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迷宮で目覚めたら、何故か進化の剣だった  作者: 空地 大乃


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第三十四話 対ゴブリン戦②

 弓兵を指揮していたゴブリンリーダーを排除し、邪魔になるゴブリン兵だけを斬り捨て、ゴブリンロードまでの距離を詰めていく。


 そこで、ついに巨漢の3体、ホブゴブリンが動きを見せた。見た目通り鈍重なようだが、小柄なミラからすればその大きさだけでも驚異的に思える。


 ホブゴブリンはギチギチの革鎧を装着し、2体が両刃の斧、1体は柄の長い槌を武器としている。


 見た目通り力はありそうだな。武器も鋼鉄製でまともに喰らっては流石にタダではすまないだろう。


『ミラ、ホブゴブリンに関しては油断は厳禁だ。とにかくよく見ていけ。力はかなりあると思うが、動きは見た目通り鈍そうだからな』

「うん、了解だよエッジ」


 そうこうしている間にホブゴブリンがドスドスと地面を揺らしながら迫ってくる。

 

 先ずやってきたのは斧持ちのホブゴブリンだ。武器を振りかぶり、横薙ぎの攻撃。予備動作こそ動きが重いが、振ってしまえば勢いが乗って鋭い斬撃に変わる。

 

 ミラはバックステップで躱しこそしたが、風圧で仰け反りそうになるほどの膂力は冷や汗ものだ。


 だが、動作が大きいだけに振り終わりは隙だらけでもある。そこを狙いたいがホブゴブリンの胴体は革の鎧に守られている。攻撃が通らないこともなさそだが、わざわざ効果の薄い鎧部分を狙う必要もないだろう。


 ならば脚か腕か、といいたいところだが、ミラは地面を蹴り跳躍し、

「燕返し!」

と相手の顔面に大技を行使。まさに宙を飛び交う燕の如き剣筋で瞬時にホブゴブリンの顔面を2度切りつけた。


「グウウォオォオォオォオォオ!」


 左手で顔を押さえホブゴブリンが呻き声を上げる。どうやらかなり効いたみたいだな。


「ごめん、燕返し使っちゃった」

『いや、ここまで来たらもう温存してても仕方がない。勿論無駄な乱発は危険だけどな』


 俺達がそんな会話を交わしてると、傷ついたホブゴブリンを押しのけて槌持ちの仲間と斧持ちが迫る。


 更に左右に散った弓持ちの生き残りから矢が放たれた。


『後ろからはゴブリンの兵士も迫ってるな、このままだと挟撃を喰らう』

「それなら!」


 槌持ちが得物を振り上げるが、そのタイミングでミラが飛び込みホブゴブリンに密着した。

 槌が振り下ろされるが柄が長いのが災いし密着したミラには当たらず、むしろ振り下ろした衝撃で近づいてきていたゴブリン達を粉砕してしまった。斧持ちも考えなしに攻撃を加えれば槌持ちにも当たる。それが判っているのか攻撃には踏み込めない。


 矢弾も流石に仲間を当てには来てないのでミラの位置取りはある意味完璧とも言えた。ただ、当然ずっとそこに留まるわけにはいかない。


 槌持ちのホブゴブリンは柄から片手を放し、素手でミラを捕まえに掛かった。

 しかし俺が目となりミラに伝えることで脇の下を潜り抜け、背後に回り槌持ちの腕と脚に一撃ずつ叩き込む。


 どれも防具に守られてない部分だが、しかし片手持ちでの攻撃はそこまで効いていない様子であり、腰を捻り振り向きざまに槌での反撃を仕掛けてくる。


 だが、ミラにはその動きが良く見えている。脚に力を込め、そのまま後ろに飛び跳ねれば十分躱せるタイミング――


『グウウォオオオォオオォオオオォオオオオ!』


 その時、少し離れた位置で静観していたゴブリンロードが突然雄叫びを上げた。

 大気を激しく揺さぶるほどの声量。岩壁も地面もビリビリと震え、そして――ミラの動きがピタリと止まった。


 これは、まずい! この雄叫びで意識が完全に飛んでる! しかもこの雄叫びは他のゴブリンには一切効いていない――つまりホブゴブリンの攻撃も止まることなく、回転の加わった残酷な一撃がミラの脇腹を直撃、ぐにゃりとミラの身が折れ曲がり、ぐはっ――と、吐血混じりの呻き声を上げふっ飛ばされた。


 ミラの小柄な身体はそのまま地面に叩きつけられ、全身に土の洗礼を浴びながら更にゴロゴロと数メートルほど転がった。


 そこでようやく動きは止まったが、あの鋼鉄の一打が直撃したんだ。ただで済むはずがない! 実際ミラはピクピクと小刻みに痙攣している。


 いくら鎧に守られてるとは言えあれじゃあ骨の何本かは間違いなく逝ってるだろ。

 折れてるだけでも大変だが砕けでもしていたら最悪だ!


