28-鬼ごっこ 終了-
「前に言ったと思うけどアームスってのは、感情論に左右されているところがある。つまり突発的に怒るタイプだってことだね」
「それは聞いた。確か、感情が高ぶると姿が変わる……んだったな」
俺は音河と東先輩を見た。
俺たちが到着するとその場は既に落ち着いており、音河が早急に虎郷の治療を始めた。
それから東先輩と楊瀬さんは何か話している様子だったが、年齢が近いからだろう、なかなか意気投合している様子だったので聞いてみると、
「お互い苦労しているな……世話をする側同士」
「そうですね。そちらも大変そうで……」
と会話していたので、俺が入るとなんかこう、あれが……こう……だったので参加しなかった。
「つまり、アームスは感情によって力が変わるのさ」
「そうなのか?」
「姿が変わる、というのは感情が最高潮に達したということ。つまり、あの状態は全てのステータスがその人間の100%に達したということなのさ」
と、隼人は言ってニヤリ笑った。
全力なんてそう簡単に出せる者ではないが、それが100%達したということは――つまりそういうことだろう。
「おい、さっさと帰るぞ、お前ら」
東先輩がそう言った時には既に姿は元通りのスーツになっていた。
「アンタが何を考えているか知らないが、俺はどうともいわないぜ」
「ならばわざわざ話しかけるな、海馬正」
「言いたいだけのことは言いたい主義なのさ」
「面倒なものだ。昔の楊瀬にそっくりでむかつくぜ」
「その倍くらい俺もむかついたぜ」
2人は生徒会室で会話をしていた。
雅はその様子を遠目で見ていた。
「貴様の口ぶりからすると、俺の何かが気に入らなかったようだが」
「そうだよ。人を手駒のように使う態度が気に入らなかったのさ」
「……おかしなことを言うなぁ」
と言って一条字先輩は不敵に笑う。
「まるで貴様の王は手駒のように使わないという言い方だ」
「使ってないさ。あいつは」
「本当にそうか?」
一条字先輩は笑った。
「思い当たる節が一つもないのか?」
「無いね」
「例えば、お前たちの行動がアイツの予め考えていたことと全く同じだったことはないか?それはつまりアイツの手の上で動いていたということだぞ」
「……」
王城隼人が、王城グループの継承を行うとき。
俺たちの行動は先に書いた手紙によって読まれていた。
「例えば、お前たちは行動をするとき、ほとんどのことを王城に任せてはいないか?信用とは違う意味で、そいつの言った通りに行動はしていないか?」
信用だけではない。
確かにそうだ。
アイツの発言に……気圧されているところは当然ある。
「別にそれを惨めだとも思わない。いけないことだとも思わない。しかし、それで俺を責めるのはおかしいとは思わないか?」
「……なるほど。確かにそうだ。よし、謝ろう。申し訳ない」
「お前の謝罪には心がこもっていないな」
と話していると、
「ところで柴山刃は捕まったようだ。さてと、どうしたものだろう」
と、一人の男が目の前に現れた。
「このままでは選挙が思うように進んでしまう」
そう言った瞬間にはその場にいた3人を気絶させた。
「さてと……いったいどうしようかね」
男はそう言って笑った。