笑顔
愛子はまだ出てきません!
「お父様、私も魔法を習いたいです。」
「………どうしてだい?」
「………護身用です。」
「………護身用なら仕方ないね。私が教えれば良いかな?」
私は、朝食を食べながらお父様にそう切り出した。
お父様は苦笑いを浮かべながら了承してくれた。
「シグレ、君に何かあったら僕が直ぐに助けに行くよ。」
「………覚えたいんです。駄目ですかお兄様?」
「駄目じゃないよ。基本からやらないとね。」
お兄様は過保護である。
「では、自分が基礎を教えて差し上げます。それで宜しいですか?旦那様にイディオン様?」
スキロフさんが私のティーカップに紅茶をそそぎながらそう言ってくれた。
「スキロフさんも魔法が使えるんですね。」
「たいした魔法は使えませんが火おこしぐらいなら出来ます。」
「では、宜しくお願いします。」
私は、スキロフさんに頭を下げた。
「そんな事しなくて結構です。アリアンロッド様のためでしたら自分は出来ることを精一杯するまでですから。」
スキロフさんはニコッと笑ってくれた。
「スキロフなら安心だね!それで良いよねイディオン!」
「僕が教えたいです父上。」
「イディオンは仕事が有るだろ?私もだが、むしろ私の方が時間が作れるし、スキロフに頼めば勉強の時間を少し削って魔法の勉強の時間に出来て自由時間を削らなくて良い。」
「アリアンロッド様は覚えが良いので勉強の時間を魔法の時間に変えても問題ないかと思われます。」
スキロフさんの言葉に嬉しくなった。
その日からスキロフさんとケーシーさんと魔法の勉強が始めた。
頭でっかちの私には小さな炎をだすのも大変だった。
笑わない私にスキロフさんもケーシーさんも沢山笑顔を見せてくれて、休憩時間も笑顔の練習と言って面白い話を沢山してくれた。
無理矢理笑顔を作らせようなんて二人はしなかった。
それが私には本当に安心できる事だった。
「アリアンロッド様!そうです!」
私がようやく小さな炎を出すことができたときスキロフさんは凄く喜んでくれた。
ちょうどケーシーさんがお茶の用意をしてくれている時で私とスキロフさんだけだった。
スキロフさんに本当に喜んでもらえて私も凄く嬉しかったし安心した。
スキロフさんの優しい笑顔に私は、笑顔を返した。
お父様に教えてもらった笑顔の作り方を練習していたからか自然に出来た気がした。
私の笑顔を見るとスキロフさんはびっくりした顔をして固まってしまった。
駄目だったのかと不安になるとスキロフさんはゆっくりと呟いた。
「……男と二人っきりの時にそんな顔したら駄目だ。」
「へ?」
いつもとは違うしゃべり方に少し驚いてしまった。
「………皆様アリアンロッド様の笑顔を見たがっています。自分だけが笑顔を見るなんて勿体ない。」
「………ごめんなさい。嬉しくて。」
「………少しだけ、自分の気持ちを言わせていただいてもよろしいでしょうか?」
スキロフさんは私の頭を優しく撫でると言った。
「やったな!本当はスッゲー嬉しい。」
スキロフさんはいつもの大人な雰囲気とは全く違う子供のような笑顔を作った。
スキロフさんの本当の笑顔を見れた気がして私ももう一度笑顔を作れた。
その時ケーシーさんがお茶の用意を終えて帰ってきた。
そして、私の笑顔を見て泣きながら私を抱き締めてくれた。
「殺人的に可愛んだからも~!」
ケーシーさんもしゃべり方が変わっていてなんだか嬉しくなって私もケーシーさんを抱き締め返していた。
「ケーシー、素が出てるぞ。」
「スキロフもじゃん!」
私は、二人と本当に仲良くなれた気がして嬉しかった。
「あ、あのお二人にお願いがあります。」
「「はい。」」
「お父様とお兄様が居ない時はそうやって喋ってくれませんか?」
「「………」」
「駄目ですか?」
二人は顔を見合わせると私に笑顔を向けた。
「仕方ねえな。」
「良いよ!天使ちゃん!」
「天使ちゃんですか?できれば時雨と呼んで下さい。」
「シグレちゃん?」
「はい。」
私は、少しだけ安心した。
「シグレ、お茶にしよう。旨いお茶淹れてやる。」
「あ、ありがとうございます。」
「スキロフ、あんた気抜きすぎ。」
「許可が出たんだ構わないだろ?」
「そうだけど~。」
ケーシーさんが口をとがらせてそう言うとスキロフさんはニヤッと笑ってお茶を淹れ始めた。
スキロフさんの出してくれたお茶は本当に美味しくて私は、小さな幸せに包まれた。
その日の夜。
お父様とお兄様に笑顔を向けようと頑張ったが緊張してしまって無理だった。
スキロフさんとケーシーさんには今日笑顔が作れた事は秘密にしてもらっていた。
いざ、二人の前で笑顔を作れなかったら二人を悲しませてしまうかも知れないと思ったからだ。
実際出来なかったから、お願いしておいて良かったと安心したのは言うまでもない。
時雨ちゃんの笑顔にスキロフさんは撃ち抜かれてましたね。
ケーシーさんも可愛い!
時雨ちゃんの味方が沢山いると良いな!




