61-運命の日-
9月8日。
始業式から数日経った。
「・・・・・・」
「どうしたんだい?嘉島君」
その日の夜に唐突に現れた僕にそう言った。
「親に言って、しばらくこっちに腰を下ろすことにした」
「え」
「つーわけでよろしく」
「・・・・・・OK。いいだろう」
意外にも隼人は何も訊かずに受け入れてくれた。
「でも荷物とかはもう少ししてから持ってくる」
「そうか。紅茶飲む?」
「ああ」
隼人はキッチンに向かった。
俺はその間に着替えなどの軽い荷物を自分の部屋に置いた。
「・・・・・・」
それからリビングに入った。
隼人は既に紅茶を作り終えていた。もしかしたら、自分が来る前から作っていたのかも知れない。
「早く飲めよ。冷めたら美味しくなくなる」
隼人はそう言って、ソファに向かって右手を出して座るように促す。
俺はお言葉に甘えて座った。
「・・・・・・隼人」
「何?」
「何で来たのか訊かないのか?」
「訊いて欲しいのかい?」
隼人は俺の質問に意地悪な質問で返してきた。
「・・・・・・」
「まぁなんとなく分かってるさ。だから訊きはしない」
そう言って紅茶を口に含み、飲み込む。
それから、隼人は
「考え事をするときは、夜に散歩でもしながら夜空を見上げるといい。答えは見つからなくとも、気分は晴れる」
と言った。
「・・・・・・」
「12時までに帰ってきてくれ。帰ってこなかったら、鍵は閉めるよ」
隼人はそれだけ言うと、自分のカップを片付けてからリビングを後にした。
「・・・・・・見透かしてるなぁ・・・・・・」
俺はそう思って、紅茶の入ったカップを口に運んでいく。
そして全部飲み終えてから、隼人同様、片付けた。
それから外に出て街の方に歩いていった。
どのくらい歩いたかは分からない。
どのくらい滞在していたかも分からない。
「夜空・・・・・・ね・・・・・・」
そこには光が多くあった。
いつでも夜空には星と月が浮かんでいる。
それを毎日感じている人は居るのだろうか。
少なくとも俺は感じていない。
だって俺達は『当然=必然』ということを国語で学ぶほど、意識をそういう風に作られているからだ。
しかしその考えは間違いだという事を俺は今回痛感した。
アクター。
存在は人間そのもの。内部には別の人間。
有り得ないことが有り得てしまう。
「それにしても・・・・・・」
街にはまたも、犯罪が増殖している。
爆音を出して走り続けるバイク達。
どこからでも間違いが見つけられる。
狂った街と思わざるを得ない。
無秩序という単語を彷彿とさせるようなこの街。
時間が経って、季節が変わっても変わろうととしない街。
事件が起きても何一つ変わらない街。
そしてそこに住んでいる人々。
それらを見て、俺は思った。
「相変わらずだよな・・・・・・」
俺は思うところをぶちまけるようにそう呟いた。
9月8日。
運命の日。
地球は丸い。僕らの世界は紡がれる。
紡いだ過去は流さなくては。
丸く収まったこの世界に。
この後日談は、一話からです。
このまま一話に続くんです。