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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
274/324

15-箱入れ-

 

 何が起きたのかを説明する必要がありそうだ。

 というか俺にも何が起きたのかがまったく分かっていなかった。

「……」

 しかしこの件に関しては『シンキング・キング』こと王城隼人の能力では何の効果も発動しない。なぜならその能力の斜め上を逆走するような発想を持つのが雅なのだ。

 ターニング・ポイント。

 奇想天外予想外。


「ふむ……」

 そう呟いた楊瀬さんは、唐突に消えた。

 どうもプールの方の様子を見に行ったようだ。

「いつでもすぐに消えれるという能力はすさまじいな」

 海馬はそう言って苦笑いを浮かべる。

 あの能力と正面衝突した男であるが故の感想かもしれない。


『聞こえますか?』

 突然俺たちのもとに声が聞こえた。

「何だ!?」

『私です。楊瀬ですよ』

「え、なに、これ……!?」

『私はテレパシーも使えるんですよ』


 嘘つけ。


 全員の意見が一致したが、言ってしまうと面倒なことになるので黙っておくことにした。

 嘘を吐くことが彼の力だから。


『確かに、雅さんの鉄球は箱の中にあります』

「バカな!アレはシャワー室の中に入っていったぞ!?プールの中の水に入るわけがない!」

 籠目さんが叫んだ。

『それができるようです。なるほど、これは盲点でしたね』

 楊瀬さんは続ける。

『放送の発言と映像を思い出していきましょう。まず、放送によれば今回の箱はプールです。但し、水中の中の箱に入れること、と』

 楊瀬さんはそこで一度発言を止めた。

『映像に移っていたのはこのプール全体。つまり、シャワー室も含むプールです。そして、』

 と、発言が止まったとほぼ同時に、メールが届く。

『今、先ほどのメールに全員送信で送り返す方式で、シャワー室の映像を送りました。自らの目でご確認ください』

 そう言って楊瀬さんはテレパシーを切ってから、

「ふぅ……」

 と、こちらに現れた。

 俺たちはメールに添付された動画を確認する(どうでもいいが、メールの料金が大変なことになっていそうだ。本当にどうでもいいが)。

 映像に写っていたシャワー室。


 天井を這っている水道管のパイプが幾ヶ所も破損して水が流れている。

 そしてシャワー室内に溜まっており、その水中に鉄球が落ちていた。


「……そういうことか」

 隼人は呟いた。

 楊瀬さんは頷く。

 もうすでに海馬と虎郷、一条字先輩は黙って目を瞑って笑っていた。一条字先輩は、敵ながら天晴だ、

という感じなのだろう。

「で、隼人。どういうことだ?」

「いや、どういうことだも何もこれは言葉のあやだよ」

 隼人は笑う。

「箱は『プール』とする。そして鉄球を入れるのは『プールの水の中』だ」

「ああ、そうだったな」

「そして箱は映像に移った『プール全体』とする。それじゃあこういうことさ。A=B、A=C、のとき、B=Cだ」

「つまり、箱=プール、箱=プール全体だからプール=プール全体ってことか」

 俺が言うと、そういうことだ、と言わんばかりの表情を俺に向けた。


「……で?」

「うん?」

「それで何なんだよ」

「……まさかわからないとは……」

 と隼人は呆れたどころか、同情の表情を見せる。

「いいかい?つまり置き換えさ。『プールの水の中』は『プール全体の水の中』だ」

「ああ!」

 そうか。

 つまり、プール全体の水の中……。

 シャワー室に水が溜まれば、それがプール全体の水……!


「んなの屁理屈じゃん!」

 華壱が叫んだ。

「でもアナウンスが決定したことだ。さらに言ってしまえば、矛盾はない」

「……ちぇっ!」

 と少年のらしく吐き捨てて、華壱は校舎を見た。

「さっさと次やろうぜ!」

『かしこまりました。では次の箱です』

 と言った瞬間。

 校舎の窓がいくつか開いた。

 数えると8つの窓が開いていた。


『これらの箱に、秒差1秒間隔以内でボールを入れてください』

 

 俺=男

 男=レオナルドダヴィンチ

 より、


 俺=レオナルドダヴィンチ !


 やべえ、天才だ!

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