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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第三章 王位継承編
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シルイト達の戦い その3



パーマネントバレットは確かに永久不変の弾道を飛ぶのだが、いくつかの例外が存在する。その一つがイシルディンだ。シルイトはパーマネントバレットの開発に当たって様々なものを貫通させる実験を行っていたのだが、どうしてもイシルディンだけは貫通することができなかった。

これが素材的な原因なのか、イシルディンが他の金属や素材よりも格段に堅いからなのかはわからないが、どちらにせよパーマネントバレットが通用しない例外的な素材で体の表面が構成されているということになる。

そもそも、パーマネントバレットの本来の効力が発揮されなかったとしても、普通の銃弾としての威力はあるはずなので、金属装甲なみの異常な防御力が皮膚に備わっているということは明らかだ。


そうこうするうちに相手がもう一度銃を構えてこちらを撃とうとしている。

素早く壁を張り銃弾を退けたシルイトは銃撃するのを諦めて、近接戦に持ち込むことにした。

シルイトはコンフィアンザと違って筋力に自信があるわけでもないため、格闘戦はどちらかというと苦手な部類である。

だが、イシルディンを組み合わせることで格闘戦ではないが近接戦は行うことができる。

装備からしておそらく親衛隊員も近接戦を得意としていそうなのだが、近くで相手を見ることでシルイトのパーマネントバレットがなぜ通用しなかったのか探ることができると考えたのだ。


相手が繰り出してきた手刀をイシルディンの籠手を作り出して防御する。

通常なら繰り出した手刀の方に骨が軽く折れるレベルの衝撃が加わるはずなのだが、相手は全く痛がるそぶりを見せない。

それどころかこちらの籠手が若干手の形にへこんでいるのがわかる。

もう確定だった。

相手は何らかの手段で体をきわめて硬質化させているのである。


一般的に体を硬質化させる手段は魔術のみだ。

魔術で体を金属に置き換えるなどすれば、きわめて硬い肉体を手に入れることができる。だが、多くの場合でそうして得た肉体は俊敏な動きができずに袋叩きに合うのがオチである。

また、今回の敵であるボモラ王子は魔術が大嫌いだという情報が出ているため、何か細工がしてあるとすれば間違いなく錬金術がらみである。

錬金術を使った硬質化は体を中から変質させるというよりも、体の外側を守る防具をより高性能なものにするという考え方の方が普及しており、生身の体で銃弾から身を守るといった技術はないはずなのだ。

だが、シルイトが相手をよく観察してみると、すぐに違和感に気付いた。

肉が揺れるような動きや表情の変化、呼吸の動作などが全く見られないのである。


「こいつら、自我がないな」


機械人形、通称オートマタは錬金術界でもかなりの先進技術にあたる。

といっても、実際に完成しているわけではなく、実際には二足歩行すら可能になってはいない。

子供たちに話して聞かせるような空想上の技術だ。

だからこそ一層謎が深まるのだが、細かい原理はこの際どうでも良い。体が何でできているかが問題なのだ。

オートマタの体は大部分が金属で作られる方が運用上都合がいい。剛性が高まるというのもあるし、何より比重が重くなるために動作が安定するからだ。大剣や大斧などと同じ原理である。

つまり、この理論の通りにオートマタのボディに金属を採用していれば、イシルディンに変換さえすれば後はこちらの意のままに分解できるというわけだ。

再び手刀で攻撃してきたため、イシルディンを手錠のようにして、相手の腕を捕獲した。

そのまま瞬間的に手錠をかけた部分からイシルディンに変換していく。シルイトの予想通り、相手のオートマタは金属で体が構成されていた。

変換がすべて完了すると、そこには肌色の塗料や髪の毛の繊維のみが地面に落ちていた。

アーマープレートもすべて変換したため衣服はプレート同士をつないでいた布くらいしか残っていない。


コンフィアンザの方を見ると、格闘戦で強引に組み伏せたコンフィアンザが相手の腕を関節をきめることでへし折り、首にも圧力を加えてへし折らんとしている光景が目に映った。

