09-宝探し-
先日分のものに、700文字ほど足させていただきました。
続きからご覧ください。
最初に動いたのは楊瀬さんの方だった。
動いたと言っても、見える速度ではなかった。
気づいた時には海馬の体が吹っ飛んでいた。
「狼は……そんなに早いもんなのか?」
海馬は少し、苦笑いを浮かべていった。
「これは私なりの努力の結果ですよ」
そして追撃と言わんばかりにタックルで攻撃して壁と狼の体躯が海馬の体をサンドイッチする。
「……が……は……」
海馬の口から空気とともに、血の混じった胃液が飛び出す。
「……くっそが!」
海馬は適当に銃のスイッチを押した。
『スイッチ№10:ファイア』
とその音とともに、銃口から飛び出した炎。
楊瀬さんの体を炎が襲った。
「熱ッ……!?」
楊瀬さんは声を上げて、後ろに下がる。
火は燃え移りはしなかった。
「どういうことでしょうか」
「何のことだ」
「先ほど、スイッチは№10はポンプだったはず……」
「ああ、それなら簡単さ。こいつは気まぐれだ。スイッチなんて言っても規則性もなく適当に代わっていく。いかに状況に適した武器が使えるかは、運しだいってわけさ」
「……」
楊瀬さんは焦燥感を表情に露わにした。
「ケリを付けるぜ」
海馬はボロボロになった体を無理やり起こして、そのままスイッチを押した。
『スイッチ№100:スロット』
音声がしたかと思うと、次はスロットが回る音。そして銃口からルーレットを回すレバーのついたスロット台のスロット部分だけが飛び出る。
「な……何だ!?」
海馬自身が焦る。
「……さっさとけりをつけるんですよね?」
と、楊瀬さんが重々しく立ち上がる。
「先手必勝!」
楊瀬さんはそう言って走る。
といっても目に入る速度ではないが。
「く……」
海馬はレバーを必死につかむ。
と同時。
海馬の体は窓外に投げ出された。
「……」
それでもレバーを海馬は引いた。
スロットがゆっくりと止まり始める。
海馬の体は落下し続ける。
スロットが止まる。
『7』『7』『7』だ。
『ケースバイケース』
音声がした。
そして海馬は地面にたたきつけられた。
「……死んではないでしょうが……」
楊瀬さんは少し苦そうな表情を見せる。そして窓から背を向けた。
高さ的には死ぬような高さではない。彼の運なら打ち所が悪いということはないだろう。しかし、疲労やダメージはかなり蓄積された状態だったことから、0と言い切れるわけではない。
が。
「死んではないぜ」
楊瀬さんの後方から声がした。
海馬正。
その男が窓の桟に立っていたのだ。
しかも。
「……無傷……!?」
落下のダメージはおろか、今まで食らったであろうものでさえもなくなっていた。
「どういう……!?」
「ケースバイケース……時と場合による、だ。スロットの力によって発揮される効果はその時求められる力のようだ」
「まさか……その力で傷を回復したということですか?」
「そんなわけないだろ?この武器は武力。攻撃の道具しかない。だから、これは只の時間稼ぎ。お前を騙すための、な」
そう言った海馬の体は。
かすれていたような気がした。
ドォン!と。
その海馬の体の後ろからミサイルの弾が飛んできた。
「な!?」
楊瀬さんは対応できない。
ミサイルは楊瀬さんの体を的確にとらえて、爆発した。
緑色の水晶玉は、パリンという音を立てて割れた。