21-箱入れ 終了-
勝負が終わった後、項垂れる雅に海馬は言った。
「大丈夫だ、心配するな」
海馬は笑う。
「……はい」
雅は小声で言って、大きな海馬の体躯に隠れるようにして抱きついた。
もしも海馬と雅が反対の状態、つまり最初の状態だったとすれば勝敗はどうなっていたか。
残酷なことに、恐らくどちらにしても雅は負けていただろう。
雅は負けていた。
今回の勝負では雅は誰の相手にもならないのだ。
まだ残り3回勝負があるというのにも拘わらず俺はそう感じた。
雅はまだ未熟なのかもしれなかった。
俺が言っていいセリフではないだろうが。
「さっさと帰ろう。俺たちは先に帰る」
そう言って海馬は雅を連れて歩いて行った。
「次は私と貴様だ」
籠目さんがそう言って虎郷の目の前に現れた。
「……そうですね。よろしくお願いします」
虎郷はそう言って籠目さんを静かに見つめた。
「私を倒せば、次は日下だ」
籠目さんが言う。
「え……」
「私は日下の影だ。そして二番手だ。だから私を倒したとき、貴様は日下と対等になれるであろう。貴様の目的はそこだろう?」
「……」
「楽しみにしている」
籠目さんはそう言って笑った。
そして静かに歩いて行った。
気づくと楊瀬さんは居なくなっており、華壱と一条字先輩、シオさんも既に歩いて行こうとしていた。
残ったのは俺たちだけになった。
「僕は王城の方に用があるから、東先輩に頼んで連れて行ってもらうから、先に行くね」
そう言って隼人は歩いて行った。
「帰るわよ、嘉島君」
虎郷が言う。
「ああ、先行っててくれ」
「そう。では行きましょう、響花」
「うん」
二人は先に歩いていく。
俺は昇降口の方へ行き、それから校舎の壁にもたれかかった。
「居るだろ?」
「ほお、わかるようになってきたか」
俺の問いを待っていたかのように、男は答えた。
「なんとなく今日もいるような気がしていた」
「そうか。ってことはこの間俺と会ったのを思い出したのか」
「……まあな」
「つくづく面白い男だよ」
男は笑った……と思う。
「……お前、何を知っている」
「全て、と言えばそれっぽいだろう?」
「答えろ」
「そうだな。なら1つ答えよう」
そう言って男は俺の横に立った。
瞬間移動である。
「柴山刃という男がこの学校にいる。そいつとその仲間数人が、今回の選挙を妨害しようとしている」
「……それは事実か?」
「ああ、事実だ。そしてお前らはどうあがこうとそれを止めることはできないだろう」
「……」
「そして妨害されてからお前らの行動……それによって選挙結果が左右される。だから忠告だ」
そう言って俺の肩に手を置いた。
「お前の仲間は、学校だけか?」
「……何を――」
「ちゃんと忘れずに覚えておけ」
そう言って男が手を放すと、
俺はまた気を失った。
次話『閑話休題』
たまには休もうぜ、なぁ?