 いや、それ以上に意識があるかが問題だ、とにかく念で呼びかけないと。ただでさえホブゴブリンが近づいてきている上、ゴブリンが容赦なく矢を射ってきてんだ。


 くそ! 既に何発か矢が当たってるじゃねぇか! これでも起きないのか!


『ミラ! おいミラ! 起きろ! このままじゃ本当に死ぬぞ!』


 とにかく、まだ俺が生きている以上ミラのHPが残っているのは確かだ。シンクロしてる関係でもしミラが死んでしまったら俺も砕けるか何かするはずだからな。


 つまりまだぎりぎりでも命は保たれている可能性が高い。


『ミラ! ミラ! おいミラ! 早く、早く目を覚ませよ! ミラ!』

「…………ゲホッ、ケホッ――」


 咳き込んだ! ゴホゴホいってるが、意識は取り戻したか。よし! あとはダメージがどれぐらいか――


『ミラ、良かった! 大丈夫か?』

「あ、あまり大丈夫じゃないかも――全身痛いし、骨も結構、やば……」


 くっ! やっぱり骨まで逝ってたか! あの吹っ飛び方は危険だとは思ったが――


『ミラ、腕は動かせるか? バッグからハイポーションを出して飲め! あれならすぐに怪我も回復できるって話だ!』


 俺の言葉に弱々しく頷いて、ミラがバッグに手を伸ばし、ポーションを探して弄り始める。


 だけど、俺の見ている視点では既にホブゴブリンがすぐそこまで迫っていた。急がないとまずい!


『ミラ! あと7、8歩でホブゴブリンの射程範囲に入る! つらいだろうが――』

 

 ん、くっ、とキツそうに喘ぎながらも、ミラの手が――遂にハイポーションを取り出した。

 蓋を口でこじ開け、中身を一気に――飲み干す! するとミラの身が淡い光に包まれ……。


「グゴォオオ!」


 けたたましい爆発音が俺の目の前で鳴り響く。ホブゴブリンの顔が爆発した音だ。その衝撃でバランスの崩れた相手の槌は見当違いの方向に振り下ろされ地面が砕かれ、土塊が宙に舞う。


 そう、ミラがあのダーツをギリギリのところでホブゴブリン目掛けて投げつけたのだ。ドゴンの言っていた通り、これのみで倒すことは出来ないまでも、爆発で怯ますことが出来た。 

 おかげで相手の攻撃は外れ、ミラが立ち上がると同時にガラ空きの首へと剣先を通す!

 

 ブスブスと喉に刃が差し込まれていった。剣先から拳3つ分ぐらいまで刃がめり込む。

 ドクドクと濃い緑色の血が流れ肌を伝い地面に流れ落ちる。


 だが、どうやらこれでもまだ致命傷には至っていないらしい。貫通しきれず止まったところで刃を寝かせ引き抜いた。

 

 槌持ちのホブゴブリンは柄から片手を放し、払いのけるようにミラに向けて腕を振る。

 ミラは盾で腕を受け止め、その勢いを利用して一旦距離を取った。


『よっし! ハイポーションのおかげで危機は脱せたようだな』

「うん、でもそれでも回復量は35、今のHPは60だけどね……」


 ミラの今の最大HPは118だ。あの一撃を喰らうまではこれといったダメージを受けていなかったので、つまりさっきのアレだけで8割以上もっていかれたわけだ。


 一度にそれだけのダメージを受ければそりゃ身体にも異常を来す。骨だって砕けるだろ。まあ、そのダメージには矢が刺さって受けたダメージも多少は入ってるだろうが、殆どはあの槌によるものと思って間違いがないだろ。


 本当に痛烈な洗礼だった。ポーションがなかったら冗談ではなく一巻の終わりだったことだろう。


 幸運だったのはポーションの効果は最も怪我が酷い箇所から適用されるということか。そのおかげで砕かれた骨が先ず回復したわけで、しかもハイポーションは即効性があるからな、怪我が瞬時に治ったおかげでダーツを投げる余裕が生まれた。


『ミラ、普通のポーションも一応飲んでおこう。ただ(大)は取っておきたいから効果(中)のにしておくといい』

「うん、判った」


 首肯しバッグからポーションを取り出し、それも飲み干す。これで時間は多少掛かるものの、更に30回復してHPを90まで持っていけるはずだ。


『ミラ、次はこの2体は一旦無視して、あの場から動こうとしなかった手負いのホブゴブリンを狙え。俺の考えがあっていれば、あの1体を倒せば熟練度がMAXになる。そうすれば切れ味もまた変化するはずだ』


 ミラは、判った、と頷き、俺を片手に2体のホブゴブリンを置き去りに、ミラの脚で7,8歩分ほど先にいる手負いの獲物を狙いに疾駆する――

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