22-閑話休題-
目を覚ますと、自分の部屋の天井が見えた。
「……」
確か学校に居たような……そう、俺はまたあの男と出会って、それから……。
……駄目だ。何を話したかも思い出せない。
ただ、二度会った、ということは三度目のチャンスもきっとある。
俺はベッドから起き上がって部屋を出た。
廊下に出ると、光がリビングから漏れていた。他にも光もないので、夜ということだろうか。しばらく眠ってしまっていたということになる。
俺はリビングの扉を開けた。
「やあ、おはようソウメイ君」
最初に気付いた隼人が俺を見て言った。
「帰ったら寝てるとか、疲れてたのか?」
海馬はそう言って笑った。
この言い方から考えて、俺を運んだのはここに居るメンバーの誰かではない。
……あの男か。
いったい何を考えている?
「どうかした、嘉島?」
音河が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「いや大丈夫だよ、ありがとう」
俺はそう言って、ソファに座った。
「あー、腹減った」
「もう皆は食べちゃったわよ」
「じゃ適当に作ってくれよ」
「……」
虎郷は黙って吉院の不緒へと向かった。うん、こうやってやってくれると亭主関白のような感じはして悪くな――。
ドゴォッ!
と。
後頭部に激痛。
そして俺に激痛を与えたそれは、
「残り物」
と虎郷に言われて机の上に置かれた。
「虎郷……次からは普通に机に頼む。切実に」
「精進するわ」
そう言って虎郷はまたキッチンへ向かった。
その後しばらくして机の上にある程度の料理(と言っても残り物を温めただけだが)が揃ったので、少し遅めの夕食を始めた。
海馬は風呂に入り、音河は楽器の手入れ、虎郷は食器の片づけをしている。隼人はソファでニュース番組を見ており、雅はその横で隼人の横の席で丸まっていた。ふて寝、といった感じだった。
各々が各々の好きなことをしていた。
まあこういう休憩時間もいいものだ。
「そういや」
突然思い出したので、俺は隼人に向けて言った。
「王城に用って?」
「ああ、大したことじゃないよ。一応親だから、現状報告さ」
そう言って隼人は、俺を見て雅の頭をなでる。
「君らもたまには親に連絡した方がいいよ」
俺たち二人だけに言っているようだ。
そりゃそうだ。
残りのメンバー――海馬は親とは疎遠。音河と虎郷は両親ともになくなっている。
そう言った意味でも俺たちは救われているのかもしれなかった。
……現状報告ね。
「そうだな」
『お前の仲間は、学校だけか?』
唐突に男の言葉を思い出した。
アイツが言いたかったのはそう言うことなのか……?
家族を大切にしろって?
……あー。
「駄目だ、頭痛い」
俺はそう言って自室に向かう。
「会計戦は来週だ。それまでに万全にしておきなよ」
隼人のそう言う声が聞こえた。
そして、一週間後。
虎郷が居なくなった。