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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第六章 誘い乱れるこの世界
245/324

17-回ってくるには、遠すぎて-


 次の日。

 カレンダーの日付は4月16日。

 学校到着。

 作戦開始。


 第一作戦:人助け


「この学園には小さな問題が多発していることは容易に想像できる」

 それが隼人の発言だった。

 となれば行動だ。

 行動するのは俺と音河と虎郷。音河の耳や声なら反応できるし音河はちゃんと強いのだ。

 虎郷は未来が見えるから、その力で問題を根底から処理するのだ。

 そして俺は、他人の些細な心の動きにさえ対応できる――らしい。その能力で対応しさえすれば、ほとんど器物損壊も起きずにことを済ませられる――そうだ。

 正直な話、自分にそんなことができるとは思っていないが。

 閑話休題。


 第二作戦:選挙活動


「一条字先輩とは違って、僕らには人望がない。だから真面目に稼ぐしかない」


 これは隼人と海馬と雅。

 海馬と雅はこの間説明したとおり、その身で稼ぐ(なんか言い方が悪いが、そういうことらしい)。

 彼らなら票を稼ぐのも簡単だろう。彼らの関係は全力で伏せるが。

 隼人は代表者だから行動するのは当然だが、この間のこと――つまり、隼人が先生や生徒の心を威圧感でへし折ったことにより、皆が彼におびえているので、あまり表立って行動するのではなく、本人なのにも拘わらずまるでサポート役のように行動するようだ。


 おもにこの二つの作戦を実行するそうだ。



 放課後。

 一応ちゃんと言っておくけれど、授業はまじめに受けている。先生の心証を害するとロクなことにはならないのはちゃんとわかっているつもりだ。


「じゃあ行ってくるぜ」

「行ってきまーす!」

 海馬と雅はそう言って教室を出て活動に出かけた。


「俺と音河も外に出るってことでいいのか?」

「そうだね。ヒスイ君は予知が有り次第、みんなに報告或いは自ら行動するっていうことで」

「そうね。そうしましょうか」

 虎郷と隼人を置いて俺たち二人は行動を始めた。


「これからどうするんだ?」

 廊下を歩き始めてすぐに会話を始めた。

「取り敢えず歩き始めて、何か聞こえてきたらそれを確認しよう。暴力沙汰になりそうな感じや大きな問題になりかけたら私たちで止めに行こう」

「そうだな。流石音河考え方が隼人とそっくりだぜ」

「まあ一緒にいると考え方は似るよね」

「それにしても音河と話すっていうのはすごく久しぶりな気がするな」

「まあ、みんな個性が強いから私みたいなキャラは自然に発言権がなくなっていくのは物語の常なんだよ」

「おい、何の話をしているんだ」

「キャラクターが増えると登場シーンもあんまり強くは描かれなくなっちゃうし」

「帰ってこーい、音河」

「17話もやってるのに、新章に入ってからは東先輩の出番がまだ一度もないんだよ、ああかわいそうに」

「メタ発言禁止だって!!」

 と。

 面白おかしく話し合いをしているのもつかの間だった。


「……聞こえてきたよ」

 音河が言った。

「どんな会話かわかるか?」

「……話し合い?かな」

「暴力沙汰には?」

「発展しそうにもないかな」

「そうか。一応、気を配っておいてくれるか?」

「うん」

 音河はそう言って少し眉間にしわを寄せた。集中しようとしているようだ。

「俺はどうするかなー……」

 呟いて俺は、ふと窓の外を見る。

 ここは本館4階、3年生が生活する部屋だそうだ。

 で、その窓から別館の屋上が見えた。

 屋上。

 人影が柵を越えた。


「音河ここは頼んだ」

 俺はあくまで冷静さを持って、音河の集中を切らさない程度に言った。

 対して音河は一瞬だけこちらをみて、それでも

 『何かあったのかもしれないが、頼まれたからにはそれに従う。後から話は聞くことにしよう』

 という、『隼人がそう発言するとき』と全く同じ顔をして頷くとすぐにまた集中し始めた。

 流石だ。案外隼人より物分りもよくて対応しやすい。


 PUll……Pull……。

「ああ!?なんだ、隼人!」

『いきなりキレんなよ……。ヒスイ君が予知した』

「何だ!?手短によろしく!」

 俺はそう言って渡り廊下を走り上を見上げる。

 まだ落ちてはいないようだ。

『焼却炉周辺で殴り合いをしている様子だそうだ。って、今、君走ってなかったかい!?』

「見えたんならわかるだろ!取り込み中だ!」

『分かった。ここからも焼却炉の様子がうかがえた。どうももう始まっているらしいから――って!ヒスイ君!?』

「何があったかは後で聞く!」

 そう言って俺は階段を駆け上がる。

 屋上入室禁止、という張り紙を見てから駆け上がり、扉を開けた。


 靴を脱いで、横に遺書を置いているようだ。

「待て、コラ!」

「……」

 女性がそこにはいて、目には涙を浮かべていた。

「何があったかは知らないけど、とりあえず止まれ!」

「……」

 少女は黙って、飛び降りようと足を向けた。

「止まれって言ってんだろうが!」

 俺は再度走り出す。

 少女はそれを見てすぐに飛び降りた。

「くっそがあああ!!」

 叫んでから俺は柵を飛び越える。そのままの勢いでビルの外に体を投げ出した。そして落下する。

「勝手に死ぬな!」

 俺はそう言って左手を壁につける。

 俺はそれで――


 コンクリートの丸い塊を作り出した。


 そして俺の落下速度は上がる。

 女性を抜いて、そのまま1階の近くまで行く。

 それから塊を話して今度こそ、壁を錬成して突起を作る。

 俺はそこに手をひっかけて、急停止する。当然肩が外れそうなほどの痛みを感じるが、構わず今度は足場を作り上げた。

 そして女性の体を抱くようにして受け止めた。

 衝撃を全部受け止めてしまったようで、俺の体にさらなる激痛。

 そしてその勢いで倒れこみ、コンクリートの足場に背中を思い切りぶつけた。


「……痛いな……」


 しかし。


 隼人のアドバイス通りの行動しておいてよかった。

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