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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第六章 少年編
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エピローグ 2

~追記~続編を投稿することにしました。後書きにも書いているので、そちらもご覧ください。

崩れ去る銀白色の壁から現れたのは、無傷の勇者。


「しょうがない。本当は捕まえて罪を認識させたかったが、こうなったら消去するしかない!」


一人で意気込んでいる勇者に、シルイトは口を挟んだ。


「罪とはなんだい?ここは、カサベシナ教国ではなく、エーリュシオン帝国だ。キミたちの秩序とは異なる秩序で統治している国。まさか、カサベシナ教国が絶対とは言わないだろうね」


勝手に罪があると言われてイラッとしたのが半分、そしてもう半分は単純な興味から、シルイトは質問をした。

勇者は迷わず答えた。


「お前は、何百年も皇帝の座にいると聞いたぞ!しかも民による選定もなく。完全な独裁政治じゃないか!!」

「独裁の何が悪い」

「はっ?」

「自分の利益のために民を犠牲にしているならまだしも、市民のことを考えた完璧な政治を行う独裁政治になんの悪があるんだ」

「そ、それは・・」


勇者がシルイトを否定するには、シルイトが民意を反映した政治を行っていないことを証明する証拠が必要だった。しかし、今の勇者はそんなものを持っていない。

それは、シルイトが完璧な政治を行っているためか、はたまた勇者のリサーチ不足なのか。どちらかはわからない。

ただ、勇者は黙るしかなかった。


「もういい。さあ、来なよ。キミの全力とやらで。コンフィアンザ、離れていろ!」


直後、シルイトの体を謎の衝撃が襲った。その衝撃でシルイトの小さい体がふわりと浮かぶ。

すると、前から段々とイシルディンの粒子ができ始めた。

イシルディンの粒子が出来ていく現象は、どんどんシルイトへと近づいていく。しかし、シルイトに慌てた様子はちっとも見られなかった。

瞬く間にシルイトの体はイシルディンの粒子に包まれる。


「終わった・・か?」


念のため、少しの間様子を見る勇者。

シルイトが座っていた場所は、完全に銀白色の物体に置き換わっているように見える。この銀白色の物体は、やがて、さっきの銀白色の壁のように崩れ去り、中に人が残っているかわかるようになる。

勇者は、倒せたはずだという期待を胸に銀白色の塵が崩れ去るのを待ったが、すぐに自分が警戒を解かなかったことを自分でほめることになる。


「終わってないよ」


崩れ去る銀白色の塵の中から現れたのは、銀白色の人型。その人型はシルイトの声を出していた。


「お、お前は・・」

「キミだって言っていただろう?僕が人間ではないって」


やがて、勇者が見ている目の前でシルイトの肌が元の色へと戻り始めた。

それと同時に肌になだらかな凹凸が現れ、その凹凸には肌とは違う色がつき始めた。

変化が終わると、なだらかな凹凸はシルイトが着ていた服だったことがわかる。


「そんな、ありえない」


思わず膝をつき、床を見る勇者。

アリーンも呆然としている。


「なにがありえないのかな?ボクの特性、それともキミの能力で倒せない敵の存在、とかかな?」

「・・俺の能力が効かない相手なんて」

「やっぱり、そっちか・・キミの能力は、全てものものを銀白色の塵に変化させるというものだろう?」


勇者は、何故知っている?というような視線をシルイトに向ける。


「キミのことはずっと監視していたからね。それこそこの世界に堕ちてからすぐに」


エーリュシオンが安定してきてからは、シルイトは自分に差し向けられる勇者にのみ警戒していればよくなった。

ティルスクエルとカサベシナ教国が近づいているのに気付いたシルイトは、特にカサベシナ教国を重点的に警戒していたのだ。


シルイトの話に言葉を失う勇者。しかし、なおもシルイトは話し続ける。


「確かに、どんな攻撃でもただの塵にすればダメージはないし、相手に使えばほとんどの場合で滅ぼすことは出来そうだ」


ただし自分を除いて、と心の中で言うシルイト。

勇者の能力、銀白色の塵とはいっても要するにイシルディンの塵である。シルイトの分析では、物質を構成する分子一つ一つをイシルディンの分子に置き換えているため、その過程でバラバラとなって塵になるのではないかとしている。

