14-相手取るには、役不足-
注意:役不足の誤法はしておりません
放課後。
正式な書類を書いている最中だった。
「さぁ、ここまで来たぞ」
ほとんどの記述を終えた書類を前に隼人は呟く。
そこにいるのは俺と隼人と、そして何故か雅だった。珍しいメンバーである。
というのも、海馬は一度家に顔を出しに行くと言い(昨日の会話で唐突に爺やにお礼を言いに行こうと決意したらしい)、音河と虎郷は当然のように洋服を買いに行ったのである。
雅はというと、あまり服装に興味がないようだったので、今こうして俺たちと残っているというわけである。
で、だ。
そのほとんどの記述を終えた書類というのは、唯一2つ空欄があった。
会 長:
副会長:
会 計:虎郷 火水
書 記:海馬 正
庶 務:常盤 雅
と以下に続く。
まあつまり、副会長と会長をどちらにするか、という議論だ。
「どうするんだ」
「どうしようか」
「もうどっちでもいいじゃないですか……」
雅は少し眠そうな目をしている。
「いや、この議論は大切だ」
「そうだな」
「じゃあじゃんけんでもしてくださいよ」
「そんな簡単に決めて言い訳ないんだよ、ミヤビ君」
「だったら決闘でもして決めてみてはいかがだろうか」
そう言って突然現れたのはシオさんだった。
「え……」
「まあ冗談だ。奏明、隼人。お前らがけんかしているのを見て、雅が暇そうだからやってきただけだよ」
「え、私ですか?」
「ああ。私は君のことも気に入っているよ、雅」
てっきり、女子のことは嫌いだと思っていたんだが――。
虎郷が気に入らないのか?
まあ、よくわからないから質問するのもなんとなく阻まれるが。
「雅も選挙に出るのか?」
「ええ……私は雑務向きですから」
「そうか。うちの庶務も雑務向きだからな。実力選挙ではいい戦いになりそうだ」
「役職別に戦うんですよね?」
「ああ。ちなみに副会長は誰なんだ?」
そう言ってシオさんは俺たちを見る。
「俺たちのどちらかです」
「……忠告しておこうか。一つだけ言っておこう」
人差し指を突き出したシオさん。
「玲王には勝てない。私の婚約者は最強だ」
「……婚約者……ですか」
そう言って隼人は少し不穏な表情を見せた。何か思うところがあるのかもしれない。
「ちなみに私にも勝つことはできないだろうな」
自信満々――というよりは、冷静に考えて間違いない、というような表情だった。
「玲王は王座に立つ男だ。それ以外を許さない、という感じだ。だから私はそれをサポートをする役目として結婚するんだ。だから副会長になった」
シオさんはさらにそう続けた。
なるほど。
これを聞いて決まった。それはきっと隼人も一緒だろう。
「シオさん」
俺は言った。
「いい戦いをしましょう」
俺の発言にシオさんは面食らったような表情をした。
「あと、玲王さんは僕が戦うので」
隼人がそう言った時にはそれぞれの名前が既に書かれていた。
会長:王城 隼人
副会長:嘉島 奏明