18-未来のためには、昨日を見よ-
2階。
教室。
会議。
「私の方は大丈夫だったわよ」
虎郷はそう言って、少し汚れた制服で帰ってきた。
「ああ、この汚れはここから飛び降りたからついただけ。彼ら相手に苦しむことはなかったわよ」
「だから隼人は電話で叫んだのか……」
そりゃあ目の前にいた人が唐突に窓から飛び降りたりしたら驚くわな……。
「2階だからやってみただけよ。まあ軽く痛かったわ」
「そりゃそうだ」
「で、何があったんだ?嘉島」
海馬はそう言って、俺を見た。
「ああ、自殺しようとした女性を助けた」
「……なるほどねぇ。流石だな、王城」
海馬はそう言って笑った。
「雅ちゃんもなんかあったの?」
音河がそう言った。
「不良集団がやってきて、襲われかけました。返り討ちにしましたが」
「まあ、予想通りの行動だったわけだからな」
海馬がそう言ったのを聞いて全員で隼人を見た。
「……行こうか」
隼人はそう言った。
本館4階。
教室。
「失敗したってどういうこと!?」
「知るか!全てのことに対応されるとなんて思っているわけないだろ!しかも自殺未遂をさせた奴の話によると、『まるで魔法使いだ』っていうだけだったんだぜ!?」
「まぁ、彼女には無理やりやらせたから仕方ないわね。私たちに協力させてくれるわけがないだろうけれど……」
「どうするんだよ、これから。不良軍団を返り討ちにしたところを大衆にみられているから、むしろあっちの評価は上がってるんだぞ……」
「そんなの私に言わないでよ。私だって予想外なのだから……」
「はい、いただきました」
そう言ってそこに俺たちは現れた。
隼人はレコーダーを手に持っている。
「……貴方は」
「やっぱりあなた方の仕業でしたね」
隼人はにやりと笑った。
「乾先輩、朱里沢先輩」
「何のことだ」
乾先輩はとぼけようとしている。
「だから話は全部聞いているし、録音もしたんですって」
「……そんなものに証拠能力はないから大丈夫だ」
「証言があるとしたら?」
隼人はそう言った。そして音河の方を見る。
「……先ほど、この階であなた方が小声で話しているのを耳にしました。『計画』や『自殺』、『不良』などの単語が聞こえたので注意して聞いていると、どうも私たちを陥れる作戦を考えていたようだったから……」
音河は少し申し訳なさそうに言う。
あの時聞こえた男女の話はそういうことだったのか……。
「それだって証拠には……」
「いや、十分だと思いますよ。ていうかそういうことではなく」
隼人は笑顔で近づく。
「犯人はアンタたちだ」
そう言ってにらむ。
威圧。
候補者宣誓の時は怯まなかった二人が、極度の震えを起こしている。
何故だろうか。
というのは今は関係ないのだった。
「アンタらは一条字先輩の強さを知っているんだろう。だから僕らとは違って候補者を潰すことを選んだ。そうだな?」
「知ら……ない」
「白を切り通せると思ってんのか」
隼人は軽くキレている。
「僕が一番怒っているのは、アンタは不良たちに問題を起こさせるために気弱な男子生徒を焼却炉に呼び出したことや、弱みに付け込んで少女を自殺しようとするフリをさせたことだ」
「……それは」
「僕はアンタらを許さない。僕はともかく、僕以外の人間に危害を加えるのは絶対に許さないからな」
隼人はそう言って2人を強く睨み、
「分かったか!」
と叫んだ。
2人は急に糸が切れたように膝を折った。
「……職員室まで連れて行こう」
隼人はそう言ってその役目を俺たちに任せるようにその場を離れた。
その隼人の表情には怒り以外の何もなかった。