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第六十七話 新たなるゴブリンの強さ

「キュピ?」


 とりあえずミラが、あの追いかけられていたスライムとゴブリンの間に入ったことで、奴らのターゲットはミラに切り替わったようだ。


 そしてそんな状況を知ってか知らずか……小さなスライムがミラの足下で不思議そうにキュピキュピ鳴いている。


「うぅ、可愛いよ! エッジ! この子、可愛いよ!」

『判ったから、とにかく戦いに集中しろミラ』


 目の前にはこれまでとは明らかに違うゴブリンが3体もいるんだからな。


 全く、これでこのベビースライムってのが罠だったらシャレにもならないんだけどな。


 とりあえず言葉通じるか判らないけど、念で余計な事はするなよ? と送っておく。


「――キュピュイ!」


 あ、反応した。あれ? もしかして通じてるのか?


『おい、俺の念が判るなら、とりあえず奴らに目をつけられない程度に離れていろよ。そんなところにいて踏まれても知らないぞ?』


「……キュピッ!」

「え? び、ビックリマーク?」


 ミラが驚いているな。俺もだが。こいつ、自分の体で小さなビックリマーク出して表現しやがった。


 わ、わりと器用な奴だったんだな……でもおかげで何かミラもメロメロだ。こういうの好きだったのかミラ……。


 まあ、とりあえず言いたいことは伝わったようで、スライムはピョンピョン跳ねながら向こうに見える柱の影に隠れた。


 おかげで、ミラも戦闘に集中できそうではあるな。顔がユルユルだったミラも、流石に真顔に戻った。


 さて、相手はどう出てくるかといったところだが――そこへ後衛のゴブリンシーフがミラに向かって何かを投げつけてきた。


 拳よりも一回り小さいぐらいで、ミラも、え? て感じで円盾でそれを防いだけど、石? そうだ石だ。


 あのシーフ、何かと思ったら石を投げてきた。見たところただの石だが一体どういうつも――


『しまったミラ! 左前だ! ファイターが来てる!』


 え? とミラがすぐに視線を戻す。だが、その時には剣を持ったゴブリンが目の前まで迫っていた。


 しまった、あの陣形からシーフが投石で気をそらしている間に、逆側をついて来たんだ。

 単純な手だが、小さな石を念のために円盾で弾いてしまったから、そこで意識がファイターから外れてしまっていた。


「ゴブゥウゥウウ!」

 

 ゴブリンファイターが軽く飛び上がりながら、振り上げた剣を体重を乗せて思いっきり振り下ろしてきた。


 反応が遅れたミラは避けるのが難しい状態だ。

 だから、ミラはバスタードソードの俺を咄嗟に掲げるようにして、相手の剣戟を受け止めた。


 刃と刃が触れ合ったことで火花が舞う。そしてミラはそのまま後ろに飛ばされ、尻もちを付く形に。


 ダメージにはつながっていないと思うが、まさかゴブリンにミラがバランスを崩されるなんて!


 こいつらやはりこれまでのゴブリンと違いすぎる。しかも――


「ミラ! 次が来るぞ避けろ! 魔法だ!」


 そう、ミラがバランスを崩すのを見計らっていたように、後ろに控えていたゴブリンマージが魔法を行使してきた。


 風切音がミラに迫る。多分風魔法だろうが、かなり弾速が速い。


 ミラは無理な体勢からにも関わらず、横っ飛びでそれを躱す。

 何かがミラのいた場所を通過し、その後ろの壁に当たった。


 確認してみると、壁に一筋の傷が出来ている。そこまで深くはないので、威力は一発でどうにかされるものではないと思うが、連続で撃たれると厄介だ。


 するとファイターは射線に入らない位置に場所を変え、マージの杖から更に二発、三発、と危惧したように魔法が連射される。


 炎や土といったわかりやすい変化がないところを見ると、音の感じといいやはり風魔法なのかもな。


 しかし視認出来ないのも地味に嫌らしいところだ。

 音から判断するに正面へ直線上に撃っているのは間違いないと思うし、ミラもそう判断して動いていると思うが――


「くっ!」


 とにかく、転げ回っていても仕方ないと思ったのか、ミラは着地からその反動を利用して立ち上がって見せたが、いくら素早くそれをやっても、やはり立ち上がりの瞬間に多少は隙が生まれる。


 そこに敵の放った風の魔法が重なった。直撃こそしなかったが、肩を切り裂き、血が滲む。


『ミラ、大丈夫か!?』

「う、うん心配ないよこのぐらいかすり傷程度」


 それなら良かったが……うん?


『ミラ、そういえばあのゴブリンシーフはどこに消えた?』

「え? あ――」


 その瞬間、ミラの膝が折れた。片手で頭を押さえて、何だ? 一体どうした!


 すると、ミラの背後にゴブリンがいた。そう、あの消えたと思ったらゴブリンシーフが――そうかこいつまさか、気配を消したりが出来るのか?


 それでミラがファイターやマージと戦闘を繰り広げている間に、背後に回り込み、あの袋みたいなので攻撃したのか!


 だが、だったらあの袋は何だ? ナイフは別に持っているから、あれも武器なのか?

 そういえばよく見ると、袋はやたらとゴツゴツしていて――そういえばこいつ、最初は投石で、そうか! 石か! あの袋に石が詰まっていて、それでミラの背後からガツンッと打ち込んできたわけか!


 くっ、今ミラがめまいを起こしているような状態になっているのもこの為って事か。

 だが、やばい! この状況じゃ一瞬の隙が命取りだ。


『ミラ、しっかりしろ! シーフが迫っている!』

「う、う~ん……」


 ミラは頭を振って、なんとか立ち直ろうとしているが、それより一瞬早くゴブリンシーフのナイフが迫る。


 近づき、ミラに向かって横に切り払った。だが、こいつそこまでパワーはないのか、命中はするも胸当ての部分だったおかげでそのまま後ろに倒されるぐらいで取りあえずは済んだ。


 だが、そこから今度は倒れたミラに飛びかかり、馬乗りになってナイフを振り上げる。


『ミラ、振りほどけ! なんとかふりほど――』

「はっ!」


 俺はもうとにかく、ミラが死なないようにと必死過ぎて冷静さが欠けていたのかもしれない。


 だが、一方でミラはしっかりこの状況を打破する手を考えていたようだ。


 ゴブリンシーフの顔が驚愕に変わる。なぜなら今まさに有利に立っていたはずの自分が、突如水の泡の中に閉じ込められたからだ。


 ナイフを振り下ろしても、内側からはそう簡単に破れない。


 そう、ミラは腕輪の力で水の魔法を使った。それで泡の中に閉じ込めたんだ。あの魔法は近接状態の方が当てやすい。

 

 そしてミラはゴブリンシーフに向けて、トドメの言葉を言い放つ。


「スパークボルト!」

 

 ミラの生み出した泡と、続けて放たれた電撃が融合することで、一撃必殺の魔法に昇華する。


 情けない悲鳴を上げたゴブリンシーフは、泡が弾けた瞬間黒焦げになり、プスプスと煙を上げながら、落下し絶命した。


――進化PTを10得ました。


――経験値を80得ました。


 これで、後はゴブリンファイターとマージだな!

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