22-宴に水は、さすべからず-
今回は短め、
伏線回収のためだったので。
『一条字 雷』という男を憶えているだろうか。
少し前、俺たちと隼人が対立していた時の話だ。まあ対立といってもそれは王城側の幹部たちの仕業であって、隼人と対立していたわけではないのだが――そう。
その幹部たちが、俺たちを処分するために、海馬の元友人でレッドテイルという爆弾魔のグループのリーダーを務めていた女、『長柄川 里子』を脱獄させた。そして彼女はレッドテイルの仲間で同じく囚人だった仲間たちを連れ出すために、アクターや重要犯罪者が収容されていた棟を破壊した。
その時、全く関係のない3名も脱獄していたのだった。
その中の一人が一条字 雷。
その男に関する龍兵衛さんの説明は、確かこうだった(といっても俺が覚えていたわけではなく、隼人から聞いたのだが)。
『殺人罪と殺人教唆とか、後は強盗とか。裏の王者、一条字だ。ヤクザだな。コイツは証拠を残さなかったり、他の奴らにやらせるから捕まえるのに時間が掛かったんだけど、公務執行妨害で捕まえてそのあと、さっき言った犯罪を再逮捕の方針で捕まえた。』
と言っていた。
そしてこの男を捕まえたのは、なんとその息子。そしてその息子の発言はこうだった。
『親父は王座から降りたのだ。これからは俺が王だ。俺は俺であるが故に、王である意味があるのだからな』
まさしく、彼だ。
その時龍兵衛さんも名前を言っていた。
「一条字……玲王……」
そこまで聞いて俺は一条字先輩を改めてみた。
この話の流れから考えて、つまりこの男はヤクザの現頭領……若頭ということに……。
「よくわかったな、王城隼人。流石だ、としか言いようがない。まあ、情報を知っていたにしては気づくのが遅かったような気もするが、及第点だ。ちなみにお前のことは知っていた。表の王城、裏の一条字。これがこの街の基本スタイルなのだから」
「……」
隼人は黙って眉間にしわを寄せて、正面の一条字先輩をにらんでいる。
「どうした、王城隼人。まさか貴様はヤクザを嫌う立場の人間か?」
「いえ。若頭になってから、行動が抑制され、むしろ裏側での治安が守られているのは貴方のおかげだと聞いています」
「では、どうしてそんな嫌悪の目で俺を見ている?」
「先程いった、政略結婚ですよ」
隼人は目付きを鋭くして言った。
「そう、それ。どういうことなの?」
音河が隼人を覗き込むようにして聞いた。
「日下組」
そう言って地面を指差す。
「ここはヤクザの家だ」
思い出されない人は、第五章の22をご覧ください。
期せずして話数が同じでしたw