24-明日は未来と、似て非なり-
この話を投稿した、今日。一年前に始まったこの物語が250話を越えてとてもうれしく思います。
長らくありがとうございます。
その日のことは俺たちの中では何もなかったかのようだった。
家に帰ると、隼人も落ち着いたようだったし、突然何か言い出した海馬はそんなこと覚えてないかのような面持ちで部屋に入っていった。
そして次の日。
「あの……」
学校の門を入ると、待っていたかのように女性に声をかけられた。
「……」
なんだろう、今思うことではないが、この学校の女性はレベルが高い。いや、正確に言うなら俺に関わってくる女性のほとんどが美人だ(例:虎郷、音河、雅、シオさん、籠目さん、目の前にいる女性)。
ていうか、誰だろう。
「この間は……ありがとうございました」
と女性は深々とお辞儀した。
「……」
ここであなたは誰ですかなどと聞くわけにはいかない。
ので。
「いえ……」
と無難に謙虚にしておくしか方法がなかった。
「死ぬかと思ったのに、まさか飛び降りてまで助けていただけるなんて……」
「……あ」
ああ!この女性……あの飛び降り自殺の……。
ありがとうございました、ってそれのことか!
「いや、あの……何か思わずっていうか、何が起きたのかよくわかんなかったから」
取り敢えず、あわてて言葉を取り繕う。
「あ、それで、あの……えっと」
未だ慌てている俺。かなり格好を悪いと思う。
そんな俺を見て女性はくすくすと笑っている。
「……ゴホン!」
と、一度咳払いをして落ち着いてから
「どうしてあんなことをしたんですか?」
と発言した。
女性は俯いて、少し困った様子を見せる。
「というのは聞きません」
「え……」
俺が続けた発言に女性は驚いて顔を上げる。
「でも困ったことがあれば、誰かを頼ってください。頼る人がいなければ、俺を頼っていただいて結構です。どんな理由でも――たとえ理由を教えていただけなくても、貴方さえ信用できれば俺たちは助けますから」
俺はそう言って、そのまま立ち去ろうとする。
「ああ」
いいことを思いついた。
体を女性の方に向けて、笑顔を作る。
「できれば、ですが、生徒会役員の選挙では俺たちに投票していただけると嬉しいです」
「……はい!」
女性もそう言って微笑みを見せた。
「遅かったな」
教室に入ると海馬がそう言って出迎えてきた。
「ああ、ちょっとあってな」
と笑ってから海馬と一緒に自分たちの席の方に向かう。
海馬は先に座って、椅子の背もたれ側を前にして座る。俺は自分の荷物を置いてから海馬を見る。
「見たぜ。女生徒と話していたな」
「見てたのかよ。まあ、そんな色恋みたいなことではないから大丈夫だぜ」
「どうだろうな、お前は勝手にフラグを建てて去っていく性質があるぜ。だから案外恋愛に発展させてくるかもしれないぜ」
「やめてくれよ……」
ちなみにこの『やめてくれよ』は、『そんな妄想はやめてくれよ』ではなく、『近くに虎郷がいて、いつ聞き耳を立てているかわからないのに、そんな話をしたら後で俺がどうなるかわからないんだから、やめてくれよ』という意味である。
と思いながら、ちらっと見てみる。
「!」
にらんでいた。
「ごめんな、嘉島……」
「救急箱だけよろしく……」
心の底から申し訳なさそうにしている海馬に、俺は苦笑いで答えるしかなかった。
「で、あの女性は何の用だったんだ?」
「ああ、この間自殺未遂した女性だったみたいでさ、助けてくれてありがとうだってさ。だから、票を入れてくれるように頼んでおいた」
「おお、それなら俺も声をかけられたぜ。この間の不良をブッ飛ばしたことで先輩にいろいろ言われたぜ。空手部とか柔道部とか、勧誘がいっぱい来た」
と海馬はニヤリと笑う。
「僕も先生から褒めていただいたよ」
と。
気づくと隼人がいた。音河と雅もすでに着席しており、隼人はやはり最後に来ていたようだ。
「こういう行動を積み重ねて、頑張っていこうよ」
「だな」
キーン、コーン、カーン、コーンと。
チャイムがなり、一日が始まる。
終わって放課後が来れば俺たちの活動も始まる。
5日後。
選挙結果発表日。
企画を張り付けておきましたので、ご覧ください。