11-過去が渡す、明日の橋-
「生徒会役員を決める」
俺はWRから帰って、全員にそう宣言した。
本来、WRから帰ると睡眠状態と同じになってしまうため、意識を回復することはできないが、あらかじめ海馬に起こしてくれるように頼んでおいた甲斐があった。
「……えっと、解決したのかい?」
隼人はどうも海馬たちから話は聞いていたようで、解決したという結果に驚いていた。
まあ今までの俺なら解決できたはずもないだろう。
「解決したわけじゃない。納得いっただけの話」
虎郷はそう言ってソファに座り込んだ。
「……そうかい」
隼人はいつもの『まあいいか』の顔をしてそう言ってから
「つまり、君は父親の意思を酌むってことだね?」
「そういう言い方は気に入らないけど、そういうこと」
「となれば、一人余るわけだが?」
海馬がそう言って、料理をテーブルに置いていく。
「庶務、書記、会計、副会長、会長では5人。ここにいるのは6人」
「誰か一人が役員にならないってことになりますね」
海馬のセリフに雅が付け加える。
「生徒会役員実力選挙」
音河が言った。
「実力ってついているから、多分戦闘ってことになるのかな?」
「いや、実力だからって戦闘とは限らないぜ?『運も実力』のうちってな」
海馬はそう言って笑う。
「庶務は年功序列で私が担当します」
雅はそう言った。
「戦闘であれ何であれ、私は実力勝負ならイーブンまで持っていけますから」
「だね。じゃあ悪いけどそうしてもらうよ。で、音河」
そう言って隼人は音河の肩に右手を置く。
「君に役職はつけられない」
「……まぁ、隼人がそういうならそうなんだろうね」
音河はそう言って特に嫌がったり落ち込んだりすることもなく、受け入れたようだった。
信頼が垣間見えていた。ああ、あれが本当の恋愛の形だったりするのかもしれないな、と仕方のないことを考えていた。
「で、書記は……」
俺は皆の顔を見渡す。
……うん。
「海馬。頼む」
「俺か?あんまり字がきれいじゃないけど、いいのか?」
「いや、今は役職は気にしない方がいいし……気にしたとしても海馬に会計は無理だろ?」
「ああ……そういうことか」
海馬は納得したようだ。
海馬は字はともかく、金銭感覚はほとんど崩壊している。
彼の家はもともと裕福で、今でも爺やこと『県 虎兵衛』さんから仕送りをしてもらっているようだ。だから今でも金銭感覚はそこまでよくない。
ちなみに虎兵衛さんは龍兵衛さんの弟である。見た目的には龍兵衛さんの方が若いが。
閑話休題。
「じゃあ私が会計っていうことでいいわね。私はしばらく貧乏生活が続いてたから、金銭感覚も大丈夫でしょう」
「となると、生徒会副会長だけれど」
隼人が言った。
「いや、それはもう決まってるだろう」
俺が言うと
「そうだね」
と隼人が言った。
「会長は隼人がやるんだろ?」
「会長はソウメイ君がやるだろ?」
同時に言った。
「「……え?」」