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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第三章 王位継承編
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赤い月

いつまでも城の中から空を見上げていては王子を見失うということで、二人とも城の外に出た。


「くっ!」

「ますた!?」


シルイトが月から放たれる赤い光を浴びた瞬間、自分の左手を抑えて苦しみだした。

コンフィアンザが慌てて確認すると、王女から預かった指輪の蝶の装飾が月と同じように赤く光りだしている。


「・・これは?」


思わずつぶやいてしまうコンフィアンザ。

そんな二人の様子を上から見ていたボモラ王子はその場で大笑いを始めた。


「ハハハ!これは滑稽だな」

「ますたに何をしたんですかっ!」

「あんたは神にとことん嫌われているようだ」

「なんですって!」


すると、苦しみに耐えるようにしてシルイトが体勢を立て直してボモラ王子の方を見上げる。

月からの光を最初に浴びたときは刺すような鋭い痛みに襲われたため、思わず体勢を崩してしまったのだが、慣れたのか、はたまた仕様なのかはわからないが段々と鈍痛に変わってきており、耐えられる程度の痛みになっていた。

王子は月を背にして妖しく浮かんでいる。

いつの間にか真紅のローブを身に纏い、フードを目深にかぶっているためその表情をうかがい知ることはできない。


「あんたらも見ただろう?あの完成されたオートマタを。あれは神から授かったものだ」


その言葉にコンフィアンザは不信そうな顔をしたものの、シルイトは逆に納得したような顔をした。


「なるほど、だから技術的に数百年分の先取りができたってわけか」

「そして俺は今、再び神から新たな力を授かる!!」


そう言うと、王子は背にしていた月に向き直った。

直後、月から真紅の光の筋が一本、王子の心臓に突き刺さった。


辺りがまばゆい真紅の光に包まれる。


目が慣れてくると、そこにはさっきとほとんど変わらない姿で月を背にして浮かんでいる王子の姿があった。


「俺は異世界からやってくる堕ち人はほぼ必ず何らかの力を授かるのは知っているだろう?」

「・・神聖術か」


王子が自分の力を十全に使いこなせるようになる前に排除しようと、シルイトは銃を構えた。


「・・パーマネント」


拳銃からまっすぐ発射された弾丸は、吸い込まれるように王子の体へと向かった。

だが、王子にある程度近づくと、突然動力を失ったかのように失速して落下した。


次に間髪入れずにイシルディンをとがらせて、体を貫通せんとばかりに王子の体へ突き立てようとした。

だが、王子にある程度近づくと、突然壁に当たったかのようにそれ以上進むことなくただの金属となり地面に落ちていった。


「・・これは一体・・?」

「ハハハハハ!これこそが俺の力、神聖術干渉型の魔力消去術の効果だ!!」


神聖術には様々な型がある。以前のリクトが使っていたのは錬成型。無から有を生み出すものだ。

それに対して、王子が使えるようになったのは干渉型である。既にあるものに作用することで、変質させる特性を持つ。王子は魔術を毛嫌いしているということで、魔力に特化した消去の力を得たらしい。


「一瞬、錬金術に見えたが、やはりあんたらの力も魔術がらみだったというわけか」


確かにシルイトが使う錬金魔術は魔力を使って行使するものだ。

そのため、魔力を消されると操作もできないし、行使自体できないものも出てくる。

コンフィアンザも錬金魔術によって造られたものの一つであるので、もしかすると魔力を消された環境では何らかの異常をきたす可能性がある。シルイトはコンフィアンザをかばうようにして前に一歩出た。

それを見てコンフィアンザは自分が壁になると申し出るものの、シルイトは聞く耳を持たなかった。

王子からすればコンフィアンザが人工的に造られたことなど知るよしもないため、ただシルイトが自分の力を警戒しているということだけが態度から伝わってきて優越感に浸っている。


「俺に勝てるものはもはやここにはいないだろう。だが、この数相手では俺も疲れる。この場は引かせてもらう。また会うときは全員を粛正してやる」


言いたいことだけ言って王子は昼間の闇夜に消えていった。

城の外で王子と敵対していた人たちはそろって空を見上げて王子が消えていった方を見つめていた。


「まさか、ここまであからさまに神とやらに敵対されるとは」


今の戦闘においても、本来技術的に不可能なオートマタを敵として出現させたり、敵の能力を大幅に向上させたりしている上に、そもそものウィスターム家襲撃も神が黒幕だったというのだから、もはや敵であることは確定的だ。

そして今、もう一つ問題が発生した。空である。王子がいなくなってしばらくたつ今でも依然として空は暗闇に染まり不気味な赤い月が煌々と輝いている。

おそらくこれも神の仕業なのであろうが、このままでは農作物などにも悪影響が出かねないし、危険指定にも影響が出るかもしれない。どうにかしないといけない事案となっている。ついでに言うと、シルイトの指輪もずっと痛み続けているのでどうにかしないといけない。


そんな問題だらけの現状だが、王子に対する対抗策はすでにある。電磁砲、ルクスリスだ。

というのも、ルクスリスでは発動するまでの砲身の中では魔力が使われているのだが、一度発射してしまえば弾自体に魔力が込められているわけではないので干渉されないのである。

同じ理論で言うと、普通の銃でも王子とやりあうことができるのだが、シルイトやコンフィアンザが使う銃は魔力も併用して威力を底上げしているため、パーマネントバレットを使わなかったとしても銃弾に干渉されるのは避けられない。

また、ルクスリスの弾のスピードは銃弾のスピードよりも遙かに速いので、より対応されにくいという意味でもルクスリスを使った方が賢明だ。

改善点があるとすれば発動するまでのスピードだろう。砲身を造るのにも時間がかかるし、できあがったとしてもそこから発射するまでにさらに時間がかかる。

少なくとも、砲身を造る手間をなんとかしないと動きが激しい対人戦ではあまり役に立たないだろう。以前の親衛隊との戦闘で使用したときはかなり特殊な例だったのだ。


王子が退いたために向こうも戦力の増強が図られるだろうが、こちらも体勢を立て直すことができる。

結果的には逃げられる形となってしまったが、王位継承戦においては王女が勝ったのには間違いない。

これから先は王女が次期国王の王位を継承しセレネ女王の治世が始まるのだろう。


そこで、城内の人員の統率が終わり外に出ていた王女が口を開いた。


「あの、私、一つ提案したいことがあります」


どうやら王子の最後の方の様子はきちんと見ていたようである。

だが、その口から紡ぎだされる言葉は予想外のものだった。


「神様にお会いしてはいかがでしょうか?」   ~第四章 赤い月編に続く


昼間の闇夜・・・・?


ということで物語はだんだんと終焉を迎え始めています。

ただ、夏くらいまではしばらく忙しくなりそうなので、どこかで定期更新をいったん止めるかもしれないです。ゴールデンウィークに書き溜めがたくさんできれば乗り切れる可能性もあります。


とりあえず次話は来週の土曜日の零時に投稿します。

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