表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第六章 誘い乱れるこの世界
248/324

20-恋心、あずかり知らぬ、夢もあり-


 俳句っぽく。


 カコン、と古い庭園にあったししおどしがなる。

 そして水の流れる音がまた聞こえ始めた。


 その日の夜、俺たちは日下副会長の家に招かれた。

 話してもそう長くはならないが、いつも通りに時間軸を戻してほしい。



「王城隼人」

 そう言って隼人を呼び止めた男がいた。

「……一条字先輩」

 隼人がそう言って立ち止まる。それから、

「……先に帰っておいてくれ」

 と言って俺たちに背を向ける。

 俺たちは何も言わずに足をもう一度動かし始める。

「いや、待て。嘉島奏明、海馬正、音河響花、虎郷火水、常盤雅」

 と、一条字先輩はそんな俺たちを止めた。フルネームで全員を呼んだ。

「貴様らにも用があるそうだ。少し待っておけ。日下が呼んでいる」

「日下先輩が?」

 虎郷がそう聞き返して少し不快そうな顔をする。彼女にとってはもしかしたら不安要素――トラウマなのかもしれなかった。

「何の用かはよくわからないが、虎郷火水、貴様もしっかり呼ばれている。貴様がいくら不快に思おうが――そして入本人が貴様に好印象を持っていなくても、体裁というものもあろうからな」

 そう言って一条字先輩は隼人の前に立つ。近づくと隼人の身長の小ささが――一条字先輩の身長の大きさが際立つというものであった。別に隼人は小さいわけではないのだろうということにしたい。

「よくやった、王城隼人。学院の平和を見事守って見せた、ということだな」

「そんな大それたことをしたつもりはないですよ。僕は僕の感情の赴くままに行動してみただけです。僕のやりたいようにやった結果と言っても過言ではないんですよ」

「自分のやりたいようにやってこの結果とは、根っからの人助け向きの体質と見えるな」

「助けているつもりはありません。僕らみたい・・・・・なのは、人助けはできませんよ」

「……ふむ。貴様はやはり変わった奴だ」

 そう言って一条字先輩は荷物を持って階段を降り始めた。

 俺たちは何も言わずにその後ろを追って階段を降り始める。

 昇降口にはほとんど人はいなかったので少しさみしさを感じたが、お構い無しに皆は靴箱へ行く。

 そして靴を履いてから、門のところまで歩くと

「玲王。思ったより遅かったわね」

 と、頭上から声がした。

 見るとシオさんが街灯の上にバランスよく立っている。

「日下か。いつもどこにいるのか分からん女だ」

 一条字先輩はそちらの方を見ずに歩き始めた。

 シオさんは飛び降りてきて、

「やあ。みんな。久しぶり、なのだろうか?」

「そうですね。で、何の用ですか?」

 俺はシオさんに尋ねた。

「いやいや、特に用があったわけではないが……。まあ、貴様らが学園平和のために頑張ったと聞いたので、小さくながらも宴でもしないか?」

 シオさんはそう言って俺たちを見た。

「……日下。まさか、そんな用だったのか。そしてそれには俺も参加させる予定なのではあるまいな」

「そのとおりよ。よくわかってるじゃない、玲王」

「……まあいいだろう。たまには挨拶・・もしておかなければな」

 そう言って一条字先輩も立ち止まる。

 シオさんはもう一度こちらを見て

「では、行こうか」

「行くってどこに?」

「私の家だよ」


 回想終了。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