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うちのお嬢様 執事スキロフ目線

短め!

「おはようございますアリアンロッド様。」

「………おはようございますスキロフさん。」


お嬢様がこの世界に来てから1週間がたった。


「今日も良い天気です。何色のドレスにいたしましょうか?」

「………」

「では、空色のドレスにいたしましょう。」

「あ、あのスキロフさん。」

「はい、なんでしょう?空色は嫌でしたか?」

「あ、ドレスは解らないのでおまかせします。」

「では、なんでしょう?」

「………起こしに来るのはケーシーさんにお願いしたいです。」

「彼女より自分のほうが使用人としては位が上なので代えることは出来ません。」

「………はい。」


お嬢様は項垂れた。

アリアンロッド様はこれが普通だったのだがお嬢様は恥ずかしいようだ。

それに、眠っているお嬢様は本当に美しい。

誰かに自分の特権を譲るつもりはない。


「アリアンロッド様?」

「お、起きます。」


お嬢様ベッドからおりて出されたドレスに手をのばした。


「ケーシーを呼んでまいります。」

「………ケーシーさんが起こしに来てくれればスキロフさんがケーシーさんを呼びに行く手間がはぶけます!」

「………」

「お願いします!」

「………ダメです。規則ですので。そんなことより今日は朝食の後勉強、お茶の時間と笑顔の練習その後ダンスのレッスンののち自由時間になります。では、ケーシーを呼んできます。」


ケーシーはきっと喜んでこの大役をやろうとするだろう。

絶対に譲らない。




お茶の時間にお嬢様の声が弾むのが俺の今の楽しみだ。


「あ、このお菓子美味しいです。」

「それは良かった。作った甲斐があります。」

「スキロフさんが作ったんですか?」

「はい。」

「………スキロフさん、私もお菓子が作りたいです。教えてくれませんか?」

「………かまいませんが………料理なんて使用人にまかせても構わないのですよ?」


可愛く首をかしげるお嬢様に俺は言った。


「貴族のご令嬢は料理はあまりしないのですよ。」


お嬢様は少しだけ柔らかな表情をして言った。


「好きなんです。」


俺の心臓が撃ち抜かれたように跳ねた。


「料理するの好きなんです。」

「………そうでしたか………では、自由時間に簡単な物から作りましょうか?」

「はい!」


無駄な心臓の鼓動が耳につく。

お嬢様は本当に可愛い。

ケーシーも同意見だろう。

最近ではお嬢様の表情の変化や声の抑揚の違いで感情が読み取れるようになってきている。

今は本当に嬉しそうだ。

一日のうちにお嬢様と過ごす時間がかなり増えた。

ケーシーもだが。

お嬢様は頭が良い。

何でもすぐに覚え、身につける。

しかも、マナーは完璧だったしなかなかに品のある立ち振舞いが身に付いている。


「お嬢様は貴族の生まれですか?」

「………違います。たぶん。」

「たぶん。」

「貴族って訳では無いですが、上流階級ではありました。」

「それなのに料理をしていたのですか?」

「………」


お嬢様の表情が明らかに曇った。


「家にも使用人は居ました。ですが、私にかかわる事を禁じられていたみたいで廊下ですれ違っても空気のような扱いでしたから自分で料理して洗濯をして………楽しかったので良いんですけどね!」

「………」

「料理は私の商品価値を上げる材料らしいです。」

「商品価値?」

「私のあの家での役割は政略結婚の駒でした。なので家事は全てこなせます。お爺様はよく自分で自分を守れないなら死ねば良いと言っていたので護身術もバッチリです。」


俺は言葉を失った。

お嬢様の笑顔が作れない理由は確実にその辺の事情があるにきまっている。

俺は思わずお嬢様の脇腹を思いっきりくすぐった。

お嬢様は驚いた顔の後素早い動きでそれをかわした。


「な、何するんですか?」

「貴女が笑わないのは良く解りました。くすぐったらどうなるのか気になってしまったのでつい………失礼しました。」

「………スキロフさんの馬鹿!」


俺はこの時思った。

もし、上流階級のやつらが誰もこの人を幸せにすることが出来ないのなら俺が奪ってでもこの人を幸せにしようと。


「貴女が早く笑えるように楽しいことをたくさんしましょうね。お嬢様。」

「………」


その時、お嬢様は少しだけ口角を上げて頷いた。

顔を上げた時にはもうもとに戻ってしまっていたが、お嬢様の今出きる精一杯の笑顔だと思う。

俺は執事として駄目だと解りながらも彼女に笑顔を返した。

俺の全てをこの人のために使おうと決めた、そんな決意の笑顔を。



スキロフはヤンデレじゃないよ!



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