第六十八話 スライムどうする?
先にゴブリンシーフを倒したことが結果的に良かった。
奴らの基本戦術はマージはひたすら距離を取っての魔法での援護、ファイターが近接でミラの気を引いた後に、気配を消した(恐らくだが)シーフが忍び寄り、背後などから強襲する、このパターンだったわけで、つまりシーフはああみえて結構仲間の中では重要な位置にいたことになる。
元のパワーは恐らくそうでもないのだろうが、スキルの効果で不意打ちをつくと威力があがったりなど、きっとそういった恩恵があったのだろう。
あの石のつまった袋もヤバかったしな。
だが、それを失ったことで残った決め手はファイターだけとなった。
それはそれで距離をとってチクチク魔法を撃ってくるマージの存在もあって、やっかいでもあったが、視界外から忍び寄るシーフがいないだけでも精神的にはかなり楽だろう。
ゴブリンファイターに関して言えば戦闘方法はわかりやすい。唯一の注意点としては、こちらが死角から攻撃しようとすると回転しながら剣を振ってきたところか。
これは全方位カバーしてくるからな。しかもその直後はマージからのあの魔法攻撃だ。
『こうなったら出し惜しみしている場合じゃないなミラ』
「うん、そうだね」
頷き、ミラがファイターに向けてスパークボルトを撃つ。案の定、魔法への耐性は皆無に等しいのか、ダメージを受けた上、痺れて若干動きが鈍った。
その隙に、ミラがマージへと疾駆する。魔法を撃ってくるが、もう多少のダメージは気にせず、一気に飛びかかった。
ファイターが壁になってなければ、魔法系の防御力なんて紙みたいなものだ。
案の定、肩から胴体に掛けて切りつけられたことで、悲鳴を上げる間もなく絶命した。
――進化PTを20得ました。
――経験値を80得ました。
気がついたファイターは仲間が死んだことで怒り心頭といった様子。単身ミラに突っ込んできてあの振りかぶってからの一撃を放ってくる。
だが、何の援護もなしに放たれた大振りの攻撃なんてものは、ミラには通用しない。
あっさり避ける。そして打ち終わりでがら空きになった身体へ連撃を叩き込んだ。
連撃はその名の通り相手に向けて連続で攻撃を仕掛ける。燕返しと重なる部分もあるけど、燕返しより若干隙は大きいかもしれない。
ただ、威力は連撃の方が高そうだ。ゴブリンファイターもこれには耐えられなかったようで、ゆっくりと地面に倒れ、ぴくりとも動かなくなった。
――進化PTを15得ました。
――経験値を80得ました。
何とかゴブリン3体は倒せたが、大分敵も手強くなってきたな。ゴブリンですらあんなに強くなっているとは思わなかったしな。
だから、とりあえずミラのステータスも聞いてみる。
──────────
ステータス
名前:ミラ
レベル:14/32↑2
経験値:250/2099
HP:108/164↑12
MP:99/158↑14
疲労:30%
状態:正常
マナ:820
力:62↑3
体力:69↑4
精神力:66↑3
魔導力:64↑3
素早さ:72↑3
器用さ:66↑3
攻撃力
切:134↑14打:127↑13突:131↑13魔:81↑7
火:0水:0土:30↑4風:0
光:0闇:0雷:0氷:0
防御力
切:57↑2打:59↑1突:53↑2魔:32↑1
火:14水:0土:0風:0
光:0闇:0雷:0氷:0
パッシブスキル
【進化の剣の恩恵LVMAX】
アクティブスキル
【スキル共有LVMAX】
装備品
武器:バスタードソード
防具:蜥蜴革の胸当て、蜥蜴革の兜、蜥蜴革の手袋、蜥蜴革の具足
盾 :蜥蜴革の円盾
アクセサリー:無属性の腕輪(3/3)
所持アイテム
ウェストバッグ、HP回復ポーション(中)、HP回復ポーション(大)、魔火筒、水息器、水の魔石×2、雷の魔石、強化の薬(小)、鉄壁の薬(小)、耐久値回復の薬、解毒剤×2、鑑定眼鏡、火の結晶(高)×1
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う~ん、攻撃力は順調に上がってきているけど、やはりこのあたりまで来ると防御力が気になるところか……基本的には身軽さを活かして攻撃は避けるが主流とは言え、ある程度は欲しいよな~。
「キュピ~♪」
「あ! キュピちゃん!」
そんな事を考えていたら、例のスライムが嬉しそう(?)に鳴き声を上げながらミラに近づいてきた。
いや、それにしても――
『ミラ、キュピちゃんって何だ?』
「え? キュピッて鳴くからキュピちゃん」
わかりやすいな。いや! じゃなくて!
