13-仄かに進み、音に啼く-
なかなか物語が進みませんねww
「貴様か。俺の婚約者のお気に入りというのは」
「え……」
学校の到着していきなりの発言で俺は戸惑いを隠せなかった。
いやいや……。
ラスボスがいきなり登場して俺に話しかけてくるって……何なんだよ!
こういうのは最後の方に初めて話すか、気さくに話しかけてきた奴が実はラスボスでした、のどちらかしかないだろ(ちなみのこの場合は前者しか考えられない)!
つくづく、この世界は漫画や小説のように簡単に進むような物語じゃないんだな、と思った。
「貴様か、と聞いている」
「……」
「いや、待て。貴様に違いなさそうだ。そういえば、貴様は体育館で残っていた男だな。嘉島奏明だ」
「あの一つ質問してもいいですか」
「許可する。一つならず、いくつでも受けよう」
「……どうして俺の名前を知っているんですか」
「決まっている。お前が言ったのを聞いたからだ」
「聞いた……!?」
「ああ。聞いた。俺は耳がいいからな。シオはお前の名前を知っていただろう?」
「……」
なるほど。
つまりこの人の能力は耳に関係している……?
いや、待て。重要な要素がもう一つ。
この人の叫び声だ。
「あの――あなたは」
「ちょっと待て。貴様ばかりに質問させるのは忍びない。俺もお前に聞いておきたいことがあった」
忍びない、というのは少しおかしいような気もするけれど
「何ですか?」
俺はとりあえず応対した。
「嘉島……というと、奇跡の親縁か?」
「……そうです」
「そうか。いや、だからなんだということもない。アイツには仮があるが、それは貴様には直結しないものと考えているからな」
「そうですか。それは助かります」
「……で、貴様の話を続けてくれ」
一応、皆様にお伝えしておこう。
今、俺の目の前にいる男は生徒会長『一条字 玲王』だ。
そして彼の口からいきなり飛び出した婚約者は『日下入』と推測される。
まぁ、聞いていればわかることだろうけれど。
「あなたもアクターなのですよね?」
「新型だ。恐らく規格外と呼ばれるだろうな、貴様らからすれば」
「……実は生徒会選挙に立候補しようと思いまして」
「そうか。なら生徒会に正式な申請をしろ。俺たちも次期生徒会を担当するつもりだからその覚悟をしておけよ」
「ええ。楽しみにしています」
「こっちもだ。ではまた会おう」
一条字生徒会長はそう言って、去っていった。
「思ったよりも普通の男だったな」
後ろから海馬が突然現れた。
「見てたのかよ」
「ああ。面白そうなものには関わるけれど、面倒事には首を突っ込まないようにしている」
「ったく……」
「しかし……何か違和感を感じる」
今までの軽薄な表情から急に神妙な顔になった。
「どうしたんだよ」
「分からない。だけれど……今回の闘いは難しくなりそうだぜ」
「難しく……ね」
それは俺も思っていた。
相手の生徒会長と副会長がアクターならば、庶務と書記と会計もアクターなのかもしれない。ともすれば、ただの相手ではないのだから注意しなければならないだろうな、と。
その程度でしか考えていなかった。