04-宝探し-
「貴方はいったい何を考えているのですか」
「何も考えていないね」
と、海馬は言ってそのまま飛び上がる。それを見た楊瀬さんも飛び上がる。
バスケのジャンプボールのようだ。対象物の大きさも違うし、高さもそんなものではないが。
「届け!」
「届くわけがありません」
と、楊瀬さんは消えた。
そして少し上に現れる。
「私が先に取りますから」
「届け!」
「ですから届きませんと――」
と。
楊瀬さんの体が急に落ちた。
「届いた!」
海馬は言った。
そう。
海馬は文字通り、楊瀬さんの足を引っ張ったのだ。
「な……」
「お前はここに居る!」
「く……」
そのまま二人で落下する。
「どうして今消えなかったのかしら」
と、虎郷が言った。
「ああ、そうだな」
今、海馬に掴まれてから消えてまた現れれば離れることもできたはずだ。
「……そうか。分かったよ、能力が」
「一体、どんな……」
「気にしなくていい。海馬君もほとんど気づいているようだ」
隼人はそう言ってにやりと笑った。
「今だ!」
海馬は水晶玉の方に走り出す。
「私はどこにでもいますよ」
と、水晶玉のほぼ目の前に楊瀬さんが現れる。
そして水晶玉を手に取った。
「ではこれで」
「お前は只の二年生だろうが!そこに居ろ!」
海馬は言った。
楊瀬さんは固まる。
「くっそ……」
楊瀬さんは言って、走り出した。
普通に走る行動でも楊瀬さんは十分に早いが、それでも消えるのとはわけが違う。
体育館を出て、楊瀬さんは言った。
「私の脚力ならば、校舎ひとつくらい余裕なんですよ」
と。
言ったが速いか飛び上がった。
「俺は運がいいんでな!」
と、海馬は言ってからそのまま排水管を駆け上がる。
普通なら倒れてもおかしくないが、『運よく』靴が溝に引っかかり続け、ほとんどバランスを崩さずに校舎の屋上まで辿り着いた。
「すさまじいですね。貴方の能力は」
「気づいたのか?」
「ただ、運がいいだけでよくここまで生きて来れましたね」
「お前の能力も見えているぜ」
「私はここから飛び降りても生きながらえるだけの存在ですよ」
と、飛び降りようとした楊瀬さんに、
「嘘つけ」
と。
一言海馬が言った。
「……ばれましたか」
と、楊瀬さんは笑う。
「単純な話だったのさ」
海馬もそれを見て笑う。
「お前の能力は『嘘を本当にする』っていう能力だ」
海馬の発言に楊瀬さんは即答した。
「ご名答でございます」