32-大掃除-
10人の集団に突っ込み、俺は左手で一番近かった筋肉質の男の腹部を殴った。
男は少し吹き飛んだが、上手く受け止めたようで、すぐに態勢を立て直してこちらをにらんできた。
「やっかいだな」
俺は皆とは違って能力的には攻撃向きではないのだ。だから本来は防御や調査の方を専門としているのだが……。
「奏明。1人でなんとかできるのか?」
「まぁ、シオさんの手を煩わすほどでは……」
「そうか。なら分裂だ。私はこちらの5人。奏明はそこにいる5人を頼む」
「え」
シオさんは俺が何も言う暇もなく、目の前にいた女性の腹部を刀の峰で殴って吹き飛ばす。
「殺さないといけねぇらしいんで」
気が付くと目の前に筋肉質の男がいた。
マジかよ。
反応したときには男は上から拳を振り落とそうとしていた。
「対応できないなら無理するしかねーよな!」
俺は左手を構えた。今度は『力』を込めて。
拳に左手をぶつける。
男の拳が押し負けるように男の後ろに吹っ飛ぶ。それに引っ張られるように体が遠くへ飛んで行ったのを視線にいれて、俺はその男を放置して振り返る。
やはりだった。
俺の頭上にレイピアを持った女がいた。
「くっそ!」
俺はそれをよけると、女のレイピアが廊下に突き刺さる。
俺はそのままレイピアを左足で蹴る。
刃が折れ、女は驚愕の表情を浮かべる。
今度は女を殴ろうと手を伸ばしかけて、しゃがむ。
パァン!という銃声。
銃弾は女にあたったようだ。
「く……!?」
「避けられちゃったかぁ」
少年が立っており、そのまま銃を構えてもう一発撃つ。
「こういう時こそ!」
俺は左手で壁を作る。
「知らないよ、そんなの」
少年は笑って二挺拳銃へとスタイルを変更する。
そしてそのまま乱射した。
「く……」
壁と言っても廊下の一部を盛り上がらせて作っただけのものだ。何度も同じところを攻撃されれば応対はできない。
「だったら!」
俺は左手を床につける。
久々の『遠隔操作』だ。
俺は床を通して、少年の下の廊下を飛び出させる。遊び心として『げんこつ』にしておいた。
「なッ!」
少年は顎を殴られて、気絶した。
「よし……」
「残念だったな」
と、先ほどの筋肉質の男が現れた。
「死ね!」
今度は小さく拳を構えてきた。
「てめぇは……うざってんだよぉ!」
俺はストレスを爆発させた。
その叫び声が男の体を吹き飛ばす。
「な……」
男は体をくの字に曲げて、そのまま倒れこんだ。
「ったく!」
俺は右足を構えた。後ろに立っていたレイピアの女を蹴る。
さらに『スパイラル』で回転力を出して、吹き飛ばす。
これで3人完了。
「『近未来予知』がなかったら危なかったな」
実は常にこれを使って次の手を選んでいたのだ。
「後2人……か」
俺は左手を壁につけて小さな飛礫を作る。
「シオさんの方に行ったのか?」
シオさんは渡り廊下を渡って奥の廊下に居る。
その渡り廊下に2人発見した。
アイツらを倒して何とかしよう。
俺は飛礫を投げる。
2人に衝突して、2人ともがこちらに気付く。
「ダッシュキック!」
俺は叫ぶ。ちなみに適当だ。そして何の力も使っていない。
走って蹴った。それだけだ。
それで1人を倒し、その瞬間に左に居たもう1人を左手で『力』を使って気絶させる。
そのまま先ほど倒した1人の顔面に肘鉄。
これで5人終了。
俺は渡り廊下を抜けて奥の廊下に行った。
すると。
赤だった。
「え……」
シオさんが刀を構えている。
その刀は赤く染まっている。
「な……何で」
「ああ、奏明。そこに居たのか」
「ここまでする必要は……なかったでしょう!?」
「何を言っている?」
そう言って不思議そうな表情を見せる。
「この校舎にいる全員を殺さないと出られないんだろ?」
そう言った。
「は……?」
「だから、済まないが君も殺すよ」
「何言ってんだよ……!?」
「行くぞ、奏明!」
そう言ってシオさんは走ってきた。
瞬く前に埋められた距離。
刀が俺の狙ってきた。
「く……」
俺は全身全霊で避けた。
どうなってるんだよ!
心の叫びを持って。
ここから本番。