19-箱入れ-
激戦や接戦という言葉がしっくりくるような気がした。
最後の箱。
残す勝負はそれによって決められることとなった。
同点になれば、恐らく引き分けではなくサドンデス。
つまり、雅が入れさえすれば勝ち。
『ご覧ください』
と、放送が言った。
瞬間だった。
何かが飛ぶ様に過ぎていく。
「!?」
それが2人の周りをくるくると回る。
「これは……箱?」
どうも今回の箱は超高速で動き続けるようだ。
「……」
不規則に。
眼にもとまらぬ速さで、
その箱は動き続けていた。
『今回は先攻後攻は関係なく、先に入れた方を勝者とします。弾数は一人10個までです』
放送が言う。
『準備ができ次第、報告お願いします』
と、続けた。
この勝負。
初めて雅に有利な勝負運びとなった。
なぜなら、今回は測定によって何とかなる問題では無い。
ともすれば動体視力とタイミング。
それなら華壱より雅の動体視力の方が勝るだろうし、タイミングに関しては持ち合わせたダンスの力で大丈夫のはず。
ならば、この勝負もらった――。
「早く始めましょう」
雅が言う。
「そうだな」
華壱も言った。
『では、開始してください』
言った瞬間にボールが飛び出す。
雅は野球ボール。
華壱はバスケットボール。
お互いボールを手に取り――。
『終了です』
放送が言った声に驚く。
いや、放送の声に驚いたわけではない。
正確には、もうすでに驚くべき事態にはなっていたのだ。
ボールを受け取った瞬間、華壱は躊躇なくボールをすぐさま投げたのだ。
そしてそのボールは見事箱の中に入った。
「な……!?」
どういうことか、判断に迷う。
いったい、どうやって……。
「測定器だ」
隼人が言った。
「どういうことだ?」
「測定っていう言い方をしているけど、要は『計算機』だ」
「計算機……」
「つまり、あの無秩序に動いているように見える箱に法則性を見つけた、そういうことだろう」
隼人は言って、正面を見る。
「悪いね、雅」
「いえ、流石です」
「さて……サドンデスの始まりだ」
そうは言ったものの、このサドンデスが始まりそうな雰囲気の中、次の箱で勝敗は決まるのだった。
それはあまりにも無理難題で越えられないような箱だった。