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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第六章 誘い乱れるこの世界
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03-落として砕いて、葦の糧-


「で、その女生徒はアクターのことを知っていたわけだ」

「そうだけど……」

 隼人と一緒に帰り道を歩きながらその話をしていた。


 あの後、

「失敬、まだ仕事の最中だからな。またいずれ会おう」

 とシオさんが言って、屋上へとまた飛び上がっていった。

 結局俺は名前を名乗ってはいない。


「その女性から話を聞ければいいんだけれど……まぁ、相手は結局生徒会役員だからね」

 そう言って隼人は少し思案顔をした。




「ただいま」

「お帰りー」

 俺たちが帰ると全員がいた。

 玄関の方に虎郷が出てきて、

「会議、始めるわよ」

 と言って虎郷が俺の方を見た。

 そして少し強くにらんだ。

「……何だよ」

「後で話すわ」

 隼人が先にとおり、虎郷が前を行く。俺はそれを静かに追いかけながら考える。

 弁当はちゃんと食べた。伝えることは伝えたし、当番を忘れてはいない。

 なんだ……俺は何をした……。


「まずは、諜報の結果だ」

 そう言って海馬が口を開いた。

「情報を大まかにまとめて話す。桜凛おうりん学園の生徒会発足時、生徒会長の支持率は20パーセントだった。しかし、他の生徒会長になろうとした者たちが、全員怪我や病気で倒れた……ここまでならよくある話だ。その生徒会長が全員ぶっ潰したんだろう」

 だろう。

 しかし、違うということは――。

「現生徒会長はその犯人を捕まえて、支持率を上げたんだ。最初は自作自演という線もあったが、それからの行動も正義に満ちていて、今のようになっている」

 海馬はそこで音河に目をやる。

「考えてみればわかるけど」

 と、今度は音河が話を始めた。

「もしも威圧感だけでこの学校を支配していたら、支持率なんてそんなに持たない……すぐにリコールされてしまう。ということは絶対王政ではなかったんだよ。今、2、3年生が彼に生徒会長を任せられるのは、それと同時に絶対の『信頼』があるからなのさ」

 音河はそう言って、諜報の話は終了、というように雅の肩をたたいた。

「では、チーム警察ですが、こちらは反生徒会勢力と生徒会の情報を集めてみました」

 雅が話を始める。

「単刀直入に言って、反生徒会勢力は存在しませんした」

「しなかったのか……」

「はい。治安を乱す連中は当然多かったようですが、生徒会自体に戦いを挑んだものはほとんどいなかったようです。そして生徒会ですが」

 そこで、今度は虎郷が

「メンバーの構成は」

 と話を始めた。

「庶務、書記、会計、副会長、会長の5人と、学園補佐会のメンバーが2人の計7人で構成されているわ。そして中でも堅物なのが、副会長の日下という女よ」

「堅物……?」

「数多くの男が彼女に話しかけたけれど、全員が粉砕されている。彼女が会話を成立させられるのは、生徒会のメンバーだけらしいわ」

 と、そこで俺をにらんだ。


「なのに、新入生の男子が副会長と仲良く話しているという情報があったの」


 ……なるほど。

 それが俺か。

「それで、奏明さんはいきなり堅物に話しかけに行って、しかも粉砕されずに済むなんてすごいですね、っていう話をしてたんです」

 雅が嬉しそうに言う。

 うん、違うんだけどなー……。

「ともかくこれで話し合いは終了だね」

 そう言って隼人は笑った。

「では、夕飯の支度に移ろう。今日は担当は……」

「ああ、俺と音河だ」

 海馬が立ち上がる。音河も言われてからついていく。

 家に住む人数が6人になってから、量も多いので2人で作業することにしたのだ。

「じゃ、僕は思考を続けるかな」

 そう言ってテレビをつけて隼人はソファーに寝転がった。

 雅はちょこんと、その近くに座りソファーにもたれかかった。


「嘉島君」

 嫌な予感。

 俺は虎郷を見る。

「ちょっと来なさい」

「……はい」

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