29-未知の明日に、差し伸べる-
足跡の大群(という表現は聊か比喩にしても言い過ぎだとは思うが、それら)は、1つの教室の前でなくなっていた。
「やあ」
「おう」
というか、そこに3人の人間がいた。
「隼人。生きてたのか」
「昔とは違って、普通の安心してくれたね。以前は無傷で残念、みたいな態度をとっていたのに」
「何の話をしているんだ」
「夏休みの話をしているんだよ」
と、隼人は言って下の男を見た。
「楊瀬。貴様の推理はいつもに増して上出来だ」
「ありがたき幸せ」
「ついでだ。王城隼人の意見を聞いて、思うところを述べろ」
「了承いたしました」
と、楊瀬さんは隼人の方を見る。
「まず、ソレは?」
「ああ。今回の犯人だよ」
そこに居たのは、見知らぬ男。間違いなく、長柄川ではない
軽く振り向くと海馬が少し安心したような微笑みを見せていた。
「離せよ!さっさと離せ!」
男は暴れている。
「で、お前の推測というのは?」
「ああ。こいつの能力だ。本人に聞いても能力の名前も内容も教えてくれなかったけど、僕たちに追われているときに異常なスピードや、異常な腕力から想定できるのは、『マシン・メーカー』だ。日本語名で『機械仕掛け』だ」
「内容は?」
今度は楊瀬さんが尋ねた。
「それですね。『機械仕掛け』っていうのは、ウェポンではなくスーパーナチュラルだ」
「……兵器類ではなく、超能力、ということでいいですね?」
「ああ、そうですね。そういうことです」
「続けてください」
「ええ。この能力は、兵器を『作る』という、能力です」
「兵器を作る。なるほど、それで爆弾を作ったわけですね」
「そういうことです。そして僕たちから逃げる時には足に何らかの装備を、僕たちの追っ手を振り払うためには腕に何らかの装備を、というわけです」
「……そこまでばれたら、仕方がない」
何だ、この負け犬台詞。
と思いつつも口を開いた男を見下ろす。
「俺の能力はそれだ。そして俺はある実験をしたいと思ったのさ。怨念も込めてな」
「怨念……?」
「お前らはどうせ覚えてもいないだろうが、俺は一条字……てめえになぁ!」
「覚えているぞ、枡居孝敏」
「え……」
「だが、貴様に恨まれるようなことをした覚えはないのだが?」
そう言って、枡居と呼ばれたその男に顔を近づける。
「貴様がこの学校の工学部を作り、いろいろなものを作ったはいいが、とうとう爆弾まで作り始めたから、貴様に反省文を書かせ工学部を退部させた。貴様の責任ではないのか?」
「……く!」
どうやら事実らしい。
「だが、貴様の実験とやらはすでに始まっているようだな」
「ああ。今、この学校の校庭に向かって俺の作った最高兵器が5台向かっているところだ」
「そうか。まったく、余計なことをしてくれるものだ」
と、一条字先輩は呟いて、携帯電話を取り出した。
「……ああ、高見澤放送部長。一度、体育館に全員集合するように頼んでおいてくれ。すまないな」
『校内放送。全校生徒は、一度体育館に集合してください』
そう言って電話したかと思うと、
「楊瀬、全員を呼べ。演技の時間だ」
と、楊瀬さんに命令した。楊瀬さんは声を聴く前にすでにいなくなっていたが。
「戦うんですか?僕らも手伝いますよ」
「ダメだ。お前らじゃ足手まといだろう。俺たちは『第三形態』だからな」
「第三?」
俺はその言葉に引っかかる。
確か。
確か夏休みに誰かが同じようなセリフを……そう、『最終形態』とかなんとか……。
一条字先輩は窓の外を見る。全員が体育館に移動したのを確認したらしい。
そして
「行くぞ」
そう言ったかと思うと、一条字先輩は窓から飛び出した。
すると五つの影が、校庭に降り立った。
のだが。
「え……」
そこに人はいなかった。いや、確かに二本足で立っているし服も来ているが、それでもだ。
俺の目がおかしくなければ。
そこにいたのは
狼、猿、蛇、鷹、そして、ライオンだった。