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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第六章 誘い乱れるこの世界
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19-包まった明日に、健闘を-

 昨日。


 第二作戦まで話した後の話だ。


「ここまでが『正攻法作戦』だ」

「正攻法……」

 隼人の発言を小声で反復する。

「まさかとは思いますけれど、反則をしようというつもりではありませんよね?」

「そんなわけないじゃん。相手が『正攻法』をしてきたとき用の『作戦』だから『正攻法作戦』だよ」

「ってことは、相手が『反則』をしてきたとき用の『作戦』で、『反則作戦』ってことか?」

 海馬がそう言って笑う。

「そうなるね。どんなことを相手がしてくるかわからないけれど、まあ推測くらいはできる」

 そう言って隼人はどこから持ってきたのか分からないホワイトボードに文字を書き始めた。

「って、マジでどっから持ってきたんだ」

「こんなこともあろうかと、発注しておいた。これからも使うだろうからね」

 そう言って隼人はホワイトボードを見せた。

 ①、②、③と3つの項目が書かれていた。


「まずは……そうだね。やるとすれば『巻き込み型』だ」

 言いながら、①の横に『巻き込み型』と書き込む。

「巻き込み型?」

 聞きなれない言葉だ。

「つまり、目の前で問題を起こしてそれに巻き込ませて、こちらに暴力を加えるやり方だね。正義感で助けにきた人間をボコボコにしようと言う算段だ」

 ――ちなみにこれが虎郷のパターンである。


「他には?」

 海馬がそう言ったのを合図に隼人は文字を書き始めた。

「後は、『濡れ衣型』とかもある」

 ②の横に文字が書き込まれた。

「濡れ衣……つまり犯人に仕立て上げるということかしら?」

「そうなるね。たとえば、何かを盗んだ後僕らの荷物の中に忍び込ませたり、投身自殺させてその現場に僕らを呼びつけたら、そこにいたということで『殺人』ということで疑われる。たとえ、それが濡れ衣だと発覚してもその噂が立った時点で問題あり、ということなのさ」

「はぁ……そんなこと考える奴いるのかね?」

 俺はそう言った。

 ――で、その作戦にかかったのは俺なわけだが。

「もし、君が投身自殺のに引っかかってしまったら1つ言っておくけど、遠距離で足場を作り上げて助けるんじゃだめだよ」

「なんでだよ」

「普通に落ちていった人が、急に足場が現れたら頭からぶつけて死ぬ」

「……じゃ、どうすればいいんだ?」

「君が先に落下する。例えば鉄球でも持って下りていけば、先に下に行けるだろ?それで下に回ってから、足場を作り君が受け止めればいい」

 隼人はそう言って、3つ目の項目を書き始めた。

 俺がもしこの話を聞いていなかったら、どうなっていただろうか……。

 恐らく、見事引っかかってしまっていたのだろうと思う。


「で、後は『奇襲型』だね。これは『総合型』といっても過言ではないかな」

「総合型?」

「ああ。これは、今言った2つを掛け合わせ、僕らを全員バラバラにする。そして攻撃のできないだろう人間を一気に襲うのさ」

 ――この作戦が海馬と雅に実行された。だが、二人も当然強く歯が立たなかったということだ。


「まあ、こんな作戦建てたところで何も起きないよね」

 そう言って音河は笑う。

 雅も笑っていたし、虎郷は無表情だった。

 海馬はいつも通りの客観的無表情を貫いていて、俺は正直なところ隼人の指示に従うだけだからなんにもするつもりはなかった。

 そんな中隼人だけが、眉間にしわを寄せて不快そうな顔をしていた。


 何が起こるかわからないこの状況でどうあるべきかを考えているようで、この作戦があって俺たちは臨機応変の対応が取れたのだった。


 王城隼人。見透かす男。未来を見るのではなく、未来を感じる。そういう男なのだ。


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