つまり、もとからイシルディンの塊であれば、もう一度イシルディンになることは出来ないので何の影響も受けないと言うわけだ。


「でも、なんでそんなマイナーそうな能力を選んだんだ?好き勝手選べるんだろう?」


勇者は、シルイトが何故そんなことを知っているのかと訝しげになりながらも答えた。


「神様がオススメする能力をくださいって言ったんだよ。どうせ俺はこの世界についてほとんど知らなかったし、必要な能力なんてわからないからな」


そこで、コンフィアンザがシルイトに伝言する。


「ますた、今入ってきた情報ですが、彼らの子どもの居場所がわかったようです」


その言葉に勇者はキッと頭を上げた。その顔は怒りに包まれている。

アリーンもシルイト達を凝視したが、どちらかというとその感情は恐怖に近いものだった。


「娘が一人。教国の下町に匿われているようです」

「おい、俺の娘に何をするつもりだ!?」


シルイトをにらみつけながら問い詰めようとする勇者。


「何もしないよ」


対して、シルイトの返答は勇者にとって予想外れなものだった。

そのせいで、一瞬固まった。

しかし、続くシルイトの言葉に再びシルイトへと走り出した。


「ボクがキミに倒されればね」

「くそぉぉ!!」


勇者が雄叫びを上げながらシルイトへと向かい始めたそのとき、再び玉座の間の壁から攻撃が繰り出された。

ただし、今回は銃弾や銀白色の手ではない。


ルクスリスだ。


ルクスリスの弾として使われているのはイシルディンの微細な粒子である。

つまり、勇者の能力によって銀白色の塵に分解されることはない。

シルイトの読み通り、ルクスリスは勇者の体を貫いた。

能力で無効化できると思ったのか、はたまた銃弾よりも速い速度でやってくるルクスリスに反応できなかったのか、どちらにせよ避けることが出来ずに体中穴だらけとなって倒れ伏す勇者。

部屋中ににアリーンの叫び声が響きわたる。


「ますた、殺してしまって良かったのですか?」

「殺してはないよ。あの能力は面白いからね、うちの都市で越権行為をした市民に対する罰として有効かもしれない」

「確かに、体が銀白色の塵に分解されていく様は市民にとっては忌避したい事柄になるでしょう」


もっとも、あまりに極刑すぎて公には出回らない情報になるかもしれませんが、と心の中でつぶやくコンフィアンザ。

それと同時に、アリーンがまだこちらを見たまま恐怖の表情で固まっているのがわかった。


「あの聖女は生かすのですか」

「うん。回復魔術なんてめずらしいもの、再現できなきゃ損でしょ」


アリーンは顔を蒼白にさせながらシルイト達を見ていたが、自分の後ろの壁から出てきた麻酔銃によって眠らされた。

クリガーはというと、勇者とアリーンが運び出された後に地上へと廃棄された。

クリガーは決して弱い戦士ではないのだが、逆に言うと、そこそこの実力があるだけの戦士なのだ。そういった人材は今のエーリュシオンには必要ない。

エーリュシオンから生身で落ちて助かるものはほぼいないといっても過言ではない。つまり、地上への廃棄というのはそういうことだ。


勇者とアリーンはそれぞれ別々の研究機関に連れて行かれ、彼らの能力を錬魔術で再現できる方法はないかという研究の対象となる。

それと同時に、彼らの娘の原動力となるのではとシルイトは密かに思っていた。


「じゃあ、娘さんも連れてきておいて」

「もう連れてきております」

「おお、仕事が早いね。じゃあ通していいよ」


シルイトが通せと言った直後、玉座の間の扉が開いた。

入ってきたのは乳母車と、それを押す一人の人間。

人間の方は、城に勤める人間である。そして、乳母車に乗っている方は、勇者の子どもだ。


「勇者と聖女の子どもなんて、どんな強い子に育つか楽しみだ」

「名前はどうされますか?」


本来ならば、本物の親である勇者達がつけた本物の名前があるのだろうが、親は死んでいる。識別したければ、シルイトが名前をつけるしかないと言うわけだ。

一人の名前を決めるという重大なことではあるものの、シルイトは迷い無く答えた。


「ディシェルネ、としよう」

「ディシェルネ、ですか。能力名のディシルディンにかけているんですか?」

「そんなところ」


ディシルディンとは、勇者が使っていた能力にシルイト達がつけた名前のことである。

イシルディンで分解するという能力の効果から、シルイトがつけた名前だ。


ディシェルネはまだ生後間もなく、元気に泣いている。

そのかわいらしい様子を見て、シルイトとコンフィアンザはにっこりと笑いあった。



しかし、この少女が将来、大きな混乱をもたらすことを二人はまだ知らない。

願わくば、シルイトとコンフィアンザ、そしてこれからのエーリュシオンに幸せがあらんことを。


~Fin~

Thank you for reading!


約一年間、連載を続けてきましたが、なんとか完結まで持って行くことが出来ました。

振り返ると、蛇足な部分があったり、最後が若干急ぎ足になったりと反省すべき点は多かったと思います。しかし、おかげで続編にスムーズにつなげるようにはなりました。


続編の舞台は帝都エーリュシオンですがシルイトは主人公枠から外れ(もちろん登場しますし、重要人物です)、ディシェルネはかなり重要なキーパーソンとなります。

主人公は、エーリュシオンの市民の一人。あるとき、彼が通う学校にディシェルネと名乗る転校生が現れたところから物語が始まります。と、つらつらと書いていくときりが無いので、この辺りで終わりにします。

ただ、以上の設定からもわかるように、第六章を除いて今作とのつながりはあまりないと思われます。



シルイトは今作の最後、かなり悪者風になってしまいましたが、エーリュシオン市民には誠実な対応を取っています。厳しいのは敵相手のみ、です。


続編の投稿予定は未定ですが、投稿した際には読んでいただければ嬉しいです。

それでは改めて、ありがとうございました。


~追記~

続編を投稿します。投稿予定日は2/18(Sun.)の零時を予定しています。今度は毎週土曜日と日曜日の零時に投稿する予定なので、ぜひ覗いてみてください。

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