53-静寂だった-
東先輩はバイクに乗って構える。
「嘉島。隼人を頼むぞ」
そう言って東先輩はバイクで今日元に突っ込む。
「あ、分かりました!」
思わず敬語を使ってしまうほどだ。
「隼人!大丈夫か!」
「痛い・・・・・・けど、大丈夫だ。それより、今の内に君に教えておく。今日元の能力を」
「あ、ああ」
隼人の冷静さにはいつも驚かせる。自分よりも他の利益を考えている。
「あの能力は『深層心理』という能力だ。想像を武器にする力や考えた事を武器にする力ではないんだよ。正確には『思ったこと』が事実に『なる』力だ」
「・・・・・・何か違うのか?」
「『そうする』のか、『そうなってしまう』のか。『意思』なのか『現象』なのか。ということだ」
「・・・・・・それでなんか変わるってのかよ」
「変わるよ。大いに変わる」
先ほどの今日元の台詞をまねるようにしていった。根に持っているようだ。
「それより、東先輩が勝てるのかどうかも問題だ――」
そして視線を向けると。
東先輩と今日元は空中戦をしていた。
今日元はともかく(空を飛ぶ靴とかだろう)、東先輩はどうやっているのかと思えば、足にホバー式のプロペラをつけているようだ。そして靴からジェットを出して、空を自由に飛んでいるようだ。もう、アレは人間じゃない・・・・・・。
「・・・・・・」
「今日元はともかく、東先輩は何なんだろうね・・・・・・あの力は」
「東先輩は全力疾走って言ってたぞ」
「・・・・・・聞いたことも無い。となれば・・・・・・」
「新型ってことなのか?」
「だね」
そう言って東先輩の戦況を見る。
「くっそ!そんな力知らないぞ!『ラスト・サーキットの効果を消す剣』!」
そう言って今日元は剣を出して、東先輩を斬りにかかる。
「効くか!バック!」
東先輩が言うだけで、特に何かが起きるでもなく、瞬時に体が下がる。
「食らえ!」
右腕にバイクのマフラーが現れ、装備される。そして、その状態でエンジンをふかし拳が目にも留まらぬ速さで今日元の顎にヒットした。
「が・・・・・・ぁ・・・・・・」
今日元は空中から落下して、地面に墜落する。
「やったか!?」
東先輩は静かに下りてきた。
「・・・・・・う・・・・・・」
今日元が少しずつ体を起こす。
「・・・・・・最後だ・・・・・・もう終わりにしてやる!!」
今日元はそう言って、右手を上に挙げた。
すると。
家の内装が変化した。
そして俺達の前に。
100を有に超える銃器が現れた。
「な・・・・・・!!」
「気をつけろよ。これはアクターの力じゃない。実物の銃器だ。そして、『自動操縦』を俺の力で付与している上に、『ラスト・サーキットとシンキング・キングとリメンバー・リメインの効果を無効化する』という効果をつけている」
「くっそ・・・・・・!!結局ただの銃じゃないじゃねーか!」
俺は床に手をつける。
意味が無い。
「隼人!」
「無理だ。僕らに打つ手は無いよ」
「東先輩」
「恐らく俺でも無理だな」
2人は異常に冷静だった。
「これで終わりだ!」
今日元は手を振り下げた。
「畜生ォ!!!!!」
静寂だった。
「え・・・・・・・」
頭を守るようにしたまま俺は前を見る。
2人は先ほどまで何だかんだ冷静そうだった割りに、伏せて防御の態勢を取っている。
「何が起きた・・・・・・!?」
俺達は全員で視線を今日元に向ける。
「・・・・・・な、何だ!?」
当の本人の今日元も驚いている、
見ると、銃器が何の作動もせず、煙を上げていた。
「・・・・・・どうなってる!?」
今日元が焦るように、銃器に駆け寄る。
すると
『――いyろあmcづsがうkhじゃ――』
雑音が入り始めた。
銃器本体ではなく、どうもこの家から聴こえてくるようだ。
『・・・・・・だー。繋がったか!?よっしゃ!』
今度は日本語だった――いやまて、これは――。
「お前誰だ!」
今日元はそう言って天井に向かって言う。
「一体何者だろうね」
隼人が言う。
「分からないのか?隼人」
「え?」
どうも本当に隼人は分かってないらしい。
「今日元。何しに来た」
口を開いたのは、東先輩だった。
「え・・・・・・今日元・・・・・・って」
『弟にも分かられないとは・・・・・・』
そう言って、呆れたように溜め息をした。
そう。
声の主は今日元さんだった。
「姉上・・・・・・!?」
『始・・・・・・余計な真似しやがって。お前の尻拭いにどうして俺が選ばれなきゃならないんだ』
「・・・・・・くっそ!!『トランスミッションを遮――」
『遅い』
言ったときには、天井が爆発した。
「な、何だ!?」
今日元が焦る。
「お前の能力は、考えたことが自動的に現象になる」
隼人が言う。
「つまり考えてしまえば、それを現象として認識すると同義ってことだ。そして『トランスミッション』
でそれを弄った」
「トランスミッション・・・・・・!?」
「もしかしてトランスミッションの能力を知らないのか?」
そう言って隼人が笑った。
『トランスミッションは波長を司る。そして人間は微量ながら電気を纏っている。静電気然りだ。そして俺は、その電波から手に入れた波長と自らの電波を合わせてそいつの中に入ることが出来るのさ』
「そんなこと・・・・・・聴いてない!俺が知っているのは、電気を帯びている機器に入り込めるということだけ・・・・・・」
『それも波長を合わせるに過ぎない。まぁ確かに、俺は普通は人の脳内に入り込むことは出来ない。けどな、悲しくも』
そう言って今日元さんは笑った。
『俺とお前は兄弟だぜ?』
「・・・・・・くっそ!!」
『そして俺は、お前の脳内に入り込んで、この家が爆発する事を想像した。それだけだ・・・・・・』
「・・・・・・未だだ!まだ終わっていない!」
そう言って今日元は構えた。
「『トランスミッションを拒絶する』想像!」
『残念だけど、もう遅いぜ』
今日元さんは笑う。
「な――」
今日元は俺達の方向を見た。
「「「終われ!」」」
俺達の3人分の拳がヒットした。
今日元の体が遠くに飛び、壁に激突して倒れ込んだ。