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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
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35-大掃除-


「……な……」

 固まることしかできなかった。

 視界が黒くなったという表現をしてしまったが、別に俺が気絶したとかそういうことではなく。

 眼前いっぱいを『黒』がつつんだのだ。

「何だよ……これ!」

「すまないな、居合はスピード重視なのだがこれだけは何ともならない」

 よくよく見ると、それは刀だった。

 持っている柄は一つしかないのに、鍔から上は幾つもの刀で構成されていた。

 そう。目の前の黒は、その幾つもの刀が構成した『影』だった。

 その刀身たちは途中で折れ曲がり、それこそ人の拳の様な形になっていた。


「行くぞ。正直これは手加減とかいう問題ではなく、お前を殺すだろう」

 言い終わった瞬間に、片足を上げて勢いをつけ、全体重をかけるようにそれを振り下ろしてきた。

「……!!」

 俺は避けることもできなかった。

 というかシンキング・キングが判断したのだ。

 避けても無駄だと。足掻いた方がまだいいと。

「だったら!!」

 俺は息を思い切り吸い込んだ。

 そして


「ぅああああああああああああああ!」

 叫んだ。

 その声で刀でできた拳が少し揺らいで、広がる。

 その瞬間に今度は、右足で2、3本の刀を蹴り上げて空間を作る。そしてその空間から飛び出して、シオさんの方へ。

「うおおおおお!」

 俺は叫びながら、右手でシオさんに殴りかかった。

 いや、殴りかかったというのには語弊があるかもしれない。

 俺はシオさんに手を伸ばして、そのまま倒れこんだのだ。流石に殴りかかるような余裕はなかった。

「死ぬかと思った!」

「殺すつもりだった……!」

 お互いに改めて敵対する。

「勝手に予測だったけど、アンタの力……つまりその刀は一本を軸として、それ以外は只の刀と変わらないと判断した。恐らくその鞘は刀を変形、増殖させたりする系統の力があるんだろう。だから何本でも刀を投げれる」

「……」

「さっきの拳も量は多くて、しかも鞘から出てきたが、一本以外はただの刀だと判断した。だから勢いでぶっ飛ばせると思った」

「なるほど……その一本が混じってなくてよかったな」

「それは、まぁ」

 運が良かったということなんだろうな、と思った。

「流石だ。卓見だな、奏明。それに免じて間違いを訂正してやろう」

「間違い……?」

「私の力の強いのはこの鞘に入った一本の刀だ。そしてこの鞘から普通の刀を増殖させることはできる。しかし、別にこの鞘から刀を出している訳ではない」

 そう言って、シオさんは鞘に収まった刀を前に突き出した状態で、制服の中に手を入れた。

 そして手を出したときには刀を持っていた。

「え……」

「この鞘は私だ。私に収まっている刀と、鞘に収まっている刀。私の体からなら、どこからでも刀は出るのだ」

 そう言ってシオさんは笑った。

「それよりそんな態勢でいいのか?」

「アンタの刀は避けれるし、アンタの攻撃は喰らわない」

「そうか」

 シオさんは突然足を突き出した。

 俺は右手で軽く受け止める。

「喰らわないって言ったはずだが?」

「忘れたのか?私の体からなら、どこからでも刀は出る、と言ったはずだが?」

 意趣返しのように言ったシオさん。


 そして、俺の右腕に激痛。

「いったあああああ!?」

 俺の右腕に刀が刺さっていた。

 それはシオさんのスカートから飛び出して、刺さっていた。

「どこからでも、と言っただろ?」

 油断大敵。

 ここから俺は圧され始める。

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