33-大掃除-
それから俺は必死だった。
とはいっても、先ほどの状況から何かが変わったわけではない。
必死だったのは脳内だ。
何故、どうして、何が、いつ、どこで。
そう言った混沌としたものが頭の中を渦巻き、思考を断絶しようとしてくる。
「何をしようとしているんだよ!」
俺はそう叫ぶしかなかった。
「悲しいことだが、君を殺そうとしている」
即答するシオさん。
考えても考えても分からない。
俺は隼人の『シンキング・キング』も使用可能だが、あれは隼人が持っている『知識』や『情報』があってこそ、思考することができるのだ。
つまり何が言いたいかというと、俺は脳での判断力は上がっているが推理や推測は俺にはできないのだ。
ともすれば、逆利用してやろう。
『シンキング・キング』は脳をコントロールする力ともいえる。
つまり、『考えることを遮断する』というコントロールもあるわけだ。
「やるってんなら、やるしかないよな」
俺は思考を遮断する。
今は戦闘にのみ集中する。
それに思考のエネルギーを回す。
「!」
目の前に刀が飛んできた。
この程度なら反応ができる。
俺は半身で避けて、そのまま走り出す。
シオさんの懐のもぐりこみ、そのまま蹴り上げる。
女性の体だ。強いといっても、俺の蹴りなら吹っ飛んでしまう。
「流石だな、奏明。適応力が素晴らしい」
そう言ってシオさんは、宙返りして着地する。
そして。
「それ以外は認めない」
間合いを詰めて、鞘に納めた刀に手をかけた。
今までとは違う。
今までは只の刀だった。刀身のみ。鞘などなかった。
そしてそう言う意味以外で――俺の右手が感知する限りにおいて、『ヤバい』という気配を感じた。
遅かった。
「居合【抜刀】」
刀を抜くという作業だった。
それでも俺は左手を突き出すことが限界だった。
「!?」
俺はその左手を押されるようにして吹き飛んだ。
と、同時に左手に激痛。
肉がえぐれて血が出ている。
左手で刀ごと変形しようという算段だったのだが――。
「その左手の力でも私の刀には触れられないだろう?」
「く……」
「見せよう。そして魅せられよ」
そう言ってもう一度鞘に刀をしまった。
「鉄刀徹美の演技に」