03-矛盾点と相違点の交点-
あの日から10日たった。
お互いの意味の分からない力の話をした。楽しい日々を送っていた。
そしてようやく胸のうちを話のが、その日だった。
僕らを街を歩いていた。
広場のベンチに座り会話をする。
「20日!?」
「うん。後、20日だよ」
「え、お前、はぁ・・・・・・!?」
「1回落ち着けよ、奏明」
僕はそう言って奏明を制す。
「・・・・・・不治の病って・・・・・・どういうことなんだ?」
「お前の姉みたいに植物状態にもなれないくらいの不治の病らしい。発症する時期も大まかにしか分かっていない。だから20日って言っても、もしかしたら明日には死ぬかもしれないし・・・・・・」
「どんな病気何だ?」
「話によると、急性心臓麻痺って感じかな?でもそんな単純なものじゃないらしいよ」
「らしいって・・・・・・」
「よく分かってないんだよこの病気も。ただ1つ分かっているのは、発症したらすぐにあの世逝きだそうだ」
僕は言ってから立ち上がった。
「・・・・・・大変だな、お前も」
奏明はそう言って笑う。
「でも大丈夫そうだな」
「は?」
「お前なら長生きしそうだ」
「何でそんな根拠の無いことばかり言うんだよお前は・・・・・・。希望的観測しすぎだっつーの!」
僕はそう言って奏明の体を軽く突き飛ばした。
「うぉあ!」
奏明は叫び声を上げてしりもちをつく。
「うぉ!?大丈夫かよ・・・・・・」
僕は右手を差し出した。
「あぁ・・・・・・ちょっとビックリしただけだ」
そう言って奏明は俺の手を取る。
『俺ももうそろそろ・・・・・・』
奏明の声が聞こえた気がした。
いや。
右手で触ったから、心の声・・・・・・。
「・・・・・・奏明、お前・・・・・・」
「・・・・・・え?」
奏明は右手を見る。
それから
「ああ・・・・・・」
と言って苦笑した。
「俺は多分、もうすぐ死ぬ」
奏明は笑う。
椅子に座りなおし、会話を始める。
「俺の左手・・・・・・お前も触れただろ?」
「・・・・・・」
「アレで俺は自らの生命力を送った。それで皆が少し元気になる」
「僕も・・・・・・それは受けた」
「だろ?」
奏明は笑う。
「何で・・・・・・何でそんなに笑うんだよ」
「・・・・・・?」
「何でそんな笑ってられんだよ!!」
「おいおい、落ち着けよ」
「落ち着いてられねーよ!お前、死ぬの分かっててこんなことばっかりやってんのかよ・・・・・・」
「そうだよ」
奏明はまたも笑う。
「俺は誰かを助けて死ねるなら本望だ。そういう生き方・・・・・・嫌いじゃないからな」
「・・・・・・どんだけプラス思考なんだよ・・・・・・」
僕は呆れて笑うしかなかった。
「・・・・・・行こうぜ。お前も長々と病院抜け出すわけには行かないんだろ?」
「まぁな。向こうからすれば僕は研究材料だから」
僕らは立ち上がる。
そして帰り道に立った。
「お互い長生きしたいもんだな・・・・・・」
「無理だろ。少なくとも僕は」
「そうか?でも俺は――」
奏明はふと横断歩道へ目を向けた。
そして目を大きく開いた。
「あ――」
信号、赤。
横断歩道。
車、少年、ボール。
「くっそが!!」
奏明は走った。
運動神経はいいのか、走るのは異常に速かった。
そして少年の体を押す。
少年の体はその衝撃で車の直線上には居なくなった。
そしてその衝撃で奏明の動きは止まった。
それはつまり――。
「奏明――!!」
奏明の体は吹っ飛んだ。
宙を舞った。
目の前に落下した。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
「奏明・・・・・・!」
本来なら駆けていくべきなのだろう。
しかし、心とは違って行動は異常に冷静だった。
僕はゆっくりとその体に近づいていく。
「・・・・・・よぉ・・・・・・」
「何やってんだよ・・・・・・長生きするんじゃ・・・・・・なかったのかよ・・・・・・!!」
僕はその体に手を伸ばそうとして右手を出した。
ピキッと。
体中の筋肉が固まった気がした。
それも束の間、今度は胸に痛みが走る。
ズキリ、と。強い痛みだった。
「あ・・・・・・」
僕の体は奏明の横に倒れる。奏明が仰向けなのに対して僕はうつ伏せだ。
「・・・・・・どうしたんだよ・・・・・・健・・・・・・」
「・・・・・・多分・・・・・・発症だ・・・・・・」
僕はそう言って、態勢を仰向けに変える。
呼吸のたびに痛みが走る。
野次馬が集まっている。どこかで救急車に連絡する声が聞こえた。
「・・・・・・お前だって・・・・・・長生きするって言ってたじゃないか・・・・・・」
苦しそうに奏明が言う。
「それは・・・・・・それだ・・・・・・。僕は・・・・・・発症してもおかしくはなかったから・・・・・・」
「そうかよ・・・・・・」
死に掛けている。いや――。
間違いなく僕達は死ぬ。
「お前・・・・・・良かったな・・・・・・。最期に誰かを・・・・・・守れたんだから・・・・・・」
僕はそう言って空を見る。
「・・・・・・まぁ・・・・・・人生に満足はしてる・・・・・・後悔はしてない・・・・・・」
「僕は後悔だけだ・・・・・・」
そう言う僕に奏明は首だけ曲げてこちらを見た。
「・・・・・・僕もお前みたいに・・・・・・誰かを守って生きていられたら・・・・・・良かったのかもしれない」
「・・・・・・まるで死ぬみたいな言い方だな・・・・・・」
「死ぬだろ・・・・・・間違いなく」
「諦めるなよ、健・・・・・・」
奏明はそう言って僕の右手を彼の左手で握った。
「まだお前は生きられる」
奏明は先ほどまでとは違い、しっかりした声で言った。
「俺の人生をお前にやる。お前は生きろ」
「・・・・・・人生って・・・・・・お前だって死にかけじゃないか・・・・・・」
「人一人くらい、まだ助けられる」
握っていた手に強さが増す。
「約束しろ。誰かを助けて、誰かのために生きれるような過ごし方をしろ。面白そうな事には進んで首を突っ込め。後、俺の家族の事は頼む。姉と妹と母が心配だ。兄はまぁ・・・・・・どうにでもなるだろう」
「・・・・・・お前、まさか――」
僕は再度、握られている手を見る。
僕の『受け取る右手』に『送る左手』が重なっていた。
「俺とお前、どちらかがどちらかになる」
「奏明か・・・・・・僕か・・・・・・」
「でも、意志は全てお前だ。だから、お前の人生を助けるために俺は消える」
「・・・・・・何でもかんでも勝手に決めやがって・・・・・・」
僕は空を見上げる。
別に絵になるからとかじゃない。
「でも、嫌いじゃない・・・・・・」
瞳から零れ落ちる涙を隠すためだ。
「・・・・・・じゃあ、俺は先にあっちに逝ってるよ」
奏明はそう言って空を見上げた。
「天国があると思ってんのか・・・・・・?」
「あると思わないと報われないしな。大丈夫。多分、お前の中に俺は居る」
「・・・・・・気障な意味ではなく・・・・・・か・・・・・・」
「そうだ。じゃあ、また後で」
「ああ・・・・・・」
救急車の来る音が聴こえた。
僕の耳に聞こえたのだろうか?
それは分からないけれど、僕に分かるのは。
このとき、僕は俺になった。
次の話が特にややこしくなっているので、ご注意ください。