10-宝探し-
楊瀬さんと海馬は保健室へ。
俺たちもそこに集まっていた。
「俺がやったのは……『ビジョン』だ」
海馬はボロボロの体でそう言った。
スロットによる『ケースバイケース』という力は時と場合によって能力が変わる、ようだ。
そしてそれは海馬の対抗策につながるものである、らしい。
しかし、回復などという魔法のような武力はなく、代わりに相手の目の前に海馬の姿と音声を流した、ということだ、そうだ。
『ようだ』『らしい』『そうだ』などという言葉遣いになってしまうのは、この力は新能力で、誰もその力を知らないからだ。しかも当の本人の海馬でさえ、先ほど手に入れたばかりのこの能力の扱い方はわかっていないらしい。
分かっていることだけをまとめておくとするなら、まず、この銃は左右に50ずつ、計100のスイッチがある。つまり100種類の武器があるようだ。そして、そのスイッチと武器の連動性はしばらくすれば変わる。きまぐれ、と海馬は表現していた。
実際に実験したわけではないから詳しいところはわからないが、そのビジョンというのも、備わっていう武器であろう、というのが海馬の考えだ(もしかしたら武器自体は100を超えているのかもしれないとも言っていた)。
他に分かっているのは、この銃は『アクター』であるということだ。
「響花の力を知っているだろう?武器……ウェポンだ」
「それは知ってるけど……」
「響花のはその中でもアーム……つまりあのギターそのものが『アクター』だったわけだけれど、進化してその力が体に移ったと考えられる。『声』という武器としてね」
と、隼人は海馬に説明するというよりもこの場にいる全員に説明しているようだった。
「そして東先輩もウェポンだ。しかし彼の場合は『サイボーグ』だ」
「ああ。その話か。あれだろ?あれは海馬先輩そのものが『乗り物』としての機能を果たしている……だったか?」
「そう。で、それを踏まえた上で見てみると……」
と、隼人は言って海馬を見た。
「君のは、恐らくアームだろう。サイボーグではないからね」
「……」
「ちょっと興味深いから、今度実験させてくれたまえよ」
隼人はそう言ってから僕の話は終わり、といった。
「……では勝敗を決めようか?」
一条字先輩が言った。
「楊瀬は青色の水晶玉の入ったUSB。そして海馬は紫色の水晶。よって一個ずつの保持ということでいいな?」
「……ええ。そう言うことになります」
楊瀬さんはボロボロの体でそう言った。
海馬は眠り込んでしまっていた。あるいは気絶したのかもしれないが。
「なら、勝負は引き分け――」
「お待ちください」
と。
声がした。
保健室の扉が開いていて、そこには一人の女生徒の姿があった。
「……誰かしら」
虎郷が静かに臨戦態勢を整える。俺と雅も同時だった。
これは、ただの生徒ではない……。
隼人と音河は感じては居ないようだったが、俺たち3人には伝わった。
「落ち着け、嘉島、虎郷、音河」
と籠目さんが言う。
「こいつは『生徒会補佐会』の一だ」
「生徒会……補佐会……」
ああ、そう言えばそんなのもいたような気がする。
「この選挙は私たちが管理していますので、私たちの方から勝敗に関してはお知らせさせていただきたいと思います」
と、一と呼ばれた女性は言ってから、ハッとした顔をして
「申し遅れました。本校の校長から名を受け『乱一』と名乗らせていただいております。以後お見知りおきを」
「名を受けた?」
俺は女性に聞き返す。
「この学校では生徒会補佐会になるということは、この学園を上層から管理するということ。故に今まで通りの存在ではならない。ということにより、校長の方から新たな名を受けるのです。唯一無二の名前を」
少し中二っぽいですが。
と、乱さんは笑った。
「……で、勝敗はどうなんですか?」
と雅が話を切り出した。
「ああ、そうでした。庶務戦、楊瀬通 対 海馬正」
乱さんは、言って。
驚くべき事実を続けた。
「勝者、海馬正」