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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第六章 誘い乱れるこの世界
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21-策略の末、満ちる時-

 大きな日本屋敷だった。

 日本庭園、というべきなのかそうではないのかは基礎知識のない俺には分からないが、和風の大きな建物だった。俺たちはその廊下を歩いていた。

 一条字先輩は早目に屋内に入り、離れの方に向かっていたのを見た。

「日下……一条字……?」

 隼人はそれを見てすぐにつぶやいて、思考を始めた。隼人がこうなると止められないので取り敢えずしばらくは放置しておくしかない。

「大丈夫なんですか、日下さん。そんな急に宴なんて」

 と音河がシオさんに尋ねる。

「私のことは気楽にシオと呼んでくれていいよ」

 シオさんはそう言って一度笑うと、

「正直なところ急ではない。一度、こうして全員で対面しておきたかったところだ」

「そう……なんですか」

「玲王には事情を説明していないからね、宴としておいただけだ」

 シオさんはそう言って前方を見る。

「……全員ということは」

 虎郷が口を開いた。

「もしかして、そちらの方の役員もいらっしゃるんですか」

「そうだ。よく気付いたな、虎郷」

 シオさんはそう言って笑う……が。

 名前ではなく名字で呼んでいる。格差……差別というべきかもしれない。

「私たち側の庶務、書記、会計も呼んでいる。名前を憶えてやってくれ」

 と、そこまで言って宴会場と思しき広い場所についた。

 すでに料理や机などは置かれてあり、準備万端という様子だった。

 で、そこにはすでに3名の先着がいた。


「日下副会長。お疲れ様でした」

「で、そこにいる人たちが一条字の敵対すべき相手……」

「よっす!」

 やはり生徒会役員の人々らしい。

「やっほ!ちわっす!」

 挨拶を3連続でしたのち、元気のいい男子生徒が立ち上がる。

「オイラ、1年2組の華壱はないち もんめ。同級生だぜ、よろしく!」

「同級生……庶務に抜擢されたのか?」

 俺はそう言って尋ねる。相手の身長が思ったよりも低くて、見下ろす形になってしまう。

「舐めんなよ!庶務じゃないぜ!書記だぞ!」

「書記……なのか」

 ということは後ろの二人のどちらかが庶務ということになるが……1年生には見えないぞ。

「1年生ではありません。当然でございます。私が庶務を担当させていただいています」

 と、敬語口調で紳士風の青年が言った。メガネをかけて、洋風の正装をしている様子は執事という感じだ。

「申し遅れました。2年3組の御手洗みたらい あらたと申します。以後お見知りおきを」

「アンタが庶務をやる理由は?」

 そう言って海馬が睨んだ。

 海馬と身長が同じくらいだ。いや、御手洗さんの方が大きいかもしれない。

 が、威圧感よりも包容力を感じる。

「私は雑務程度、皆様の行動のサポート程度しかできないのでございます。ゆえに、私は皆様のお手伝いをさせていただいている所存でございます」

「……そうか」

 海馬はそう言って下を向いた。

 何か思うところがあるのかもしれない。

「では順番と言っては何だけれど私のあいさつってことになる」

 そう言って女性が立ち上がった。

「私は3年3組で一条字と日下と同じ学年クラスだ。姓は籠目、名は加護女。上下合わせて『かごめかごめ』だ。会計を担当している」

 話口調はシオさんを思い出させる女だ。

「ちなみにオイラは『花一匁』だぜ」

「……」

 御手洗さんは黙っている。

 よくわからないが、思うところはありそうだ。


「揃っているようだな」

 一条字先輩とシオさんが現れた。

 和服だった。

「ここの父親にあいさつしてきた。婚約者の父親だ。それくらいしなければな」

「玲王。仕方がなくやっていることではあるとは思うけど、そんな言い方は関心しないわよ」

「……まあいい」

 そう言って一条字先輩とシオさんはテーブルの上手側に並んだ。自然残りの役員も上手側に並んで座った。俺たちは自然、下手側に並んで座った。

「じゃ、いただくとしようか」

 そう言って一条字先輩は手を合わせ――



「政略結婚」

 という、声が聞こえた。

 ここ20分ぐらい何も話さなかった隼人だった。

「そういうことか。なるほど。だから、日下と一条字なんだ」

「隼人?」

「思い出した。一条字家。『裏の王城』だ」

 

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