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甘やかし隊?

時雨って名前………好きなんです。


妹の事を思い出して気持ちが悪くなって逃げるようにお家に帰って来るとスキロフさんとケーシーさんに心配されてしまった。

顔が青ざめていたらしい。

スキロフさんに問答無用でお姫様抱っこされて自分の部屋のベッドに寝かされたのは驚いた。


「お願いですからゆっくり休んでくださいませんか?」

「………はい。」


スキロフさんの心配そうな顔に負けた。

仕方なくベッドで目をつぶると程なくして眠気が襲ってきた。






その時の夢は本当に最悪だった。

祖父、父親と妹、無関心な母が出てきた。

私はうなされて目を開いた。

そこには一人の男の人がいて私に手を伸ばしていて、私はビクッと体を震わせた。


「大丈夫。僕は君を傷付けたりしないよ。」


優しい声で私の頭を撫でる手にすがり付きたくなって涙が溢れた。


「君は僕が守るからね。」


笑顔のお兄様に少しだけ安心した。


「お兄様。」

「なんだい?」

「ありがとうございます。」

「………大好きな君のためなら僕は何でもするよ。アリアンロッド。」

「………お兄様は優し過ぎます。私はアリアンロッドじゃ無いのに。」


私の言葉にお兄様はクスクスと笑った。


「じゃあ、シグレ。僕は君を幸せにしたい。」

「………時雨って名前………お祖父様がつけてくれたの………あの人がくれたもので一番嬉しかった贈り物なの………だから………嬉しい。」


お兄様は真剣な顔をして言った。


「シグレ。君が傷つく必要はない。沢山幸せを見つけよう。」

「はい。………お兄様………私、まだ眠いの………」

「じゃあ、シグレが嫌な夢を見ない様に僕が手を握っていてあげる。」


………その瞬間、私は目をパッチリと開けた。

し、しまった!ね、寝ぼけてしまった。


「ご、ごめんなさいお兄様!甘ったれた事を言ってしまいました。起きます!」

「寝てて良いのに?」

「大丈夫です。もう元気です!」

「甘えて良いんだよ?」

「あま、甘えません!」

「………今日はずっと一緒に居てあげられるから気にしなくて良いよ?」


優しい言葉のオンパレードで照れてしまう。


「わ、私は弱くなりたくない………」

「シグレ、君はとっても強いよ。僕なんて足元にも及ばない、だから甘やかしたいんだよ。少しぐらい息が出来る場所が欲しいんじゃない?僕はそう言う場所になりたいよ。」


私はガバッと布団から出るとお兄様に抱き付いた。

そして、子供の様に声をあげて叫ぶように泣いた。

その間お兄様は私の背中をさすってくれた。

それがあまりにも気持ちよくて私は泣きながら意識を手放し、眠りについたのだった。





次に目が覚めた時、私の手を握っていてくれたお兄様とお父様の姿が見えた。

私は驚いて起き上がろうとしたが二人に止められた。


「寝てないと駄目だよアーリー。」

「少しゆっくりしなよ、シグレ。」

「イディオン?シグレと呼ぶことに決めたのかい?」

「シグレがその方が嬉しいみたいだから。ね!シグレ。」

「そうなのかい?私もそう呼んだ方が良いかな?シグレ?どうかな?」


お兄様とお父様の゛シグレ゛攻撃につい赤面してしまう。


「「可愛いよ。シグレ。」」


この二人はそっくりだ。

やっかいな所が似すぎている。

私は両手で顔を覆った。


「それ以上言わないでください。お願いします。」

「可愛い娘を可愛いって言うのは当たり前だよ。」

「僕らはシグレを甘やかし隊だからね。」

「………なんですかそれ?」


私は眉間にシワを寄せた。

そんな私を見て二人はクスクス笑った。


「シグレの事が大好きな人間が集まって出来た団体かな?」

「?」


お父様の言葉が理解できない。

だ、団体?それは複数の人間が居るって事?


「そ、それは………お父様とお兄様の他にも居るって事ですか?………スキロフさんとケーシーさんですか?」

「その二人は勿論だけど、他にも沢山居るよ。」


あ、有り得ない。

私は頭痛がするのを感じた。


「だから、シグレは僕達に甘えていれば良いんだよ。」


お兄様はそう言って私の頭を優しく撫でた。

私は考える事を止めた。

考えた所で理解できないのだから考えるのはよそう。

私は頭まで布団をかぶると言った。


「寝ます。」


二人のクスクスと言う声を聞きながら私は、考えるな考えるなと呟いたのだった。

お兄ちゃん仕掛けてきました。

時雨ちゃんはお兄様優しい!ぐらいにしか思ってません。


お兄様とお父様のダブルパンチで時雨ちゃんノックアウトです。

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