07-宝探し-
海馬君の独壇場。
ああ。
空が青い。
俺の髪の毛の色と比べても、大差ないくらいの青さだ。
あと、比べる対象としては、今俺の中にある無感情さに近い何らかの『青』だろうか。
ああ。
清々しいくらいに負けた。
俺もまだ青い餓鬼だったということだろうか。
俺はその場に座り込んだ。
少し暖かくなっている床となった天井に仰向けに倒れた。
「……くっそ」
これほどまでに俺にとっての天敵な男がいただろうか。
あれの能力は予想外というよりも、『予想できない』のだ。いや、例え予想していてもそれに対して俺の運が作用することはできない。
『運よく嘘だと俺が発言する』などという事象が起きるはずもないのだ。
それに、アイツの消えるという能力に対しては、一瞬でも奴を『楊瀬通』として見てはいけなかったのだ。だから俺は『ただの二年生』や『庶務の男』、『狼』など、そういう見方だけをしていた。
だが、俺は助けられた瞬間にアイツを『楊瀬通』だと認識した。
客観的に見ることを封じられた。
「……」
もしかしたらそこまで計算尽だったのかもしれない。
俺を助けて、足場の悪いこの体育館の上に連れて行き行動を封じ、さらに俺を助けることで『主観的』に自らを認識させようとした。
そういうことだとしたら、俺は間違いなく完敗だということだ。
でもまあ。
取り敢えずは俺は立ち上がった。
周りを見渡す。
「見えるわけないよな……」
あきらめる。
雅には悪いことをしたよな。
死亡フラグではなかったけど負けフラグは立ってしまったわけで。
俺の運も100%ではないことが分かって、それも『運が良かった』ということに――。
「海馬ぁあああああああああああああ!!」
思考を中断させる叫び。
「てめえ、何勝手にあきらめてんだ!」
最初は普通に嘉島かと思った。
が。
叫んでいたのはなんと王城だった。
「思い出せよ!君はまだ進化すらしていないだろう!君はまだ第一段階だ!」
「……ああ」
そう言えば、この間皆はレベルが上がったというのに、俺は上がることもなかったな。
……で?
「まだ30秒あるだろうが!願えよ!君の思うところを!」
「願うって……」
何を。
俺は客観的に自分を見ることはできるが、最早欲望なんてどこかに落として忘れてしまった。
だから俺は思考の際、他人の意見にすがるのだ。こんなに考えているのも久しぶりだというのに……。
大体、客観的に考えたら、俺の負けは決定だろうが。狼という強さの前に俺の武力では到底立ち向かえないし、俺が頑張る理由なんて……。
ああ。
あるのか。
雅。
あいつのために俺は頑張らないといけないのか。
「……だよな」
俺は呟いた。
今までの思考を吐き出すかのように。
そうだ。
だったら、客観的な感情で願えばいい。
俺に足りない武力を。
「……よこせよ。俺の運」
ぶつける。
「俺に足りない力をよこせ!」
叫ぶ。
突然、自らの体が後ろ向き倒れる。
青い空が笑ったような気がした。