03-落として砕いて、葦の糧-
「で、その女生徒はアクターのことを知っていたわけだ」
「そうだけど……」
隼人と一緒に帰り道を歩きながらその話をしていた。
あの後、
「失敬、まだ仕事の最中だからな。またいずれ会おう」
とシオさんが言って、屋上へとまた飛び上がっていった。
結局俺は名前を名乗ってはいない。
「その女性から話を聞ければいいんだけれど……まぁ、相手は結局生徒会役員だからね」
そう言って隼人は少し思案顔をした。
「ただいま」
「お帰りー」
俺たちが帰ると全員がいた。
玄関の方に虎郷が出てきて、
「会議、始めるわよ」
と言って虎郷が俺の方を見た。
そして少し強くにらんだ。
「……何だよ」
「後で話すわ」
隼人が先にとおり、虎郷が前を行く。俺はそれを静かに追いかけながら考える。
弁当はちゃんと食べた。伝えることは伝えたし、当番を忘れてはいない。
なんだ……俺は何をした……。
「まずは、諜報の結果だ」
そう言って海馬が口を開いた。
「情報を大まかにまとめて話す。桜凛学園の生徒会発足時、生徒会長の支持率は20パーセントだった。しかし、他の生徒会長になろうとした者たちが、全員怪我や病気で倒れた……ここまでならよくある話だ。その生徒会長が全員ぶっ潰したんだろう」
だろう。
しかし、違うということは――。
「現生徒会長はその犯人を捕まえて、支持率を上げたんだ。最初は自作自演という線もあったが、それからの行動も正義に満ちていて、今のようになっている」
海馬はそこで音河に目をやる。
「考えてみればわかるけど」
と、今度は音河が話を始めた。
「もしも威圧感だけでこの学校を支配していたら、支持率なんてそんなに持たない……すぐにリコールされてしまう。ということは絶対王政ではなかったんだよ。今、2、3年生が彼に生徒会長を任せられるのは、それと同時に絶対の『信頼』があるからなのさ」
音河はそう言って、諜報の話は終了、というように雅の肩をたたいた。
「では、チーム警察ですが、こちらは反生徒会勢力と生徒会の情報を集めてみました」
雅が話を始める。
「単刀直入に言って、反生徒会勢力は存在しませんした」
「しなかったのか……」
「はい。治安を乱す連中は当然多かったようですが、生徒会自体に戦いを挑んだものはほとんどいなかったようです。そして生徒会ですが」
そこで、今度は虎郷が
「メンバーの構成は」
と話を始めた。
「庶務、書記、会計、副会長、会長の5人と、学園補佐会のメンバーが2人の計7人で構成されているわ。そして中でも堅物なのが、副会長の日下という女よ」
「堅物……?」
「数多くの男が彼女に話しかけたけれど、全員が粉砕されている。彼女が会話を成立させられるのは、生徒会のメンバーだけらしいわ」
と、そこで俺をにらんだ。
「なのに、新入生の男子が副会長と仲良く話しているという情報があったの」
……なるほど。
それが俺か。
「それで、奏明さんはいきなり堅物に話しかけに行って、しかも粉砕されずに済むなんてすごいですね、っていう話をしてたんです」
雅が嬉しそうに言う。
うん、違うんだけどなー……。
「ともかくこれで話し合いは終了だね」
そう言って隼人は笑った。
「では、夕飯の支度に移ろう。今日は担当は……」
「ああ、俺と音河だ」
海馬が立ち上がる。音河も言われてからついていく。
家に住む人数が6人になってから、量も多いので2人で作業することにしたのだ。
「じゃ、僕は思考を続けるかな」
そう言ってテレビをつけて隼人はソファーに寝転がった。
雅はちょこんと、その近くに座りソファーにもたれかかった。
「嘉島君」
嫌な予感。
俺は虎郷を見る。
「ちょっと来なさい」
「……はい」