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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
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14-箱入れ-

『次の箱に移ります。後方の屋外プールをご覧ください』

 放送に従い、俺たちは後方の屋外プールを見た。二人からの距離は大体1キロと500メーターってところだろうか。そしてプールは高いフェンスに囲まれている。

『今回の箱はプールとします。但し――』

 と放送が釘を刺すように言うと、全員の携帯電話が鳴った。

『メールに動画を添付しております。そこの映像に移っているプールの水の中にボールを入れてください』

 俺たちはメールの動画に目を向けた。

「これは……」

 映像に移っていたプールそのもの。そしてその水中の中に一つの鉄の箱が置かれていた。

「ただのボールじゃあれは入らないだろうな」

 華壱は呟いた。

 それはそうだろう。だって、重さ的に考えても、例え力押しで籠の中に入ったとしても浮いてしまう。それではクリアーとは認められないはずだ。

 すると、それを見越していたかのように

『今回は普通のボールと鉄球の2種類をご用意しています』

 と放送が聞こえた。

「じゃ、オイラ鉄球ね」

 と華壱は笑う。

 するとすぐに鉄球が飛び出してくる。砲丸投げのそれと同じだった。

「んー。どうしたもんかねー……」

 華壱はそう言って構える。



「どうやってくると思う?」

 俺は隼人に尋ねた。

「さあ……どうだろう。測定でどうにかなる問題でもないだろうけど……相手が相手だし……」

「無理だろうな」

 と。

 即答したのは一条字先輩だった。

「……え?」

「無理だ。間違いなく」

 こ……こうもあっさり……。

「あっさりと言われても仕方がないだろう。だが、奴には無理だ。あいつはただの人間だぞ。普通にやったって無理だ」

「でも……信じないんですか?」

 音河が静かに尋ねる。

「信じてるさ。俺は俺自身を。過大評価も過小評価もしていない、俺の考えを、な」

 そう言って一条字先輩はすぐに視線を戻した。

 これが一条字玲王。

 自らの身を信じ、友や信じる者は持たない。絶対的な力しか信じていない。

 王。

 傲慢で豪傑で殊勝な王。




「せーのっ!」

 華壱はそう言って思い切り鉄球を投げる。

 しかし、そこまでの距離飛ぶはずもなく――とはいっても、明らかに日本人の砲丸投げ以上の距離は出ており、大体1キロ近くは飛んだが――落下した。

「あっちゃー無理か……」

 華壱はそう言って残念そうに肩を落とした。

『交代です。ボールか鉄球をお選びください』

「……」

 この場合はボールを選ぶのが正しい判断と言える。

 男の華壱が鉄球を投げて届かなかった距離を雅がいくら回転をかけたところで届くはずもない。それに回転をかければ必ずしも強くなるわけではないのだ。重いものであれば重いものであるほど、負担もかかる。

 この場合は、体に負担をかけずに終わらせるのが吉。

 と、まあ。

 俺の横にいる金髪眼鏡からの受け売りだが。

「……」

 雅は熱心に動画を見ている。

 もしかしたら、何らかの策があるのかもしれなかった。



「どうだ?なんか思いつくか、隼人」

「ない。ボールではどう考えても浮いてしまうだろう。しかし、相手はあのミヤビ君だ。僕の考え方なんてどこ吹く風だろうね」 

 隼人はそう言った。

 これが、隼人のスタイル。

 完全放置とも言えるほどの徹底した信用。

 できると思い込み、それを前提の行動をしがちで後から後悔する。

 ……まあ、全員その期待には応えてきたが。


「……よし」

 雅は携帯を閉じて言った。

「鉄球でお願いします」

 そう言って雅も飛び出した鉄球をつかむ。

「行きます」

 雅は呟いて

「え……!?」

 回った。


 雅が。

 その場でハンマー投げのように回転したのだ。

「これならいける……!」

 そうか。これなら勢いを増して突きっ切ることが可能だ。


「いや、ダメだ……」

 隼人が言った。

「え……!?」

「恐らくミヤビ君はフェンスごと越えようとしているんだろう。でも、多分それは無理。だって彼女は女性だから。彼女の力考えてもそれは難しい。遠心力を加えたところでね」

「いや、もしかしたらフェンスを突き破って」

「それも無理だ。距離的に力は弱くなってしまうだろう。フェンスだって甘く見ちゃいけない。彼女の判断ミスだ」

「……」

「けど、何かあるかもしれない」

 と、隼人はそれでも信じようとしていた。


「行きます!」

 雅はもう一度そう言った。

 そして投げた。


 ターニング・ポイントとさらに進化のスパイラルがあるので、普通の遠心力の倍以上の力がかかっている。

「え……!?」

 予想外だった。

 鉄球はフェンスではない場所に飛んで行っていた。

「あの方向は……?」

「シャワー室……のようですが」

 楊瀬さんが言う。

 シャワー室……いったい何を……。


 鉄球はシャワー室の上部を破壊してから落下した。

「……何がしたかったんか分からないけど……狙いでもそれたか?」

 華壱が心配そうに聞いた。

 肩を心配しているのかもしれないかった。

「……」

 雅はプールを見ていた。



「何をしようとしたんだ……!?」

 俺はそう言って隼人に聞く。

「……分からない。いったい何を――」

『後攻、1ポイント獲得です』


 放送は隼人の思考を遮って、信じられないセリフを言った。


 物理分からないからな……こんなことできるかわからないけど……。


 まあ、超次元的な能力ですから(・・;)


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