『だからなんで名前つけてるんだよ!』
「え? 駄目?」
「キュピ~……」
いや、駄目って……スライムもそんなズーン! て雰囲気出してるけど、名前別につけてもいいけど、そもそも名前つけるってことは――
『まさか、連れて行く気かミラ?』
「うん、だってこのままじゃ危ないし! それに可愛いし!」
「キュピッ!」
いやミラ、むしろそれ最後の一言の方があれだろ? 重要なんだろ?
「それにエッジ、本当に危ないんだよ。だってこの子――」
そしてミラはスチャっと鑑定眼鏡をかけた後、俺に伝えてきた。
名前:キュピ
種族:スライム
形態:ベビースライム
LV:1
HP:3/3
なんか、敵のゴブリンよりは情報量が多少多いな――いや、それ以前に!
『なんで名前がキュピになってるんだよ!』
「あ、それ今決まったみたいだね~」
「キュピ~♪」
「あははっ、くすぐったいよ~」
いつの間にかミラの肩の上に移動させられていたスライムが、何か頬ずりしてるな。
どうやらなつかれてしまったようだ。名前が決まったのもこのスライムが受け入れたからなのか? いや、でもな……。
『流石にHP3は低すぎだろ……』
「僕、ちゃんと育てるよ!」
「キュピ! キュピキュピ! キュピ~!」
いや、スライムはスライムで、しっかり育ってやるぜ! みたいに張り切られてもな。
とは言え、確かにこのまま置き去りにしたら……まあ、多分無事ではすまないだろうな。
『まあ、最終的にはミラの判断だけど、でも本当その分気をつけないとだめだぞ』
「うん! 勿論だよ! 流石エッジ、優しいよね。そういうところ大好きだよ」
「キュピ~♪」
……そういうのをさらりと言われると照れるんだが。それにしても、可愛らしい系のものも好きなのか、変わってるな。
まあ、俺の考えが固いだけなのかもしれないけどな。
とは言え、とりあえずこのキュピを連れて行くと決めた後は、ゴブリンから魔晶を抜き取り、ついでに装備品もウェストバッグに入れておく。
もしかしたら売れるかもしれないし、これならまだ運べるからな。
「そういえば、あの扉の奥って何があるんだろね?」
『ああ、俺もそれはちょっと気になっていたな』
「キュピ~?」
キュピも頭の上、というか頭の一部分を?に変えて反応してるな。こういうところは器用だなおい。
とは言え、この場所は入ってきた場所から見て正面奥に鉄の扉が見える。
その先は気になると言えば気になるけど、ただ、当然このあたりは初めてだ。下手に奥に向かって更にLVの高い魔物と遭遇しても酷だしな――
俺がそんな事を考察していると――ガチャリ、とその扉から音が聞こえた。
ミラがえ? と音のする方へ身体を向ける。俺もそっちを注視した。
もしかしたら――またさっきみたいなゴブリンが来たのか? とそう思ったんだけど……。
「…………」
扉を開け、こちら側へやってきたのはゴブリンには間違いなかったが――それはあの時、そうゴブリンロードを倒した後に泉の前で遭遇した、奇妙なゴブリンだった……。