普通の人間ならばそこまで簡単に押さえ込んだりへし折ったりはできないのだが、今回は相手が悪かったと言わざるを得ないだろう。コンフィアンザは体が金属でできているわけではないが、普通の人間とは比べるまでもないほどの力を出すことができるからである。

あっちも安心だと目をボモラ王子の方へ向けた。

王子はコンフィアンザの残酷な戦闘に目がいっているようで、シルイトの方は気付いていない。

そこで、王子の近くまで近づいていくと、やっと王子が気づいた。


「な、お前、アイツはどうしたんだ!?」

「オートマタのことを言っているようなら、ほぼ完全に消したぞ」


シルイトの指がさす方をみると、確かに無残なオートマタの残骸がそこにあった。

ヒッと情けない声をあげながら玉座の上で後ずさりする。


「何者なんだお前たちは!?」


もう一人のオートマタも倒したのか、コンフィアンザがシルイトに合流してきた。

敵が排除されたため、王女の周りのイシルディンの壁は解除した。

殺気を抑えめにしているシルイトとは対照的に、マスターの敵である王子に対してコンフィアンザは全開の殺気を浴びせていた。


「俺はウィスタームの末裔だ」


その言葉におびえたような表情を浮かべていた王子の態度が変わった。

自分よりも下に見たような態度をとりながらも実力は認めている、といった感じだろうか。目では見下した様子なのだが、緊張感は先ほどよりも増している。


「そうか、お前が死にぞこないか」

「ますたを愚弄することはゆるしませんっ!!」


吐き捨てるように言った王子の言葉に逆上したコンフィアンザが王子の首を絞め始める。


「フィアン、やめろ」

「いやです!こいつだけは許せませんっ!」


シルイトの制止も聞かず赤ん坊のようにいやいやと首を振るコンフィアンザ。

だが、次のシルイトの絶対零度の声には逆らえなかった。


「やめろ、これは命令だ」

「っ!・・はい」


力を抜くようにして首から手を放すコンフィアンザ。

首だけ持たれて空中に浮いていた王子は、手を離されたことによりドスンと玉座に落ちた。

二、三度コホコホと咳き込んだが、特に表情を変えることはなかった。それを見て少しいぶかしげな顔をしたシルイトだったが、王子が質問してきたのでそちらに意識を傾けた。


「復讐か?」

「そうだ・・だが殺しはしない」

「そんな言葉にこの俺が屈するとでも思ったか?俺は神から愛されているんだ」

「・・神?」


いつか聞いた単語がまたしても出てきたために思わず聞き返したシルイト。

それに対して王子はさも得意げに語る。


「もともとウィスターム家を襲撃させたのも神からの啓示によるものだ。そして今、俺はさらなる高みへと昇ることができる」

「!、おい!!」


王子の前半の発言が衝撃的すぎて、一瞬気を緩めたその時、王子がふわりと空中に浮かび上がり、門の外へと出ていった。


「おい待て!!」


慌てて後を追う二人。まだ降参しそうにない王子をこのまま逃がしてしまうと、たとえこの場では王女が勝ったとしても後々クーデターが起こりかねない。

二人が謁見の間から外に出ると、アポストルズのメンバーが既に全員の私兵を倒した後だった。

外から兵士がなだれ込んでこなかったのは、ここで味方が戦っていたおかげだったようである。

王女にその場の指揮を任せて王子の後を追うって走ると、二人は城の外へと通じる扉についた。

扉はすでに味方が中に侵入する際に解放したようで、その解放されている扉を通って王子が外に出たようだった。そして、扉が開いているからこそ、シルイトとコンフィアンザの二人は外の様子を見ることができる。

外は異常な光景が広がっていた。


「ますた、今って・・夜じゃあないですよね」

「ああ・・そのはずだが・・・」


コンフィアンザもシルイトもそろって頭上を見上げている。

二人ともあまりにも異常な光景に唖然とした表情を見せていた。


「なら、どうして外が真っ暗なんですか?」

「それだけじゃない、見てみろ」


シルイトが指をさした方向には真っ黒い空にポツリと浮かぶ真紅に染まった月が煌々と光り輝いていた。

次回は来週の土曜日の零時に投稿します。

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