17-箱入れ-
すげえ。
感嘆の声しかなかった。
この方法でやるには、色々な事象を踏まえる必要がある。
最初に蹴るボールはそこから一番遠い位置に、最後にけるボールはそこから一番近い位置に。
また、それをできるだけ最短時間でできるような蹴り方と距離の関係を理解し、些細な力の変動、蹴りを入れる角度など、細かいことが関わってくる。
それを緻密な計算と大雑把な経験則でやる。
体が覚えていることで為しえる最強の業。
感激するほどのものだった。
『8pt獲得です』
放送の声で引き戻されるように意識が帰ってきた。
「どうよ、雅」
と、にやりと不敵な笑みを見せる華壱。
「……」
「お前にもできるのか?」
「出来るかどうかは関係ありませんよ。やるんです。後は可能性に懸けます」
「……へえ。力量を測定するのも大事だって俺は思うぜ」
「……貴方の意見も関係ありませんよ」
そう言って雅は快活に笑って見せた。
「やっぱお前良いな!」
華壱も言ってから笑った。
あの二人似ている……。
何がって言われるとわからないけど……そうそれは、この間の海馬と楊瀬さんのように。
直感的に、根本的に、客観的に、そしてそれら多方面からの視線が示す酷似。
まったく掴めはしないが、まるでお互いを高めるように強まっている。
同類項を足し合わせれば、その係数が増える、数学のように。
『では、後攻のターンです』
そう言って、ボールが飛び出す。
今回は全てがテニスボールだった。
「蹴りにくいかわりに一気に投げやすいな。案外ラッキーかもしれない」
俺は言った。
「……どうだろう。一気に投げる手法は彼女に限ってはできないと思うぜ」
隼人は横槍を入れてくる。
「どういうことだ?」
「彼女の能力は回転。一気に物体を投げて回転させてしまうと、それらが乱れてしまうから真っ直ぐは飛んでくれない」
「あ……」
そうか。なんなら先ほど同様蹴るだけの方がよかったはずだ。
突風などの自然状況は関係なく蹴り飛ばす。
回転さえかければ威力だけを気にしてければいいのだから案外普通は楽だったのかも知れない。
「雅はどうするつもりだ……」
「アイツには時代を塗り替える力がある」
と。
突然海馬が言った。
「え……?」
「ターニング・ポイントは革命の力があるのは、当然だろう?王城」
「……そうだね。今までとは違う観点から行動する、それがターニング・ポイントだ」
「だ。忘れてないか?アイツの最終奥義を」
海馬は言った。
最終奥義?
正直俺たちも驚いた。
その力は想像を絶するほど強大で、以前見た時よりも激しかったのだ。
雅は呟いた。
「……一世風靡」