34-大掃除-
言ったが早いか刀が何本も目の前に飛んできた。
反応はできる。
が、油断はしない。
俺はその刀を半身で避けて、柄を握った。少し引っ張られるが、それでもキャッチする。
そしてその刀を乱雑に振ることで他の数本の刀を叩き落とす。
「上手い判断だ。では次はこうしようか」
そう言ってシオさんは間合いを詰めてくる。
今に始まったことではないが、この瞬間的に間合いを詰められるのはなぜだろうか。
俺は構える。
「【乱刀】嵐山」
そう言ってシオさんは両手を腰辺りに構えた。
次の瞬間、その両手から刀が出てくるのが見えた。
俺は瞬時に一歩分の間合いを取った。
両手の刀を躊躇なく振り捨てる。ギリギリの距離で避ける。
一度振って、その刀はそのままの勢いで投げ捨て――。
「って!」
俺が空けた一歩の間合いを瞬時に埋めてくる。
そして今度は腕を前で交差させて、両手を腰に据えている。
「く!」
俺は片足の跳躍で、後ろに下がる。
シオさんは刀を振り捨てる。
そして、さらに間合いを詰める。
「っと!っぃ!ったあああ!」
その繰り返しを4回くらい繰り返して、俺は廊下の端に追いやられた。
そして5回目。
俺は足を下げれるスペースを埋められた。
「終だ」
「あっちゃー……」
俺は呟いて、準備をする。
シオさんは刀を振った。
俺はその刀に左拳をぶつける。
ドゴォ!と。
刀が上に吹っ飛んだ。
「!?」
驚いているシオさんの懐にそのままの勢いで右拳を当てた。
流石に反応できずに、クリーンヒットしてシオさんは廊下に倒れた。
「それがもしあの鞘付きの刀だったら勝てなかったな……」
俺は冷や汗を拭う。
冷や汗であるところが、注目点だ。
まったく疲れていない。
これが冷静な判断での体力消費の抑え方か……。
「どうやったんだ?」
シオさんは体だけ起こして言った。
「説明しないに決まってるだろ」
「……それもそうだな」
と、シオさんは苦笑する。
実は正直、自分でも咄嗟のことだったのだ。
虎郷の近未来予知で先のことを理解し、瞬間的にスパイラルに切り替える。そして俺の左手に空気をため込んで、それをスパイラルで放つ。
簡易的な超強力空砲というわけだ。
「では、次の技と行こう」
「まだまだ余裕そうですねぇ……」
「大丈夫だ。すぐに勝敗は決してやる」
そう言って、シオさんはあの鞘付きの日本刀を出した。
「【居合】大挙」
次の瞬間。
俺の視界が黒くなった。