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王子

普通の出会いです。

その日の私は、図書館に居た。

王族や貴族御用達の王城の中にある図書館だ。

簡単な読み物なら読めるようになっていた私は、ずっとここに来たかったのだ。

見渡すかぎりの本。

古い紙の匂い。

私は、うっとりしながら気になる本を手に取った。

暫くその本を眺めるも、なれない文字の数々にいささか疲れてきてしまった。

人目に付かない奥の席を選んでいた私は、ちょっとだけ仮眠をとる事にした。


「おい、大丈夫か?」


暫く寝ていると突然声をかけられた。


「大丈夫です。ちょっと寝ていただけなので。」

「こんなところで寝る奴がいるか!お前、仮にも女なんだろ?」


深くフードを被っている私には注意してくれている人の顔は見えないが、男の人の心配そうなオーラは伝わってきた。


「王城内で危険が及ぶような重要なポジションに居る訳ではないので大丈夫かと………」

「女なら部屋に連れ込めば良いと思ってる馬鹿な貴族だっている!気を付けろ!」

「………ご親切にありがとうございました。」


私は、丁寧に頭を下げてから本を片付けた。


「お前は何処の誰だ?」


本棚に本を返しているとそう背後から聞かれた。


「魔法局長の娘のアリアンロッドと申します。」

「魔法局長?」


男に腕を捕まれそうになった。

私は、それをヒラリとかわすと言った。


「心配していただいてありがとうございました。そろそろ失礼いたします。」


私は、お兄様に書いてもらった移動用の魔法陣の紙を開いた。

魔法陣の光に包まれるともれなく魔法局の中に転送された。

………所であの人は誰だったのだろう?






あれから暫くして私は、あの人の事は忘れてしまっていた。


「ポレマオさん、はい。騎士団の人にも分けてくださいね。」


私は、騎士団の練習場にマカッシュの小さい………まあ、マカロンを大量に作って持っていった。

見れば練習場の中心では梨元先輩と誰かが剣術の練習試合をしていた。


「ショウタロウとジャスティン王子だ。」

「彼女が沢山居るって言う王子様ですか?」

「そうだ!顔が良いからって近寄るなよ!」

「近寄りません面倒臭いので。」


私がポレマオさんとそんなことを話していると梨元先輩の声がした。


「時雨さ~ん!」


名前を呼ばれ私は、梨元先輩に小さく手を振った。

そして、王子が私に気がついた。


「あ!お前!図書館で寝てやがった無防備女。」


ああ、あの人は王子だったのか。

私は、丁寧に頭を下げた。

頭を上げるといつの間にか王子が目の前に居て私のフードをはらいのけた。


「………」


王子は私の顔を見ると驚いた顔をした。

そして、ゆっくりと私の頬に触れようとした。

私は、その手を掴むと後ろ向きに彼を担ぎ上げて落とした。


「綺麗な一本背負い。」


梨元先輩の声が聞こえた。


「手を出されたのでつい。駄目でしたか?」

「ここは訓練場だ!いかなる時も攻撃の警戒をしなければならない場所でもある!って説明しといてやる!その代わり今のやり方を教えろ!」

「一本背負いですか?良いですよ。」


私が淡々と喋ると後ろで受け身がちゃんととれずにゲホゲホとむせていた王子が言った。


「て、天使なのか?」

「違います。」

「天使だろ!」

「違います。ちなみにお父様から貴方には近寄らないと約束をしていますのでそろそろ失礼します。」


私は、また魔法陣の書いてある紙を取りだし開いた。


「お、お前!またそれか~!」


王子の叫び声が聞こえたがそれはもれなく無視させていただいたのは言うまでもない。


王子だと解らなければ普通に接してくれたのに………

王子普通に登場です。

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