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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
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26-鬼ごっこ-

「何をしたんですか?」

 楊瀬さんは極めて冷静に言った。

「特別なことをしたわけじゃない。俺の力だと思ってもらえばいい」

 東先輩は言った。

 目の前の男たちは恐怖の表情を浮かべていたが、突如として表情を戻した。

 さながら百面相だなこいつら、と東先輩は思う。

「何だ……ただの能力者か」

「……相手が能力者なら余裕ってことか」

「俺たち3人の能力に勝てるわけがないからな!」

 そう言って男たちは構える。

 そしてその瞬間消えた。


「!?」

「気を付けて!東先輩!」

 虎郷が言ったが早いか、東先輩の体が遠くに吹っ飛ぶ。

「……」

 東先輩は静かに、ドラム缶の山に突っ込んだ。

「へへへ……」

 3人で拳を振りかざした姿でそこに居た。

「俺の能力は、『タイムズ・ミリタリー』。味方の人数分、力を倍にする能力だ」

 唐突に自分の力を報告し始めた。

 ついでに名前を付けることにしよう。

 金髪時間バカ。

「俺の能力は『マインド・オール』。その場にいる味方の息を合わせる力だ」

 脳天気バカ。いや、バカの人数は少ない方がいい。

 脳ブルースガイ。どうだろう、スカイとガイをかけてみたぞ。

「俺の能力は『キャパシティ・ブレイク』。10メートル内の範囲の視界を奪う」

 この中では一番強そうだ。

 よし称号として、つよしくん。にしよう。

 名前は決まった。


 東先輩は静かに立ち上がった。

「……痛ぇな、おい」

 そして静かにライダースーツを脱いだ。

 タンクトップ姿に黒のスラックスという、さながら仕事から帰ってきてシャツと上着を脱いだサラリーマンを思わせた。

「まだまだ行くぜ……」

 ブルースガイが言った。

 ふっとまた消え去る。

 東先輩は仁王立ちで構える。

「……ああ、そうか」

 つよしくんの10メートルの範囲は、時間バカの効果によって30メートルになる。だからここまで離れていても見えないのか、

 と考えて東先輩は逆方向に向かって投げ飛ばされた。

 三倍になるのは力だけでなく速さもそうなるのか。そして息ぴったりだからみんなでせーので投げれる。

 怖いなぁ、この力は。

 東先輩は思考をしながら今度はセメントの袋に突っ込む。粉塵が舞い上がり、東先輩の姿はその中に隠れた。


「楊瀬!助けろ!」

 籠目さんが言う。

「そんなこと言い出したら貴方の能力の方が強いでしょうに」

「見えない相手に『後ろの正面』を使ったってしょうがないだろ!」

「ああ、そうでしたね。虎郷様は?」

「私の『ファントム・ダーツ』もあんまり今回は期待できないわ」

「聴いただけではわかりませんね。お互い能力を隠したい気持ちはわかりますが、ここはお互い腹を割って戦った方がいいのでは?」

 虎郷はその言葉に黙り込む。

 今回は虎郷は戦った方がいいのだから。実際問題、今回は虎郷の能力は一番応対できそうだ。

「……私の後ろの正面は、相手の後ろを常にとることのできる能力だ」

 と、籠目んさんが先に言った。

「……私のは『未来予知』です」

「予知……!?」

 楊瀬さんが珍しく驚く。

「近未来も予知できます」

「ならうってつけじゃ……」

 籠目さんが言う。

「さっき車の中で暴れたせいか……ちょっと」

 そう言って虎郷は足を抑える。

「……折れたのか……!?」

「分からないですが、まあ響花がいるからそこは大丈夫です」

「……そうか」

 籠目さんは焦ったり落ち着いたり忙しい。

「楊瀬さん。助けてください」

 虎郷は楊瀬さんを見た。

「……申し訳ございません」

「何故だ?お前の力なら相手の姿を見えるようにできるだろ?」

「……本能です」

 と、楊瀬さんは下がった。

「狼の方の私の本能が、『関わるな』と」

「そんなに相手は強いって言うのか?そうは見えないが……」

 籠目さんはそう言って敵を見る。

「いえ、そちらではなく……あの、東様に……」

「東先輩?」

 虎郷は東先輩に視線を向けた。

「あれは……怖いですね。正直」

 楊瀬さんはそう言って汗を垂らした。



「……あぁ……」

 東先輩は静かに立ち上がった。

 そして粉塵の中から影が現れる。

「お前ら……舐めんなよ……」

 そして、その影は立ち止まると。


「ぶっ殺すぞぉぉぉぉォォォオオオオあああああああああああああ!!」


 叫んだかと思うと周りの粉塵が吹き飛び、東先輩は姿を現す。


 その姿は白い長ランに身を纏い、リーゼントという暴走族だった。


「……誰だ」

 籠目さんは冷静に突っ込んだ。



 鬼だった。


「さあて、鬼ごっこを開始しようか」


 そう言ってにらむ姿は鬼そのものだった。

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