41-宮殿-
記念すべき300話です。
中庭 常盤雅 VS 華壱匁
運動場部分とは違い、中庭は地面は芝生で構成されており、真ん中には楓の木が緑色の広い葉を風になびかせて立っていた。
樹齢が長いのだろうか、その姿はかなり尊大で、それこそ『立っている』と表現するに相応しい姿だった。
「さてと、準備体操でもしとこうかな」
華壱はそう言って体育でも受けるように、準備を始めた。
「楽しくいきましょうか」
「それは無理だなぁ」
華壱はそう言ってにやりと笑う。
「流石に命がかかっているからね」
「……ですね」
雅もそう同意した。
体育館 虎郷火水 VS 籠目加護女
「こうして対面するのは初めてか?」
「そうですね、前回は残念なことになっていましたから」
「お互いの能力を知っていることになるが……」
「正々堂々ということで頑張りましょう」
虎郷はそう言って、手を出す。
籠目さんは何も言わずにその手を取った。
運動場 海馬正 VS 楊瀬通
「こんな広い場所じゃ狼も本領発揮できそうもないな」
「いえいえ、広くても力だけはありますから」
「そうか? 狼は狩る動物だろうが」
「狩る動物は潜みつつ相手を狙う生き物と、誰が決めたんでしょうか?」
「……」
「……」
何もない黄土色の地面のグラウンドに、険悪な雰囲気だけが流れる。
「戦い方は自由だな」
「そうですね。自由にやりましょう」
相も変わらずお互いがお互いで腹の内を隠しながら2人はそう言ってニヒルに笑った。
校舎内 嘉島奏明 VS 乱一
昇降口に立って、相対する。
「……何でアンタなんですか?」
「シオさんの代わり……ですので」
「あの人は戦えないのか?磔にするってのはどうなんだよ」
「強制的にそうしたわけではありません。ちゃんと彼女本人にも聞きましたよ」
聞いたのか……!?
「『私にはその程度しか出来そうもない、すまない』と、彼女本人も了承しました。そして私に代理を頼みました」
「アンタら的に代理ってのはいいのか?しかもアンタ本人が」
「……それは確かに批判を受けてしまう点でもあるでしょう。しかし」
そう言って乱さんは鞘に収まった刀を守るように、柄に手をかけてから言った。
「あそこまで必死な人の心を踏みにじってまで……守りたいものは私にはありませんから」
「……そうかよ」
俺はそう言って少し怪訝そうな顔をしたと思う。
守りたいものがない。その発言は嘘だ。間違いなくこの女はあの刀を守ろうとしている。嘘を吐いてまで俺に媚を売る理由……一体なんだろうか?
屋上 王城隼人 VS 一条字玲王
「王は俺だ」
「僕だ」
2人でその会話だけをしている。
「……1ついいですか?」
隼人が話を変えた。
「何だ」
一条字先輩は目を閉じたままだ。
「どうして、シオさんが磔にされることに対して何も言わなかったんですか? 愛した人が危険にさらされるというのに」
「……まず、俺は貴様らに負けるつもりはない。俺のどの駒が敗れたとて、俺は貴様に負けるつもりがない」
「……」
「2つ目に」
と続けて、言った。
「俺はあいつを愛してなどいない」
と。
そう言ったのだ。
【開始です】
放送がそう聞こえたのを合図にそれぞれの闘いが始まった。
拙い文章で300話も書いてしまいました。
読んでくださっている方々がいることをとてもうれしく思います。
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