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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
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22-閑話休題-


 目を覚ますと、自分の部屋の天井が見えた。

「……」

 確か学校に居たような……そう、俺はまたあの男と出会って、それから……。

 ……駄目だ。何を話したかも思い出せない。

 ただ、二度会った、ということは三度目のチャンスもきっとある。

 俺はベッドから起き上がって部屋を出た。

 廊下に出ると、光がリビングから漏れていた。他にも光もないので、夜ということだろうか。しばらく眠ってしまっていたということになる。

 俺はリビングの扉を開けた。

「やあ、おはようソウメイ君」

 最初に気付いた隼人が俺を見て言った。

「帰ったら寝てるとか、疲れてたのか?」

 海馬はそう言って笑った。

 この言い方から考えて、俺を運んだのはここに居るメンバーの誰かではない。

 ……あの男か。

 いったい何を考えている?

「どうかした、嘉島?」

 音河が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

「いや大丈夫だよ、ありがとう」

 俺はそう言って、ソファに座った。

「あー、腹減った」

「もう皆は食べちゃったわよ」

「じゃ適当に作ってくれよ」

「……」

 虎郷は黙って吉院の不緒へと向かった。うん、こうやってやってくれると亭主関白のような感じはして悪くな――。

 ドゴォッ!

 と。

 後頭部に激痛。

 そして俺に激痛を与えたそれは、

「残り物」

 と虎郷に言われて机の上に置かれた。

「虎郷……次からは普通に机に頼む。切実に」

「精進するわ」

 そう言って虎郷はまたキッチンへ向かった。


 その後しばらくして机の上にある程度の料理(と言っても残り物を温めただけだが)が揃ったので、少し遅めの夕食を始めた。

 海馬は風呂に入り、音河は楽器の手入れ、虎郷は食器の片づけをしている。隼人はソファでニュース番組を見ており、雅はその横で隼人の横の席で丸まっていた。ふて寝、といった感じだった。

 各々が各々の好きなことをしていた。

 まあこういう休憩時間もいいものだ。


「そういや」

 突然思い出したので、俺は隼人に向けて言った。

「王城に用って?」

「ああ、大したことじゃないよ。一応親だから、現状報告さ」

 そう言って隼人は、俺を見て雅の頭をなでる。

「君らもたまには親に連絡した方がいいよ」

 俺たち二人だけに言っているようだ。

 そりゃそうだ。

 残りのメンバー――海馬は親とは疎遠。音河と虎郷は両親ともになくなっている。

 そう言った意味でも俺たちは救われているのかもしれなかった。

 ……現状報告ね。

「そうだな」


 『お前の仲間は、学校だけか?』


 唐突に男の言葉を思い出した。

 アイツが言いたかったのはそう言うことなのか……?

 家族を大切にしろって?

 ……あー。

「駄目だ、頭痛い」

 俺はそう言って自室に向かう。

「会計戦は来週だ。それまでに万全にしておきなよ」

 隼人のそう言う声が聞こえた。



 そして、一週間後。



 虎郷が居なくなった。



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