マカッシュと試合
暑くなってきました。
夏バテです。
スキロフさんと一緒にマカロンを細長くしたようなお菓子を作った!
スキロフさんは手先が器用で見ていて感心してしまった。
スキロフさんと作ったお菓子を持ってお父様とお兄様に会いにお城へ向かった。
お兄様が買ってくれた藍色のポンチョを羽織って、フードを深くかぶってお城の門まで来るとすぐに門番さんが出てきてくれた。
一週間のうちに顔も覚えられているから顔パスでお城へ入れてしまった。
ここの警備は大丈夫なのだろうか?
ひとまずそれは、置いといて魔法局に向かって歩いていると騎士団の訓練場の方が騒がしいのが気になった。
とりあえず、ちょっとだけ覗いてみるとポレマオさんと梨元先輩が練習試合の真っ最中だった。
手に持っているのは竹刀に見えた。
この世界にも竹刀があるんだな~っと漠然と思っていると梨元先輩と目があってしまった。
「雨宮さん!」
「アマミヤ?」
ポレマオさんも私の方を見て手を振った。
「アーリー!一人でどうした?俺に会いに来たのか?」
「違います!お父様とお兄様に会いに!」
「ちょっとこっちに来いよ!」
ポレマオさんはニヤリと笑って手招きをした。
私は仕方なく彼らのもとに向かった。
「アーリー良い匂いがするな~!ヴィスコの所の使用人が作るマカッシュの匂いか?」
あのお菓子はマカッシュって言うのか。
「鼻がきくんですね。」
「獣人だからな!」
「………獣人なんですか?」
「ああ、狼の獣人だ!耳も尻尾も出せるぞ!」
「………見たいような見たくないような………」
「俺の毛並みは最高だぞ!」
「モフらせてくれるんですか?」
「良いぞ!ヴィスコが良いって言うならな!」
「………諦めます。」
「そんなことより一個よこせよマカッシュ。」
「良いですよ。梨元先輩もいりますか?」
「俺、甘いもの苦手なんだ。」
私は手に持っていたバスケットをポレマオさんにむけてから引っ込めた。
「何で引っ込めた?」
「ポレマオさん手が汚いです!」
「死にやしないよ!」
「駄目です!お腹痛くなっちゃいますよ!」
暫く沈黙が流れた。
私は良いことを思い付いた。
私はマカッシュを1つ手に取るとポレマオさんの口元に運んだ。
「はい、アーン。」
「………1つ確認して良いか?」
「はい。」
「ヴィスコに俺がしてくれって言ったなんて言わないよな?」
「お父様にですか?私が勝手にやっている事ですが?」
「なら良い。」
ポレマオさんはそう言うとマカッシュをハムハムと二口で食べた。
「旨!使用人腕上げたな!」
「………それは、スキロフさんの作った物じゃ無いです。」
「?」
「私が作った物です。褒めてくださってありがとうございます。」
「………やっぱり俺の嫁になるか?」
「遠慮します。」
「騎士団長ズルいぞ!雨宮さんを嫁にもらうのは俺だ!」
ポレマオさんは首を傾げた。
「アマミヤって誰だ?」
「私です。アリアンロッドさんの体に入る前の私の名前です。雨宮時雨が私の名前でした。」
私達の会話を聞いていた梨元先輩はニコッと笑って言った。
「雨宮さん、見て見て!こっちにも竹刀があるんだよ!」
「私も同じことを考えてました!竹刀、懐かしいです。」
「雨宮さん剣道やったことある?」
「正式なものは無いです。護身術程度なら………」
「やる?」
「………」
「手加減するよ!」
「………やります。」
私はポレマオさんに手をだした。
「かしてください。」
「こら、お転婆!ショウタロウは勇者だぞ?お前がケガでもしたら俺がヴィスコに殺される。」
「ケガしません。先輩は手加減してくれるって言いました。」
「ショウタロウ知らねえぞ!」
「大丈夫だよ!」
私は近くで見ていた騎士団の女の人にバスケットを持っていてもらう事にして梨元先輩と向き合った。
「先輩、この勝負賭けませんか?」
「賭け?」
「私が勝ったらお願いがあります。」
「俺が勝ったら俺と付き合うの前向きに考えてくれる?」
「………善処します。」
梨元先輩はニヤリと笑って構えた。
「倒せば良いんですよね?」
「うん。何しても良いよ。」
「了解です。」
私は剣道の構えをとった。
梨元先輩は上体を低くして走ると私との間合いをつめてきた。
私は竹刀を左横に素早く立てて先輩の竹刀を受け止めると右の膝で先輩を蹴り上げた。
先輩は何が起きたか解っていないながらもそれを受けとめた。
私は右足を下ろすとそのままステップを踏んで回し蹴りに切り替えた。
先輩が防御の姿勢をとったのが解り私は回し蹴りを諦めてもう一度足を下ろし手に持っていた竹刀で先輩の頭をぽこっと叩いた。
「ああああ~。」
先輩の声が響いた。
「私の勝ちです!お願いを聞いてください。」
「………はい。」
「名前で呼んで。」
「え?」
先輩の顔がみるみる赤くなっていく。
「私、雨宮の家が大嫌いなので苗字で呼ばないでほしいです。」
「………」
「あの家の事は思い出したくもない………アリアンロッドでもアーリーでも時雨でも良いので名前で呼んでほしいです。」
「………家って………妹さんは優しそうな子だったよね?」
「愛を知ってるんですか?」
「何回か声をかけられたことがある。」
「………そろそろお父様の所に行きます。お邪魔しました。」
私はその場から逃げ出した。
異世界に来てまで妹の話をされるとは思わなかった。
私は預けていたバスケットも受け取らずに逃げるようにして家に帰った。
魔法局にも顔を出す気力は無かった。
青い顔をして帰ったせいでスキロフさんとケーシーさんに滅茶苦茶心配されてしまったが、私はそれぐらいあの家族と妹が怖いのだと実感してしまったのだった。
時雨ちゃん強いです!




