたくなることも。
その髪の一筋まで愛している。
だから、もう、消えてしまおう。