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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
271/324

12-箱入れ 開始-

 書記戦。

 3日後。

 すなわち、4月21日。


「何なんだよ、けがは治ってないんだけど」

 と海馬は頭に包帯を巻いたままの格好で学校にやってきた。

「仕方ないだろ、全員出席がルールだ。だから楊瀬さんも来てるじゃないか」

 俺はそう言って楊瀬さんを指さした。

「どうも」

 ピンピンしていた。

「まあそれなりに鍛えていますので、そこまで怪我も深くはなかったのですよ」

 と楊瀬さんは笑った。

「じゃあ、今回の試合のルールだ」

「試合?ゲームじゃないのかしら?」

 と虎郷が突っ込む。

「……ああ。ゲームではなく、試合と書いてある。前回とは違うということなのかもしれんな」

 一条字先輩はそう言ってから俺たちにプリントを渡す。


 試合 『箱入れ』

 ルール説明:校庭の中心から11か所に設置された箱にボールを投擲し、中に入れる。交代制で一度ずつチャレンジを与えるものとする。校庭にある円の中に入り、その中からのみ投擲することを許す。但し、先攻が入れた後も後攻にはチャンスが与えられる。入ったときは両者に1ポイントずつ入る。最終的にポイントの高かった者を勝者とする。


「……これだけなの?」

 音河は思わずタメ口をきいてしまった。

「そうだ。単純明快なルールの様だぞ」

「んじゃ、さっさと始めようぜ」

 華壱は言って校庭に向かって歩く。

「では、行ってきます」

 雅もそう言って歩く。


 俺たちは今回は傍で見ることができるようだ。

 校庭には円が2つ並んで描かれており、そこの中央に2人は立つ。

 キーンコーンカーンコーン……と、チャイムの音がした。


「……じゃあ始め!ってことで、いいよな?」

 華壱が雅に言う。

「ええ。先攻後攻はどうしますか?」

「んー、じゃ、先攻もらっていいか?」

「どうぞ。私は後攻で」

 そう言って雅は手で華壱に行動を促した。


「じゃあお言葉に甘えて」

 そう言って華壱は、周囲を見渡す。


『開始します。まず、時計をご覧ください』

 と放送がした。

 すると、校舎の時計が開き四角い空間が現れた。

「……あそこに居れるってことだな」

 と華壱が確認すると、待っていたかのように、円の中の地面からボールが飛び出す。

 ボールはサッカーのボールだった。

「んー。じゃ蹴った方がよさそうだな」

 と華壱は言って、右足を構える。

 それから時計台を見た。


「……は……で………だ………で……の……が……だから……」

 華壱は一人でぶつぶつと呟いている。

「彼は何をしているんですか?」

 俺は隣に居たシオさんに聞いた。

「ああ。計算?っていうか、測定?ていうか……んー、まぁ見てればわかる」

 とシオさんはあいまいな答えを返してきた。

 測定?計算?

 いったい何のことを言っているのだろうか……。


「じゃ、行くぜー!」

 華壱は言った。


 そして転がっているボールを右足で蹴り飛ばす。

 ボールは少し左に反れながら時計台の方へと向かう。

「入らない……」

 隼人は言った。

 が。

 左から強い強風が吹き荒れる。

 ボールは風に流されて、吸い込まれるように箱の中に入っていった。


「な……!?」

 唖然だった。

 普通じゃない。あんなやり方は。


「どうだ?あれが、あんなガサツな奴が書記をできる理由だ」

 そう言って一条字さんは不敵な笑みを浮かべた。

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