20-箱入れ-
『続いての箱はあちらです。校舎の方をご覧ください』
放送は言った。
……。
…………。
………………。
「は?」
何も起きなかった。
『今回の箱はあなた方から見た校舎の裏側にあります』
「な……!?」
『映像も見せません。場所もお教えしません。但し、1つの球につき距離感をお教えします』
「……」
つまり、1つボールを投げれば、落下地点との距離を教えてくれるというわけか。
『また、方法として発射台を用意しました。ご自由にお使いください』
という放送とともに、地面からバズーカの様なものが出てきた。
『では、開始です。サドンデスルールです。先に居れた方の勝利ですので、先攻後攻はありません』
放送はそこでブツリと途絶えた。
ボールが飛び出す。
「じゃあ、さっさとやるか」
華壱は言って、サッカーボールをバズーカの中に入れた。
そして速攻で放つ。
屋上を飛び越して校舎の裏に。
『目標の箱まで、10メートルです』
「ちぇ……もう少し遠くかぁ」
華壱は言う。
次の瞬間には、素早く新たな球を入れて発射した。
ほぼ同様の、それでも遠くへとボールが飛んでいく。
『目標の箱まで、7メートルです』
「さっきより伸びたな。着実に場所には近づいている……」
華壱は言って、またボールを用意しようとしている。
「雅!急げ!」
「分かってますよ」
雅は言って、すぐに一回転してサッカーボールを投げた。
遠心力+スパイラルで、勢いだけは良い。
そして距離としても申し分ない。
が、方向が少しくるっている。吉と出るか凶と出るか……。
ボールはまた校舎裏へと消えていった。
『目標の箱まで5メートルです』
「近寄った……!!」
が、これがあまりいいこととは言えない。
なぜなら華壱にヒントを与えてしまったわけだから――。
「今、華壱にヒントを与えたとか思ったか?」
「……え?」
一条字先輩が言う。
「甘いな、嘉島奏明」
「どういう――」
「王城隼人、貴様ならわかっているのではないか?」
「……」
隼人は黙って俺の方を見た。
「相手は測定器。合計3つの距離情報があればある程度の位置予測はつく。それに風の流れとかをうまく感じることが出来れば、どこに何があるかとかもわかるんだろう」
「ってことは――」
「あと一発撃てば、恐らく華壱君は入れてくる」
そう言って隼人は唇をかみしめた。
「……雅なら何とかしてくれる」
俺はそう呟いた。
それは悲痛の叫びや期待にも似ていたと思う。
「……」
雅は固まって動かなかった。
雅の脳の回転ならば、隼人と同じことに気付いたのだろう。
「俺の勝ちだぜ」
華壱は笑った。
次の瞬間、華壱が放ったボールは、箱に入った。
勝敗は決した。
『勝者は、華壱 匁 です』
放送は言い放った。
劇的ってこういうことだろ?